「名前は知っているけれど、どんな国?」を解決 世界212の国と地域を解説した一冊
否が応でも世界情勢に目がいく昨今。紛争が起こった国々で過去に何が起きていたのか気になる、オリンピックで見て「名前は知っているけれど、どんな国だっけ?」と疑問に思ったなど、世界の国々に注目する機会が増えたのではないでしょうか。
今回紹介する井田仁康さんの著書『読むだけで世界地図が頭に入る本 世界212の国と地域が2時間でわかる』は、世界212の国と地域の過去と現在を含めた特徴がざっと解説されています。それぞれの国のメインポイントがぎゅっと凝縮されているので、パラパラと読むだけでも楽しいでしょう。
たとえば、日本人にも馴染み深いであろう台湾は、このように紹介されています。
「第二次世界大戦後、台湾は国民党政権(中華民国)の支配下にありましたが、1949年の中華人民共和国成立により国民党は台湾に逃れ、『2つ中国』が存在することになりました。
社会主義国家建設を着実に進めた中国が1971年に中華民国に代わって国連加盟を果たすと、多くの国が台湾との国交を断絶し、現在ではわずか15カ国のみが外交関係を締結しているに過ぎません(2021年)」(同書より)
知っている方も多いかもしれませんが、日本は台湾を「国」と認めていません。大地震が起きた際に多額の義援金を送ってくれたことも記憶に新しく、有事の際には支え合っている印象がある台湾ですが、「1972年の日中共同声明に則り、『非政府間の実務関係』という民間レベルの交流」(同書より)に限られているのです。
ほかにも、ワーキングホリデー先や観光先としても人気のオーストラリアを見てみましょう。
「1770年にイギリス人クックがシドニーに上陸し、イギリスが領有を宣言してからイギリス移民によって農地や放牧地が拡大されました。(中略)1851年に始まったゴールドラッシュで、世界各地から一攫千金を狙う採掘者が集まり人口が増加すると、ヨーロッパ系住民を優遇する移民制限法が1901年に施行され、白豪主義政策が採られました」(同書より)
しかし経済発展を重視するため、1975年に人種差別禁止法が成立。ほんの47年前です。それが今では国民の3割が外国出身者とのこと。
また、アボリジナルピープルの権利を尊重する一環として、有名な観光地「エアーズロック」は現在、アボリジニの呼び名である「ウルル」と呼ばれるようになりました。そして2019年には、アボリジニの神聖な場所をけがす行為として、ウルル登頂は禁止されています。
同書では「平均寿命は世界一、世界で最も少子化が進む国」として日本も紹介されていますし、周辺国である韓国や中国、そのほか大国から小国まで、多くの国と地域を知ることができます。もちろん、いま一番気になるロシアとウクライナの過去の緊張関係についても書かれています。
ニュースでよく聞く国はどんな国なのか、歴史や文化、どんな問題を抱えているのかなど、疑問がわいたときにさっと確認できる同書は、手元にあると便利です。旅行で訪れた国を調べてみるのも楽しいですし、これから旅行したい国がどんなところなのか、観光本には書かれていないような情報も非常に興味深いです。
「豊富な知識があれば、その人の見る景観は豊かになり、異文化に触れたときに得られる発見や感動も大きくなります。もし現地を訪れる機会があれば、より一層強く感じられることでしょう」と著者の井田さんは言います。「名前は知っているけれど、どんな国なのかな?」と思ったら、同書をチェックしてみてはいかがでしょうか。
[文・春夏冬つかさ]
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