映画『バブル』広瀬アリスインタビュー「荒木監督にお会いできたら、それだけで…という気持ちで受けたオーディション」

日本が世界に誇るトップクラスのクリエイターが集結。世界に降り注いだ泡<バブル>によって、重力が壊れた東京で、少年と少女の想いが引かれ合う、グラビティ・アクション・ラブストーリー『バブル』がいよいよ 5月13日(金)に全国公開となります。

監督はアニメ「進撃の巨人」のアクション映像で瞬く間にその名を轟かせた荒木哲郎。 「SPY×FAMILY」のWIT STUDIOが制作を担い、透明感あふれる至極の美麗映像と、 本スタジオの真骨頂ともいうべき縦横無尽なカメラワークで描破する怒涛のハイスピードバトルをぜひ大スクリーンで観ていただきたい作品です。

本作で、バブルを調査する科学者マコトの声を担当したのが広瀬アリスさん。本作の監督を務める荒木作品の大ファンでもある広瀬さんにお話を伺いました。

――本作でのマコト役はオーディションだったと聞いていますが、広瀬さんの大好きな「進撃の巨人」を手がけられた荒木監督の新作だということが大きかったですか?

そうですね。荒木監督をはじめ、知っているスタッフさんばかりが集結されていて。最初は「受かりたい!」というより、「お会いできたら、それだけで十分です…!」という感覚でオーディションに行きました。

オーディション自体は本当に10分、15分だったのですが、お芝居をやっているうちに、どんどん自分の中で、「この役を演じたい」という気持ちが強くなっていました。

――無事マコト役に合格した際はどの様なお気持ちでしたか?

素直に嬉しかったです。でも、とても不安でもありました。やっぱり、声のお仕事って、専門職というか。誰もが完璧に出来るものでは無いと思っているので、「ちゃんとできるかな…」と。どちらかというと不安の部分の方が大きかったです。

――音響監督さんから「こう演じてほしい」というお願いはありましたか?

「お姉さん的存在であってほしい」というのと、今回マコトがナレーション部分も担当しているので、お芝居部分とナレーション部分の差を大きくつけたいということで、ナレーションの部分は画を全く見ずに、「自分の間でやってください」と言われました。「好きなようにやっていいんで」と。なのでリラックスしながら、じっくり録らせていただきました。

――アフレコ中に印象的だったことはありますか?

“声の距離感”は、いちばんよく言われました。「今のも良いんだけど、もうちょっと遠くに話しかけてみて」とか。私が思っていたよりも遠くの人に声をかけるようにしないといけなかったみたいで、そういった距離の感覚は実写のお芝居とは全然違うので何度かやり直しました。声優さんは、緩急とか強弱を全部、声だけでやっていらっしゃるので本当にすごいなと。自分が普段どれだけ表情とか動きに頼りながらお芝居をしていたんだろう…と思いました。

――最初におっしゃっていた、「大きな不安」は、どこで取り除かれましたか?

監督が寄り添ってくださったっていうのが一番大きいです。録り終えて全部、不安が消えたかというとそんなことなくて。いまだに「バブル」公開前のお仕事をすると「大丈夫かな」って思うことはあります。「マコトは心地よくて見ていると落ち着くよ」って荒木監督にも言っていただけて。心強いなと思っています。

――荒木監督というと「進撃の巨人」をはじめ、スペクタルなアクションシーンを描く印象なんですが、今回は青春ラブストーリーを軸にした物語です。荒木監督が描くラブストーリーに対して、どんな感想をお持ちですか?

マコトというキャラクターは見守る立場ではあるので、恋愛要素には関与していなかったのですが、ヒビキとウタの恋愛描写がすごくピュアで。荒木監督はそういった、すごく繊細なところもお持ちなんだなって。言い方は失礼ですけど、今までの作品の感じを見ていると結構いかつめのものが多かったので、すごく新鮮でした。

――荒木監督以外、他のスタッフさんの作品で好きなものはありましたか?

澤野弘之さんの「進撃の巨人」のサントラもダウンロードして聴いていたので大好きです。虚淵さんの「PSYCHO-PASS サイコパス」も、観ていましたし、小畑健さんの「DEATH NOTE」も観てましたし…ほとんど…もう全部です。私の中でとんでもないメンバーが作品を作るって聞いて、もう…「作品を見たい!」って感じでした。もうパンフレットに書いてあるお名前も全員知っているので。あああ…!眩しい!

――私も皆さんのファンですが、個人的に澤野弘之さんの音楽が大好きなので興奮しました。

音楽最高ですよね!それこそ、今回のクリエイターさんって、ちょっと激しめの作品が多い方々だと思うのですが。今回も東京が崩れるとか躍動感のある激しいシーンもありつつ、悲しくなったり、心が打たれるシーンもあって。そういう繊細な部分が多い作品だと思いました。またそこの振り幅でやられちゃいます。また新たな一面と言い方はおこがましいかもしれませんが、テイストが違う作品でご一緒できたこと、本当に光栄に思っています。

――マコトというキャラクターは作品の中でもホッとする、みんなが大好きになるキャラクターだと思います。広瀬さんは、マコトのどんなところが好きですか?

