いいね!乞食に成り下がる意識の高い学生たち

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いいね!乞食に成り下がる意識の高い学生たち


今回はtokunoribenさんのブログ『拝徳』からご寄稿いただきました。

いいね!乞食に成り下がる意識の高い学生たち

「大学生活7年間で感じる学生の変化」 2013年04月21日 『smirnoffのブログ @smirnoff1319』
http://smirnoff1319.blogspot.jp/2013/04/blog-post_21.html

大学時代の友人からこちらブログにコメントいただきたいとのリプライをいただいたので、せっかくなのでブログでも記事にしてみようと思って書いてみます。

上記のエントリの要約としては、「昔の意識高い学生は「IT系×ベンチャー」だったけど今は「社会貢献×活動の器の形は問わない」という形に変化しているよね!」って内容です。

これを学生自体の意識の変化と捉えるかというと、僕はあんまりそうは思いません。

変化の潮流のさなかにいる人間からすると、まさに歴史の劇的な転換点にいるかのような感覚になりますが、歴史をひもといて考えてみると、同じような現象が過去に見られたということは多々あります。

そういう視点から考えてみると結局意識高い学生というのは結局何かというと、いつの時代も「自分が社会から認められたい。ちっぽけな存在だと思われたくない。という承認欲求が高い人たち」ということでほぼ説明できます。

その欲求のはけ口が、ある時代ではヘルメットをかぶりゲバ棒をふりまわしたりすることだったり、大きなイベントを主催することだったり、会社という組織をつくったりすることだったり、社会貢献をしたりという形になったりしてるだけです。

そしてこの承認欲求はどう収斂するかというと大学卒業というひとつの節目に企業側からの歩み寄りでだいたいの場合解決することになります。

かつて「反体制・反資本主義」を掲げゲバ棒をふっていた学生たちが、卒業間際になり求人票が送られてくると「まぁ、まずは相手側のことを知る必要があるな…」などと言ってしれっと資本主義・体制の固まりのような大企業に就職し今は体よく退職金の心配をするなど完全に資本主義の犬に成り下がっている姿や、「これからは大企業ではなくてスタートアップの時代だ」などとイベントでたまわっていたはずの友人が、気がつくとちゃっかり大企業で働いていて「俺は・・・成長するぜ・・・」などとのたまわっている姿などを見ていると、やっぱりいつの時代も学生はおんなじようなもんだな。と思います。

で、冒頭にあった意識高い学生が「IT系×ベンチャー」から「社会貢献×活動の器の形は問わない」へと変化していった背景ですが、多分答えは簡単で、ソーシャルメディアが普及したことによって簡単に承認欲求が満たされる土壌ができたからだと思います。

2000年代前半にかけては、いわゆるマスメディアが絶頂期だったこと、ベンチャー支援のための規制緩和とITという領域の目新しさもあったので、マスメディアに取り上げられやすい「IT系×ベンチャー」という領域での所為を通じて、株価やマスメディアといった市場での反応を原動力に承認欲求を満たしていたのが2000年代後半にかけてはFacebookやTwitterのようなソーシャルメディアがかなり一般層まで普及したことによって、自分の所為の反応がリアルタイムかつダイレクトわかりやすくなったので、なるべく「いいね!」されやすい活動領域へシフトしていって「いいね!」で承認欲求を満たすようになった、というところでしょうか。

というのもビジネスが本質的には「強者が弱者から毟り取る」という反倫理観上の行為に立脚するのに対し、社会貢献は「強者が弱者に手を差し伸べて分け与える」という倫理観上の行為に立脚するので、社会貢献というのはビジネスより「いいね!」がされやすい傾向にあります。

これは例えばソーシャルゲームの企業が何十億もの利益をあげたというニュース記事よりも、個人が恵まれない人や国に寄付をした、支援をしたという些細なニュースの方がいいね!されているという、ネット上の様々な事例を見ればなんとなくわかってもらえると思います。

だから今の時代承認欲求を満たす為には、別に会社をつくって何十億もの利益をあげるより、社会貢献してソーシャルフィード上でそれをアピールした方が手っ取り早いことになります。

ただし、気をつけないといけないのはこの「いいね!」というのは行為を行った個人や行為に対して贈られるものだけでなく、自らの倫理観を主張するための代替手段としてのいいね!という側面を含んでいるという点です。

「いいね!」を押さないことにより、あなたの人間性に誤った印象をもたれる、あるいは自らの倫理感を否定してしまう、それを防ぐ為にいいね!をする、世の中には意識したでせよしないでせよそうやって押された「いいね!」がきっと無数にあるのだと思います。

こうやって押された「いいね!」は手っ取り早くあなたの承認欲求を満たしてくれますが、継続性という点においては実に脆い存在です。

「いいね!」はあなたの承認欲求を満たしてくれますが、あなたのお財布は満たしてくれません。もしあなたのお財布を満たすようなのがあるとしたら、それはそもそも本来「いいね!」を押されないようなことであるからです。

生活が守られている学生のうちにはこれでもいいと思います。たとえ金にならないにせよ、この集まった多数の「いいね!」を最後は大企業の内定に換金して、あがれますから。

ただ、これをそのまま社会に持ち込もうとするのはまた違った話です。

人は志やきれいごとだけでは生きていく事ができません。いつかは限界がきてしまいます。志なき金が無力であるように、金なき志もまた無力です。

にわかにあふれる社会貢献を中心とした学生の組織体がかつての全学連や学生ベンチャーに比べて単に構成員のソウルジェムが濁るまで長持ちしやすい組織となってしまったのでは意味がないと思います。

なので、もし学生のあなたがこれが本当に自らの天命だと思ったのなら単に手っ取り早く「いいね!」を獲得して承認欲求を満たすようないいね!乞食に成り下がらず、物事の本質を見抜き持続的、本質的な解決を目指す大局観をもって行動していけばいいのだとおもいます。

そうでないのなら、もっと皆がいいね!を押さざるをえないようなテーマの社会貢献をチョイスして手っ取り早く「いいね!」をちょうだいして、それをネタに自分を大企業に売り込んで売り抜けちゃった方がいいですね。

これもまたかつてから繰り返されてきた学生特権の「バイアウト」なんだと思いますから。

執筆: この記事はtokunoribenさんのブログ『拝徳』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年04月25日時点のものです。

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