【インタビュー+楽器紹介】生形真一(Nothing’s Caved In Stone)、東阪ワンマン開幕直前に語る新曲と「“2つの初”がおもしろい」
Nothing’s Caved In Stoneが2022年第一弾となる「Fuel」を配信リリースした。同作は4月9日に開催される自身初の大阪城野外音楽堂公演および、自身初のホールワンマンとなる4月20日のLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演といった東阪ワンマンライブ<Bring the Future>直前にリリースされた新曲だ。「大阪野音ライブに合う曲を作ろうと思っていた」という新曲「Fuel」は結果、攻撃的なNothing’s Caved In Stoneサウンドと呼べる仕上がり。技術力の高さを凝縮して、その中核に旋律を置いたここ最近のアプローチを踏襲しつつ、突進力の高いリズムがライブの盛り上がりを約束する。
◆生形真一(Nothing’s Caved In Stone) 画像
BARKSは、作曲者のひとりでありギタリストの生形真一に、先ごろ大盛況のうちに終了した<ANSWER TOUR 2021-22>の手応え、ライブやツアーならではのマル秘裏話、新曲「Fuel」、そして東阪ワンマンライブ<Bring the Future>への意気込みについてじっくりと話を訊いた。また、<ANSWER TOUR 2021-22>のギターサウンドシステムの全貌も生形自身に解説してもらった盛りだくさんのロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■すごく大事なことを思い出しました
■久しぶりの場所にも行くことができたから
──まずは昨年12月から今年2月にかけて行った<ANSWER TOUR 2021-22>の手応えから聞かせてください。
生形:オリジナルアルバムを携えたツアーは2年ぶりかな、すごく久しぶりだったんです。コロナ禍のツアーということでキャパが制限されて、歓声を禁止するとかいろいろな規制があったけど、なんにせよ無事完走できたということが、すごくよかったと思っています。得られるものもあったし、ライブを重ねることでバンドがどんどん洗練されていくというツアーならではの感覚をメンバー全員が実感できたから。もちろん初日には初日のテンション感があるし、毎回俺らは全力で。その結果、途中で一回完成された感覚もあって、ちょっと慣れてしまったなと思えばセットリストを変えたり。そこからまた完成させていくということもできた。そういう楽しみ方を久々に味わえました。
──やはり本数の多いツアーはいいですね。
生形:地方に行ってお客さんの顔を見れたことがよかったですね。この2年間、どういう気持ちでいたかということもステージに立てばわかるんですよ。すごく大事なことを思い出しました。俺らはそれでも、このコロナ禍でライブをしているほうなんですよ。去年3月に「Wonderer」をリリースして、大都市を廻ったし。でも、今回は本当に久しぶりの場所にも行くことができたから。
──では、最新アルバム『ANSWER』の楽曲をライブで演奏した印象はいかがでしたか?
生形:反応がすごく良くて手応えを感じたし、自分達もやりやすかったです。『ANSWER』というアルバムはNothing’s Caved In Stoneにしては結構シンプルな演奏が多いんですよ。そういう中で演奏の深さ……タイム感だったり、音色だったり、そういうものを追求できたかなというのはありますね。たとえば「Walk」は、今までのNothing’s Caved In Stoneになかったタイプの曲ですけど、すごく入り込めるんです。制作中にもアルバムのキーになる曲だなと思ったし、ライブで演奏して確信しました。
──「Walk」に限らず『ANSWER』では新しい顔を見せましたが、セットリストの中で以前の曲と混ざったときに違和感などもありませんでしたか?
生形:なかったです。俺らはこれまで11枚アルバムを出していて、もう100曲以上の既発曲あるんです。今回のアルバム以外で100曲以上あるわけだから、セットリストに関してはどうにでもできるというか。『ANSWER』収録曲に似た既発曲を入れるのもいいし、真逆の曲を入れるのもいい。手段はいくらでもあるんです。だから、新曲を馴染ませるという部分では全く悩まなかったですね。今までやってきたことが実っているなと思いました。
▲<ANSWER TOUR 2021-22>
──いいツアーになりましたね。ツアーといえば生形さんは、これまで何度もツアーを経験されています。ツアー中の出来事で強く印象に残っていることや、特に忘れがたい土地などを教えていただけますか。
生形:好きな土地はたくさんあるんですけど、一番行くことができてないのは沖縄ですね。ELLEGARDENでは何度も行ったけど、Nothing’s Caved In Stoneのツアーでは一回だけなんですよ。2017年だったかな。沖縄は少し異国みたいなムードもあって面白い。それに熱い人が多いという印象があって、「来てください」という声もいっぱいもらっているんです。今は時期的になかなか行けないけど、ぜひまたライブしたい。あと、印象に残っている出来事と言えば……めちゃくちゃいっぱいあって逆に浮かんでこない(笑)。
──今、ふと思い出したんですが、Nothing’s Caved In Stoneの初ツアーのときに、メンバー4人でケンカになったとおっしゃっていませんでしたっけ?
