奈良・東大寺と春日大社。御朱印帳を片手に散策する御朱印旅

奈良・東大寺と春日大社。御朱印帳を片手に散策する御朱印旅

御朱印旅や参道のグルメを紹介する本を書いている社寺旅作家の大浦春堂です。1泊2日で奈良の東大寺や春日大社に参拝して、ご当地の名物・三輪そうめんを味わう旅をしてきました。

奈良の都の美しさを称えた歌として、つとに知られた万葉集の「青丹よし 奈良の都は 咲く花の 匂うがごとく 今盛りなり」の「青丹よし」は、木々や建造物に使われた瓦の青(緑色)と丹(朱色)が映える様子を表現しています。

春から初夏は、まさに今も奈良に残る朱塗りの建造物に青々とした木々を始めとする自然との調和が美しい季節。カメラ片手に境内のお散歩や街歩きを楽しみながら、歴史の一片を訪ねてみましょう。


【目次】


東京駅

東京駅から一路、奈良へ

東海道新幹線

JR東京駅から東海道新幹線に約2時間15分乗車してJR京都駅へ向かいます。京都駅に着いたら、奈良線「みやこ路快速」に乗り換えて45分ほどでJR奈良駅に到着です。

奈良駅旧駅舎

奈良駅旧駅舎

駅前ロータリーを歩くと、瀟洒(しょうしゃ)な洋館が目に留まります。奈良駅の旧駅舎を利用した「奈良市総合観光案内所」です。1階に観光案内カウンターが入っているので、奈良観光の情報を収集するならぜひ立ち寄って。

東大寺へは駅の東口を出て目の前にあるロータリーから、奈良交通バスの2番乗り場で「春日大社本殿」行きに乗車します。

奈良駅 東大寺への案内板と時刻表

わかりやすいよう、駅を出てすぐの所に案内板と時刻表が出ています。初めての奈良旅でも迷わず安心!

東大寺 大仏殿

東大寺に到着

「東大寺大仏殿・春日大社前」バス停で下車し、歩いて10分ほどで「東大寺」に到着です。ひとくちに東大寺といっても、広大な敷地内に大仏殿やお堂、ミュージアムなど建物が点在。じっくり見て歩くと、たっぷり半日ほどかかります。どんなふうに回るのか、どこのお堂を見たいのか、地図を見ながら事前に見学ルートを組んでおきましょう。

東大寺 大仏殿

東大寺といえばここ、というくらい有名な奈良の大仏様がおわす「大仏殿」。撮影するなら全景がフレームに収まる、入堂口から続く廻廊付近でシャッターを切るのがおすすめ。

大仏殿は正式には「金堂(本堂)」といい、国宝に指定されている建造物です。使われている瓦はおよそ1.1万枚、重さは1500t! 堂内に模型が展示されていますが、創建時は正面幅が今の1.5倍とさらに大きかったそうです。2度の戦乱によって焼失し、現在の大仏殿は江戸時代に造営されたもの。

東大寺 大仏殿

撮影禁止のお堂が多い東大寺ですが、大仏殿内は撮影が許されています。仰ぎ見るほど巨大な大仏様を正面からパチリ。高さ約15mの世界最大の盧舎那仏坐像で、東大寺の御本尊様です。

今回は大仏殿から拝観をスタートしましたが、修学旅行や奈良旅行の定番スポットということもあって一年中混雑しています。「静かにお詣りしたい」「ゆっくり見学したい」という場合は、午前の早い時間帯から行くのがベターです。

東大寺 大仏殿

大仏様の周囲はぐるりと歩いて見学できます。横や背後から見ると、また違った発見があるかも。

大仏殿の御朱印は、お堂の内部にある霊名所でいただくことができます。東大寺オリジナルの御朱印帳も要チェック。

東大寺 御朱印帳

ご自身の御朱印帳を忘れてしまった場合には、和紙の書き置きをいただけます。

東大寺 大仏殿 御朱印

大仏殿の御朱印。インクや墨が移らないように挟む当て紙は、御朱印の解説になっているので書かれた意味を理解しやすいです。

東大寺 法華堂

法華堂(三月堂)

東大寺 法華堂

大仏殿の出堂口をでて、歩いて東に移動し「法華堂」へ。旧暦の3月にこのお堂で法華会が行われたことから、別名「三月堂」とも呼ばれています。

ここは東大寺の境内に現存する建物のなかでは最古のもの。天平時代の寄棟造の正堂に、鎌倉時代の礼堂がつけられています。お堂の内部に安置されている天平時代の仏像10体はすべて国宝になっていて、必見です。

