「女性らしさ」に抑圧されながらも制作した作家たちの作品の力強い光に色を見る。流 麻二果 『その光に色を見る Spectrum of Vivid Moments』
「曖昧の眼/More Than Meets the Eye」 2022 Oil on canvas 130.0×194.0cm Photo:KATO ken
ポーラ ミュージアム アネックス(東京・中央区銀座)では、絵具を幾層にも重ねて色彩豊かな絵画を制作する流 麻二果の展覧会 『その光に色を見る Spectrum of Vivid Moments』を2022年4月22日(金)から5月29日(日)まで開催。
「色彩の作家」と呼ばれる流の多彩な絵画は、鮮やかでありながら淡い色彩を持ち、透明感と陰影が重なり合う特有の質感を生み出している。近年は、2018年のポーラ美術館アトリウムギャラリーでの個展で、ポーラ美術館所蔵の印象派絵画を解釈・再構成した作品を制作したことをきっかけに、伝統的な絵画における色彩を丁寧に追体験しながら、新たな解釈と再構成として色を何層にも塗り重ねた絵画のシリーズ「色の跡」に取り組んでいる。
そのなかでも本展では、2020年の練馬区立美術館「再構築 Re Construction」展で発表した「女性作家の色の跡」シリーズの新作を展示。流は、過去に画家を目指した近代女性作家たちは、家庭を優先するために制作を諦めたり、また、制作を続けたとしても、女性であるということから活躍の機会が少なかったりという状況は、現代の女性にも通じるものがある。と考えた。もし、彼女たちが現代や未来に生きていたら、作家としてどのような活動をしたのだろうかと想像し、日本における女性の生き方、作家としての生き方を歴史と共に見直し、それを未来に繋げていきたいという想いから制作された作品。 日本での個展は4年ぶりとなる今回、この「女性作家の色シリーズ」ほか、新作を含めて約13点を展示予定。
以下、作家ステートメント。
私は自然光のもとで絵を描く。
色を見つけるには、人工の強い光ではなく、柔らかく隅々まで照らしてくれる太陽の光が必要だからだ。
強い光のもとでは、あらゆるものが明るみになる。と同時に、影になって見えなくなるものもある。
社会の仕組みの中で見えなくなってしまっているもの、我々が見て見ぬふりをしてきたもの。
人工的な強い光は影も生んできた。
自然の光の下では、移ろいや機微を捉える曖昧な眼を自分の中に感じる。曖昧さは時に欠点なのだが、
強い光では見えない多様で深層的な光を感じとることができる力とも捉えている。
例えば、生きていることを感じる光。
戦時を生き残り、彫刻家として生き抜いた父が数年前に死を迎えた時に放った光は強烈であったし、
このパンデミックで世界には一様に生きようとする光が放たれていた。
そして日本文化が作り出した「女性らしさ」に抑圧されながらも制作した作家たちの作品の力強い光。
そうした光を見つけ、受け止め、その光のもとに見えてくる多彩な色を「生きている色」として描く。
その光に色を見る。
また、Pola Museum Annex(東京都中央区銀座)と9月開催の高梁市成羽美術館(岡山県)での個展『Spectrum of Vivid Moments その光に色を見る』と併せて、流 麻二果初の作品集『Spectrum of Vivid Moments その光に色を見る』が2022年4月15日に出版される。
2021年にはニューヨークでの個展『In Between』(MIyako Yoshinag Gallery) が、ニューヨークタイムスの「今週末観るべき5選」に選ばれるなど、国外での活躍も目覚ましい流 麻二果の近年の仕事を4つのテーマと共に振り返り、制作に対する想いやコンセプトを明らかにする。アメリカの学術雑誌「アート・イン・フォーカス」日本文化社会論集に収録された、土金康子博士(クーパー・ユニオン大学、早稲田大学非常勤講師)とのインタビューを全文日本語訳掲載する他、新たな取り組みとして日本における女性の生き方、作家としての生き方を歴史と共に見直していく『女性作家の色の跡』シリーズも掲載、そのきっかけとなった練馬区立美術館の展覧会キュレーター真子みほによる寄稿 も掲載され、国内外での評価と取り組みが伝わる一冊。
雪はなぜ白い/Why is Snow White? 2022 Oil on canvas 72.7×72.7cm
秘めず/The Truth is 2022 Oil on canvas 72.7×72.7cm
色の跡:松林雪貞「雪貞画譜」 2022 Oil on canvas 21.1×33.3cm
色の跡:松林雪貞「雪貞画譜」 2022 Oil on canvas 21.1×33.3cm
全て Photo:KATO ken
流 麻二果「その光に色を見る Spectrum of Vivid Moments」
会 期:2022年4月22日(金)- 2022年5月29日(日) ※会期中無休
開館時間:11:00 – 19:00 (入場は 18:30 まで)
入 場 料:無料
会 場:ポーラ ミュージアム アネックス(〒104-0061 中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階) アクセス:東京メトロ 銀座一丁目駅7番出口すぐ / 東京メトロ 銀座駅A9番出口から徒歩6分
主 催:株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
協 力:ユカ・ツルノ・ギャラリー
U R L:http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/
※諸事情により内容が変更になる場合がございます。ギャラリーHP で最新の情報をご確認のうえ、ご来場をお願い致します。
問:ポーラ ミュージアム アネックス TEL 050-5541-8600(ハローダイヤル)
『Spectrum of Vivid Moments
その光に色を見る』
著 者:流 麻二果
発売日:2022年4月15日
定 価:4,400円(本体4,000円+税)
仕 様:A4変形 210x280mm 並製 120ページ 編 集・表 紙 デザイン:大代 理恵 アートディレクション:近藤 麻由
発行:株式会社 東京印書館
ISBN 978-4-9912566-0-8
流 麻二果
http://www.manikanagare.com
1975年生まれ。女子美術大学芸術学部絵画科洋画専攻卒。2002年文化庁新進芸術家在外研修員(アメリカ)、2004年ポーラ美術振興財団在外研修員(アメリカ・トルコ)。主な展覧会に「VOCA展」(上野の森美術館、東京、2000年・2006年)、「絵画を抱きしめて」(資生堂ギャラリー、東京、2015年)、「高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.05『見えてる風景/見えない風景』」(高松市美術館 、高松、2016年)、「色を追う/Tracing the Colors」(ポーラ美術館、神奈川、2018年)、「色の足処/The Colors Have Gone Through」(ユカ・ツルノ・ギャラリー、東京、2018年)、「Re Construction 再構築」(練馬区立美術館、東京、2020年)、「In Between」(Miyako Yoshinaga Gallery、ニューヨーク、2020年)。パブリックアート、ファッションブランドとのコラボレーションや、ダンスパフォーマンスの美術・衣装、建築空間の色彩監修など幅広く活動。日本の伝統色をアップデートするプロジェクト「日本の色」、子どもたちにアートを届ける非営利団体「一時画伯」発起人。
都市で暮らす女性のためのカルチャーWebマガジン。最新ファッションや映画、音楽、 占いなど、創作を刺激する情報を発信。アーティスト連載も多数。
ウェブサイト: http://www.neol.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。