生形:ケンカというか(笑)。バンドに取り組むスタンスとか、ライブに対する姿勢が原因で言い合いになったりはしましたね。ただ、めちゃくちゃ揉めたわけじゃなくて、率直に意見を言い合ったという感じでしたね。でも実は、それはわりと定期的なんです。腹を割って話すことを1年に一回とか、ツアー終了後にしてます。<ANSWER TOUR 2021-22>終了後もメンバー4人にスタッフを交えて、今後のことをいろいろ話しました。
──バンドを続けていくうえで、風通しを良くしておくのは大切ですよね。
生形:そういうことをやらなくなってしまうとバンドはダメになっていくから。
──たとえば、「あの曲のキメ、いつもちょっと突っ込み気味じゃない?」というようなシンプルなことすら言えなくなってしまうようになってはいけないし。
生形:そう。意見交換し合う場を作ろうという空気が自然とあるんです。
▲<ANSWER TOUR 2021-22>
──ではツアー先に限らず、ライブ中のアクシデントなどで印象に残っていることは?
生形:ギタリストがライブ中に、うわぁー!ってなることといえば、弦が切れたとか、音が出ないとかだと思うけど、俺はNothing’s Caved In Stoneでも、ELLEGARDENでも、弦を切ったことは一回もないんですよ。
──えっ!?
生形:運がいいのかよくわからないけど、10代の頃から一回もない。でも、音が出なくなったことはあるんです。それも、よりによって吉川晃司さんのライブで、去年(苦笑)。
──……それはシビれますね。
生形:自分のバンドならまだいいんですよ。演奏を止めて「ゴメン」と言えばいいから。でも、サポートの現場ではそういうわけにはいかないじゃないですか。
──原因は?
生形:俺はライブのとき、すごく強くエフェクターのスイッチを踏むクセがあるんです。そのときはエフェクターをバコーン!と踏んだら、そのまま壊れちゃったようで、全く音が出なくなったんです。ただ、ギターテックもいるし、すぐ直ると思ってたんですよ。でも直らなくて、EMMA (THE YELLOW MONKEY / G)さんのテックさんも下手側に来てくれて、俺の前で3人くらいの人がトラブル処理してるという(笑)。結局、1曲丸々音が出なかったですね。吉川さんは、それを笑って見ていて、音が出るようになるまでMCでつないでくれたんです。 “長くかかるなー”と絶対に思ったはず。ライブ終了後、すぐに吉川さんに「すみませんでした」と謝ったら、「久しぶりに長い時間喋れてよかったよ」と言ってくれました。それが、ここ数年で一番辛い思い出です(笑)。
▲デジタルシングル「Fuel」
──サポートのときは、そういうプレッシャーもありますね。では続いて、3月30日にリリースされた新曲「Fuel」について訊かせてください。
生形:「Fuel」は去年末から今年頭にかけて作った曲です。4月の東阪ワンマンライブ<Bring the Future>に向けて新曲が1曲ほしいということもあって。最初に俺とひなっち(日向秀和 / B)とマニュピレーターの3人でスタジオに入って、デモを作ることから始めました。
──生形さんと日向さんで原形を作るという『ANSWER』制作から始めたスタイルを今回も採られたんですね。
生形:そう。以前はアイデアの断片だけとか、全くなにもない状態で、メンバー4人でスタジオに入ってプリプロをしていたけど、『ANSWER』制作から俺とひなっちで最初に形にするようになったんです。今回も2人で作りながら、メロディーはひなっちが全部作ったり。この曲はわりとひなっち主導で作った感じですね。
◆インタビュー【2】へ
■初めて生ライブを観たときの衝撃
■それをいろんな人に伝えたい
──「Fuel」はインパクトの強いベースリフで始まり、そのままユニゾンになるかと思いきや、違うギターリフが入ってくるというアレンジになっています。
生形:ユニゾンじゃなくて、別のギターリフを乗せたほうが面白いものになると思ったんですけど、最初はリズムとベースフレーズ、ギターリフが同時に始まる形でした。でも、「ギターリフも印象的だし、別々にしようか」という話になり、ベースとドラムから始まって、音がバッとなくなってギターリフが入り、その後、全て混ざる流れにしました。
──ベースフレーズの上に違うリフを乗せるという発想はさすがですし、インダストリアルなギターリフは音色も含めてすごくカッコいいです。荒々しさとメカニカルな質感を併せ持ったトーンですよね。
生形:ワーミーでオクターブ下を出して、ファズをかけた音ですね。ワーミーをオクターバーとして使うとちょっとデジタルな音になるので、それを活かしました。こういうギターサウンドはNothing’s Caved In Stoneの音になりつつあるというか、いつでも作れるんですよ。使い過ぎないように出し惜しみしているくらいな感じです。
▲<ANSWER TOUR 2021-22>
──サウンドメイクのセンスを感じます。それにBメロで世界が変わったり、サビでバーンと行きつつ、テンポは遅かったりする展開も絶妙です。