東大寺 法華堂 御朱印

御朱印は、御本尊様である不空羂索観音像の御朱印と、お堂の名称が入った御朱印の2種。

東大寺 三昧堂

四月堂(三昧堂)へ

東大寺 四月堂

「四月堂(三昧堂)」は、もとは普賢菩薩像が祀られていたことから、「普賢堂」とも呼ばれたそうです。現在は平安時代につくられた十一面観音像が御本尊様になっています。

現在のお堂は江戸時代にあたる1681年(延宝9年)の建築物で重要文化財指定。

東大寺 四月堂 御朱印

四月堂の御朱印は、現在の御本尊様と昔の御本尊様の2種類。

東大寺 二月堂

二月堂

長い石段を登りきった先にある「二月堂」。この場所で旧暦の2月に修二会(しゅにえ)が行われることから、二月堂と呼ばれるようになりました。奈良時代のお堂は江戸時代に焼失してしまい、現在のお堂は1669年(寛文9年)に再建されました。

東大寺 二月堂

奈良に春を呼ぶ伝統行事の「修二会」(毎年3月1日~14日)は、奈良時代から一度も途切れることなく連綿と続く法会で、国の安泰や国民の幸福、五穀豊穣が祈願されます。

13日未明に行われる「お水取り」は、二月堂の下にある井戸からお香水を汲み、御本尊様である十一面観世音菩薩にお供えする儀式です。お堂の舞台から突き出される大松明は圧巻の迫力で、儀式の期間中には下から法会の様子を見学することができます。

東大寺 二月堂

二月堂は山裾の斜面に建つため、お堂の舞台からは奈良盆地が一望できます。

二月堂からの景色

お詣りのあとには絶景を楽しんで

東大寺 二月堂 御朱印

二月堂の御朱印は南無観と御詠歌の2種類。南無観とは、修二会で唱えられるお経「声明(しょうみょう)」で、御本尊のお名前である「十一面観世音菩薩」を繰り返す唱句です。

東大寺 戒壇院千手堂

特別公開中の戒壇院千手堂へ

東大寺 境内

東大寺の境内は緑がいっぱい。所々で悠然と歩く鹿に遭遇することも。

「戒壇院戒壇堂」が2023年7月頃まで修理中のため非公開になっています。代わって特別公開(※)されている「戒壇院千手堂」へと移動します。

※編集部注:2023年7月頃までの特別公開(但し、毎年2月15日から3月5日は拝観停止)。詳しくはホームページをご確認ください

東大寺 戒壇院千手堂

戒壇院戒壇堂の西側にある千手堂

戦火や火災等で度々被災した戒壇院千手堂ですが、2002年(平成14年)に再建され、千手観音像や四天王像、鑑真和上像などが安置されています。

東大寺 千手堂 御朱印

この特別公開に合わせて新たに授与がはじまった御朱印は2種類。

東大寺ミュージアム

東大寺ミュージアム

今は非公開となっている戒壇院戒壇堂の国宝「四天王像」は、「東大寺ミュージアム」に移されています。ミュージアムでは、そのほかにも国宝に指定されている貴重な仏像が拝観できます。参拝の記念になるミュージアムグッズもいっぱい。休憩にぴったりなカフェも併設されています。

最後に東大寺の南大門から参道を散策し、鹿と戯れたりお土産を物色したり。再びバスに乗って奈良駅前まで戻ったら、近くのホテルにチェックインして1日目の旅程は終了です。

春日大社

2日目、バスで春日大社へ

春日大社 境内

2日目は「春日大社」へ。駅前のロータリー2番乗り場から、1日目と同じ、奈良交通バス「春日大社本殿」行きに乗って終点で下車。境内のなかにあるバス停で降りることができるので、本殿へは徒歩5分ほど。

東大寺と同じく、観光者で混雑することが多い境内。平日の朝9時頃なら人の少ない時間帯なので、静かにお詣りできます。

春日大社 境内

受付で拝観料500円を納めて回廊内の特別参拝へ。本殿の前に建つ朱塗りの美しい「中門」から神様に参拝しましょう。

春日大社は全国に約3,000社ある春日神社の総本社で、平城京の守護のために768年(神護景雲2年)に茨城県にある鹿島から勧請して創建されました。

釣燈籠

左右に延びる回廊には約1,000基もの釣燈籠が吊るされています。戦国武将や著名人が寄進したものもあるので、丹念に見て歩くと発見できます。また、節分とお盆には、すべての燈籠が灯されます。

