「画一的なのにオリジナリティを感じられるのが魅力」 イオンモールの建築が好きすぎる女子のマンガが挙げる3つのポイントとは?

「団地マニア」や「工場萌え」といった建造物の景観を愛でる人は今や珍しくありませんが、その対象がショッピングモールとなるとどうでしょう?

作品集『推しの肌が荒れた』(BUNCH COMICS)が2022年6月9日に刊行されたもぐこんさん(@mogra16)が、『モーニング』(講談社)2017年6号に掲載された『イオンにみせられて』をTwitterで公開。イオンモール京都桂川にカメラ女子が写真を収めに訪れるというストーリーになっています。

「私はこの街へイオンモールを見に来た」とカメラを向けてシャッターを連写。「はぁぁ」と感嘆しながら「かっこいい…」と呟いていると、女の子から「ねぇ、何してるん?」と声をかけられ、「え。何…って、写真撮ってるのよ」と笑顔で答えます。「なんの?盗撮?」と言われて「モールの写真を撮ってるんだよ」とあやしいものではないことをアピール。すると女の子は「分かりました!!」と母親の元に駆けていき、「やっぱり変な人やった」と報告。げんこつをもらい「失礼やろっ」と怒られてしまいます。母親から頭を下げられ、「知らん人に声かけたらあかんよ」という親子の背を見送ります。

京都駅からJR西日本京都線で大阪方面へ2駅先の桂川駅前にあるイオンモール京都桂川。駅とデッキで直結したモールの入り口には電車が来るたびにたくさんの人が「吸い込まれるように、急かされるように入っていく」と観察。「今日はどうする?プリ撮る?」「ちょっと疲れたし先にスタバで休もうよ」「じゃあ今日はあの新作にしようよ、栗の。並べて写真撮ろ」「あ、あれおいしいよね」「そういえば今日家に誰もいないんだった」「なんか食べたら?ラザニアおいしいよ」「まじー?超おいしいよ」「ちょっとちょうだい」と話す女子高生3人組を眺めて……。

「ここに来る人はモールの中にしか興味がない」と思い、「イオンモールを外から眺めるととてもかっこいいという重大な事実に気づいているのは私だけ」とその雄姿についついニヤけてしまいます。

手すりにもたれながら外観を仰ぎ見て、「でも、あの女子高生たちのように、モールの外には目もくれない人たちの方が正しい」と思う女子。「”モール”は街そのものだから、その外観を気にすることはない」と考えます。「モールのつくりはテーマパークに似ている。内側は華やかで楽しげだが、一歩外に出るとそっけない感じがする。だから内と外をつなぐ窓がない。入り口だけが唯一モール内とつながっているのだ」といい、「そんなモールのまわりを散歩しながら、建物をカメラに納める―。それが私の趣味」だと独白、愛機のニコンの一眼が黒光りします。

「ところで良いイオンモールにはいくつかの条件がある」というモール萌え女子。その1は「建物全体が凸凹していること」といい、京町屋をデザインコンセプトにした外装を「ここはかなりいいぞ」と思います。「形が凸凹していると見る位置や角度で表情が生まれる。時間や天候によって景色が変わるから、いつ見ても違って見える」といいます。

良いイオンモールの条件その2は「モールに隣接する建物がないこと」といい、「巨大なモールの全景を捉えるためにはすごく離れなくてはならないから、高い建物がない方が良い」と力説。もともとキリンビール京都工場の跡地で、2014年に全面オープンしたこともあって、比較的新しいためにお眼鏡にかなったのではないでしょうか。

さらに、「イオンモールの写真を撮る上では、平面駐車場があると迫力があって最高なのだが、このモールには立体駐車場しかないみたいだった」といい、「立駐があるということは、スロープがあるということだ。スロープには二種類ある。二重らせんスタイルのスロープと、坂道スタイルのスロープだ。坂道スタイルのスロープの方が私はかっこいいと思う」とのこと。イオンモール京都桂川はそのどちらもあるハイブリッドということもあって嬉しそう。

そんなわけで、「良い駐車場があるかどうか」が良いイオンモールの条件その3。そして、イオンモール散歩に欠かせないものとして、モール内のショップや飲食店の案内を紹介した地図=フロアガイドを挙げます。「フロアガイドに載っている平面図と、散歩して見てきた外観の記憶が、頭の中で結びつき、大きすぎて全体を捉えきれなかったモールが模型の宇宙船みたいに立体的に浮かんでくる。それがたまらないのだ」と満足感に浸ります。すると、「お母さん見て見て。まだあの変なお姉ちゃんおるよ」という声が……。「ほら帰るよ。指ささないっ」と怒られても「ほなな〜」と手を振る女の子を生暖かい目で見送りつつ、「また見つけてしまった。素敵なイオンを」と思うのでした。

「イオンモールなどのモール建築は、画一的な部分もありつつ、一つ一つがオリジナリティある外観でとても面白いとずっと思っているのですが、あまりそのことに共感を得られなかったので描きました」ともぐこんさんが語るこのマンガ。「学生時代に当時のジャスコショッピングセンターでカート回収のアルバイトをしていて、一日中モールの周りを歩き回るうちにその独特の存在感に魅了されていきました」といい、「構造は画一的なのに、その土地や地域の特色や作られた時期などを反映して、それぞれにオリジナリティをしっかり感じさせてくれる部分がモール建築の最大の魅力だと思います」と話します。

「郊外で巨大化しまくっていたゼロ年代のモールが一番好き」というもぐこんさんにイオンモール京都桂川のほかのオススメを聞くと、「ダイヤモンドシティ・アルル(現在のイオンモール橿原)、越谷のイオンレイクタウン、イオンモール沖縄ライカム」の3つを挙げてくれました。アルルは2004年、レイクタウンは2008年、ライカムは2015年開業。広くてコンセプトが明確な事が特色といえるでしょう。

イオンモール京都桂川に行ったことある人からの反応のほか、「映画オタクはイオンモールの営業時間外のルートに詳しくなる」といった声が寄せられていたこのマンガ。もぐこんさんは「巨大建築好きという趣味の方が結構いらっしゃって、その方々が反応してくれるのが面白かったです。モール巡りを趣味にしてる方もSNS上で見れて、それぞれのお気に入りのモールの写真を載せてくれているので、SNSに上げて良かったなと思いました」と話してくれました。

自身初となる単行本『推しの肌が荒れた』について、「収録作品はイオンモールと全く関係ない漫画ばかりですが、イオンモールの中にある書店やヴィレバンにも並んでいると思いますので、暑い休日は是非イオンモールに出かけて本を手に取ってみてください」というもぐこんさん。短編集片手にモール内のカフェでまったり過ごすというのも楽しそうです。

※画像はTwitterより
https://twitter.com/mogra16 [リンク]

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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