川島鈴遥インタビュー「生きることの意味など、この作品で大きなテーマを感じていただけるのではと思ってます」 映画『ぜんぶ、ボクのせい』が公開

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ある一人の少年が孤独な人々と出会い、自分の力で生きようと成長する姿をみずみずしい感性で描く映画『ぜんぶ、ボクのせい』が公開になります。そして誰にも言えない苦しみを抱えながらも、その少年・優太に優しく接する杉村詩織役を、『ある船頭の話』(19)などドラマや映画で活躍中の川島鈴遥さんが好演。「愛や家族のあり方は人それぞれである、ということを強く感じました」という本作についてお話を聞きました。

■公式サイト:https://bitters.co.jp/bokunosei/ [リンク]

●シリアスなストーリーでもあったとは思いますが、最初に物語を読まれた時、どのような感想をお持ちになりましたか?

物語の感想の前にこの作品に出たいという気持ちが大きく生まれ、それはオーディションの時だったのですが、絶対に合格したかったので、さまざまなアプローチで準備をしてオーディションに臨みました。その後、血のつながりや家族、いくつかの問題提起について深く考えました。愛や家族のあり方は人それぞれである、ということを強く感じました。

●さまざまなアプローチとは、どのようなものですか?

詩織はどういう人物なのかを先に考えたのですが、作品で描かれていない部分を掘り下げるんです。どういう人生を送り、なぜここまで孤独を抱えているのかを自分なりに見つめ、あとは現場で感じた外的要因で空白を埋めました。詩織に合った音楽を見つけたり、詩織に合った呼吸を探したり、そういう面や精神面も合わせて、詩織を理解しようとしました。

●彼女の背景は特殊なところもあるかも知れませんが、彼女の孤独感は共感を呼びそうなところはありますよね。

彼女はひどく孤独を抱え、お母さんを亡くして頼る人もいないので自分を傷つけてしまう女の子なのですが、でもその孤独感は普段、わたし自身が生活している中で焦ったり、将来への漠然とした不安だったり、普通の日常から生まれる孤独感だと思いました。それは特別なものではなく、人が日常で抱えているものだと思うんです。それを人と人とが関わることによって、寄り添いあい、ちょっとずつ埋まっていくものだと思ったので、彼女も普通の女の子なんです。悲壮感漂うキャラクターではなく、観る人に近い、等身大の女の子を意識して演じました。

●松本優作監督は、詩織に何を求めていましたか?

現場で生み出されるもの、空気を大事にしたいとおっしゃっていて、ほとんど指示もなかったと思います。それはオーディションの時から変わらずで、松下優太役の白鳥晴都君と3人で練習もしたのですが、その時も何も言われず、わたしが考える詩織像をとても尊重してくれました。信頼関係を築きながら、現場で撮影をしていたように思います。

●また、共演は演技派の方たちばかりですが、撮影はいかがでしたか?

変に気負わず、楽しく出来たと思っています。特にオダギリジョーさんは、監督と俳優として以前、『ある船頭の話』(19)でご一緒していることもあり、とても落ち着いた中で緊張もありつつ芝居が出来ました。

●この作品は人は苦しくても生きていくもの、などいくつかのテーマがあると思いますが、公開を迎え改めて思うことはありますか?

今こうして撮影が終わり時間が経ってみると、人を信じるってとても難しいなと思うんです。裏切られたりもするし、思っていたことと違うことも起こる。人と人のつながりって、本当に紙一重ですよね。そこで苦しくもなりますが、全部人が関わっていること。その中で自分が何をしたいのか、誰を信じるのか、この物語には人生のテーマがあると思いました。

●普段深くは考えないけれど、人生で目を逸らせないテーマですよね。

その苦しみとどう上手く付き合って生きていくのか、ですよね。弱くても力強く生きなくてはいけないということもあると思います。本当に酷くて不幸なことが起こるのですが、その中だからこその力強さも感じるので、生きることの意味など、この作品で大きなテーマを感じていただけるのではと思ってます。

■ストーリー

児童養護施設で暮らす13歳の中学生、優太(白鳥晴都)は、施設でも学校でもいじめられ、いつも一人ぼっち。自分を理解してくれる大人もいない。母・梨花(松本まりか)が迎えに来てくれることだけを心の支えに毎日を過ごしているが、一向に現れず不安を募らせていく。

そんなある日、偶然母の居場所を知った優太は、会いたい一心で施設を抜け出し、地方に住む母のアパートを訪ねる。ようやく再会するも、同居する男に依存し自堕落な生活を送る母は、優太に施設へ戻ってほしいと頼むのだった。

絶望した優太は、施設の職員の追手を逃れ、当てもなく辿り着いた海辺で、軽トラで暮らすホームレスの男・坂本(オダギリジョー)に出会う。何も聞かず自分を受け入れてくれる坂本。二人でわずかな金銭を稼ぎながら寝食をともに過ごす。

ある日、坂本の元を訪れる少女・詩織(川島鈴遥)とも顔見知りになる。詩織は、近くの高級住宅地に住み裕福な家庭に育つも、誰にも言えない苦しみを抱え、空虚感を埋めるかのように援助交際をしていた。優太は自分と同じ寂しさを抱えながらも心優しい詩織に惹かれていく。

孤独を抱えた二人と過ごしていく中で、優太は自由気ままに生きる坂本をいつしか会ったことのない父親の姿と重ね合わせるようになる。そして優太は、軽トラの修理が終わったら坂本と一緒に名古屋に行くことを約束する。しかし、そんな穏やかな日々もある事件によって終わりを告げる。

8月11日(木・祝)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
配給:ビターズ・エンド
(C) 2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会

(執筆者: ときたたかし)

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