春日大社 御朱印

春日大社の御朱印

春日大社の摂社である「若宮神社」では20年に一度の修理となる「式年造替(しきねんぞうたい)」が行われています(2022年6月取材時。式年造替の期間は2022年10月までを予定)。春日大宮(御本社)の御子神様をお祀りしている神社で、現在は若宮の神様を内侍殿にお遷ししています。回廊の西側に位置しているので、こちらにもお詣りを。授与所では、通年の社名の御朱印に加えて若宮の御朱印もいただくことができます。

春日大社 石燈籠

参道には歴史と人々の信仰の篤さをうかがい知れる苔むした石燈籠が連なります。

森のような境内には、保有する国宝や重要文化財を展示する「国宝殿」やカフェ・ショップも併設。また、万葉集に詠まれている草花を植えた「萬葉植物園」のほか、月替りの万葉粥が食べられる「春日荷茶屋」などもあり、全部見て歩くには2~3時間ほど。朱色の美しい社殿や眩しい森の緑を見ながらの散策を楽しみましょう。

ならまち

お昼はならまちで名物を味わう

たくさん歩いたところで、ランチは「ならまち」にあるお店へと向かいます。ならまちとは、世界遺産・元興寺の旧境内だった地域と高田からなるエリアにあり、春日大社の一の鳥居から歩いて10分前後で到着できます。1日目の東大寺からも15~20分ほどで移動できる距離です。

身代わり申

ならまちの西新屋町に、地元の人々から「庚申さん」と呼ばれる金剛像が祀られている小さなお堂があります。お堂の鰐口の近くには、庚申さんのお使いとされる、お猿さんを型どった赤くて丸い「身代わり申(さる)」がいっぱい吊るされています。これには魔除けの意味があり、ならまちの家々や商店の軒先にも見ることができます。

最近ではこの身代わり申をお土産として販売しているショップもあります。お土産店や雑貨店などで探してみて。

ならまちにはほかにも世界遺産のお寺や神社、ショップが点在していますが、現役の住宅街でもあります。散策時のおしゃべりは小さめな声で。

江戸時代以降に建てられた町家が今もたくさん残っていて、そぞろ歩きするだけでも楽しめるエリアです。最近は町家をリノベーションした雑貨店や飲食店も続々。ランチに向かった「そうめん処 スルスル」という、三輪そうめんを現代風にアレンジしたお店もそのひとつです。

そうめん処 スルスル

「そうめん処 スルスル」は、地元の特産品である三輪そうめんを使い、鯛だしスープでいただく創作そうめんの専門店です。夏には限定の冷たいトマトのスープが人気の「鯛だしトマトそうめん」や、地元・奈良で収穫された野菜の素揚げがのった2種類のスープで食べ比べができるそうめんなど、メニューも独創的。

人気メニューは売り切れになることもしばしばだそう。お目当てのメニューがあるなら、開店間もない時間の訪問がよさそう。

鯛だしそうめん

濃厚な鯛の風味。ほのかにレモンが香る

温かい鯛だしのスープで味わう看板商品の「鯛だしそうめん」をいただきました。時間をかけて煮出した鯛のアラのだしと塩ダレでつくったスープがこんなにそうめんに合うなんて。そうめんというと鰹節のだしで食べるのが我が家の定番だったので、新鮮な食べ方とおいしさにびっくりしました。

ビエラ奈良

奈良駅に戻り、お土産を購入

おいしいランチを食べた後も引き続き、てくてくとならまち散歩をしながら奈良交通・市内循環バスの「田中町」バス停へ。奈良駅へ戻ったら、駅直結のショッピング施設で奈良のお土産物を買って帰りましょう。

ビエラ奈良

改札向かいにある商業施設「ビエラ奈良」。入った左側エリアに奈良のお土産や物産品が揃っています。

御干菓子 金魚

奈良は全国的に知られた金魚の産地

買ったのは、「寛永堂」という和菓子店の季節限定品である「御干菓子 金魚」。夏にぴったりな涼やかな見た目で、食べるのがもったいないほどの美しさです。

帰りも京都駅へ戻り、新幹線で東京駅へ。見どころの多い奈良は2日では回りきれませんが、行きたくなったら何度でも列車で気軽に行けるのが国内旅のいいところ。次の奈良はどこをお散歩しようかと考えながら帰路につきました。

東京駅

掲載情報は2022年8月2日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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びゅうたび

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