みんなに愛されていて、キャッキャしているイメージが強いと思うんですけど。だけど、ちゃんと研究者としての役割もあって。いろんな顔を持っている女性だなと思いました。荒木監督からはみんなのことがすごく心配で、お姉ちゃんというか、親というか、そういう目線でいれる存在でいてほしいと言われました。私がマコトのシーンで個人的に好きなのは、みんなでお酒をバーって飲んで騒いでいる所です。あそこは、心からホッとできるシーンだなと思います。

――私もあのシーンがとても好きです。普段もアニメをご覧になるとき、日常描写に惹かれますか?

そうですね。カッコいいシーンはもちろんカッコいいですが、だからこそ日常の姿を見ると、みんな普通の人間なんだなって思えるときがあって。ついそっちに目がいってしまいます。

――志尊さんとりりあ。さんは声優さんではないキャスト陣です。お2人のお芝居はいかがでしたか?

志尊さんは、ヒビキにぴったりでそのものだなと思っていて。「ちょっと影のある感じ」って声でもこんなに伝わるんだって思いました。ウタも少ないセリフの中で、こんなに魅力的で惹かれるキャラクターがいるんだなって。多分、りりあ。さんの声質なんだと思うんですけど。私、元々りりあ。さんの曲を知っていて。曲とはまた違う声で、きゅんってしました。

――りりあ。さんの楽曲はネット上で知ったのですか?

そうです。SNSとかで回ってきて知りました。曲がストレートで「嫌なことは嫌」とか。恋愛系が多いと思うんですけど。女性が心の中で思っているけれど、人には言わないことを全部歌詞に書いてくださるから面白いなと思って、よく聴いていたんです。

――本作のエンディング曲もりりあ。さんが担当されていますね。

私、泣きました。自分の作品で泣くことって無いんですけど、ちょっとうるっとして。マネージャーさんも横で鼻をすすって泣いていて(笑)。作画やストーリーはもちろん、音楽も素晴らしくて心が洗われるような作品です。Netflixでも観られますが、劇場で観た方が、全身でバブルを感じられるので、おすすめしたいです。崩れている東京がリアルなんですよね。自分の知っている街が崩れている姿が幻想的で美しい。画力がとにかくすごいです。

――今回お話を伺って、荒木監督作品への愛をすごく感じたのですが、荒木監督とは雑談とかおしゃべりはしなかったのでしょうか?

雑談はほとんど仕事の話だったんですけど、一つ印象的だったお話が、「『バブル』にアリスさんが出ることを、娘だけには言っちゃったんだよね」って。テレビに出ていた私を見て「今度、お父さん、この人と一緒に仕事するんだよ」って言っていただいたみたいで。とても嬉しかったです。

――改めての質問になってしまうのですが、広瀬さんが漫画やアニメがお好きになったきっかけはどんなことですか?

多分、漫画からなんです。どちらかというと漫画の方が圧倒的に読みます。小学校低学年のときだったと思うんですけど、父が買ってきた漫画が面白くて読み始めたことがきっかけだと思います。

あとは親友が漫画をいっぱい持ってて、親友の家に行って読み漁ったり、授業中に漫画を交換して教科書に挟んで読んでたり、そんなことばっかりして…。20歳になるくらいの時に、自分が出た作品の漫画を買い集めて、それを何回も読むのが面白いなぁと思って。そこから色々な漫画を集めるのが楽しくなってきました。

――広瀬さんのチョイスって一本芯が通っていて素敵だなあと思います。

基本ダーク。みんなに「気味が悪い」って言われます(笑)。後味悪い作品が好きなんです。正義というよりも悪を推してる作品が多いですね。

――最近のイチオシは何かございますか?

最近は仕事であまり読めてないんですけど…。「アイアムアヒーロー」の花沢健吾さんが描いた「たかが黄昏」面白かったです。独特で人間味のある感じと変わった世界観と、これから深掘りされて面白くなっていくんだろうなというストーリーでワクワクしています。

――いつか本屋さんに広瀬アリスさんコーナー作って欲しいです!

偏った人しか集まってこなさそうですね(笑)。

――(笑)表紙は黒が多めですよね。

どろっとした文字で(笑)。今あまり時間がなくてあんまり読めてないんですけど、早く本屋さんへ行って新しい漫画をたくさん読みたいです。

――いつか実現することを楽しみにしております。今日は楽しいお話をたくさんありがとうございました!

(C)2022「バブル」製作委員会

撮影:オサダコウジ

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

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