生形:構成は最初に俺とひなっちで作った後、4人でスタジオに入って音を合わせる中で決まっていきました。俺とひなっちとマニュピレーターの3人で作っているときと、オニィ(大喜多崇規 / Dr)と拓ちゃんが加わったときでは、雰囲気が変わったりするんですよ。そのままのときもあるけど、やっぱり人間がドラムを叩くだけで全然変わることもある。それを踏まえて、「ここはハーフビートになったほうがいいんじゃないか」というようなことを話し合っていきました。
──2人で作るメリットとバンドならではのメリットの両方を活かされているんですね。間奏で、重厚なリフパートから速い16ビートに切り替わると同時にギターソロが入ってくる瞬間が気持ちいいです。
生形:ソロのフレーズも含めて、最初に作った時点であったものですね。俺の場合、あまりないことなんですけど、ソロフレーズがパッと出てきたんです。元々はその前のリフパートはハーフビートではなくて、もっと自然な感じだったんですよ。普通に8ビートから、そのままギターソロへの流れだった。でも、ヘヴィなリフからパッと場面が変わるアレンジをメンバー全員が気に入って、ああいう展開になりました。
──構成やアレンジを丁寧に練り込むことで、「Fuel」は3分半ほどのコンパクトなサイズでいながら、ドラマ性がある曲に仕上がっています。
生形:わりとここ数年のNothing’s Caved In Stoneの流行りというか、課題というか。それまではだいたい1曲が4~5分あったじゃないですか。その中で演奏で楽曲をドラマチックに構成していたけど、最近は短い時間の中にドラマをギュッと入れる方向にシフトしています。
──今の時代感にフィットするスタンスですし、最新音楽に求められている疾走感も体現されています。
生形:実際のテンポと異なる体感的スピード感は、今はすごく大事にしているかもしれない。簡単にいうと、バラードみたいな曲でもメロディーの節回しで、すごくテンポがよく聴こえたりするんですよね。逆にいうと、テンポが速い曲なのに間延びして聴こえることもあって、後者は絶対に避けたいので、その辺は最近特に考えているかな。
▲<ANSWER TOUR 2021-22>
──海外のヒップホップなどに顕著ですが、テンポはスローなのに言葉を詰め込むことで、すごくスピード感を出してますよね。
生形:まさにその辺のアプローチに触発されたというか。ヒップホップは完全に歌でビートを作って、バックトラックと混ざることですごく心地いいサウンドを作り出しているんですよね。
──キャリアを積んだメンバーが揃っていつつ、時代の音に敏感なこともNothing’s Caved In Stoneの大きな強みになっています。新しい音楽を聴かれるのは、ミュージシャンだからという義務感のようなものからですか? それとも自然なことでしょうか?
生形:以前は常に最先端の音楽を知っていたかったけど、そういう気持ちがなくなった時期もありましたね。好きな音楽だけ聴いていればいいんじゃないかと。今、サブスクによっていくらでも新しい音楽をスマホから聴けるようになって、逆に俺は、それがあるからこそ聴かなくなったんですよ。情報が多過ぎて、どれを聴いたらいいかわからなくなってしまった。最近聴いた曲をもとにおすすめ楽曲を自動表示してくれる機能があって、俺が好きな感じのロックだったり、そういうのをずっと聴いている時期もあったんです。でも、情報に対する取捨選択の仕方が身についてきたというのかな。自分に合うサブスクの使い方がわかってくると、新しい音楽を聴くようになって、やっぱり面白いなと思えたりするんですよね。
──そこから得られるものもありますか?
生形:最近特に思うのは、俺が通ってこなかったヒップホップやR&Bの中に、いろんなヒントがあるということなんです。特にリズムのヒントがたくさん。アメリカでは何年も前からヒップホップやR&Bがシーンの中心にあったのに、自分はそこを避けてきたんですよね。でも、どういうジャンルにもカッコいい音楽があってカッコいい人がいて、それを避けてきたというのはもったいなかったと実感しています。
──話を「Fuel」に戻しますが、“人生は痛みや苦しみに溢れているけど、ここからまた歩いていこう”という内容の歌詞を歌っていますね。
生形:Nothing’s Caved In Stoneの歌詞は拓ちゃんと俺が書いていて、もちろんそこには個人的な思いも込めるけど、バンドとしてのスタンスやメッセージを発信するということが、暗黙の了解としてあるんです。「Fuel」の歌詞は拓ちゃんが書いたもので、やっぱりそういう内容になっていますね。最近の拓ちゃんは歌詞の草案をまずLINEで送ってくれるんですよ。それに対する俺らの意見も聞いてくれたりして。今回は特に誰も言わなかったかな。拓ちゃんが自分で何回か書き直して完成しました。
▲<ANSWER TOUR 2021-22>
──普遍的な応援ソングであると同時に、パンデミックや戦争が起きている今の時代に対する希望の歌になっていることが印象的です。では、「Fuel」のギターレコーディングで使った主な機材も教えていただけますか。
生形:まずアンプは、歪んだ音で基本的にマーシャルのJMP-2203。いつも使っているアンプですが、真空管を全部ヴィンテージのムラードに替えたんです。結果、ハイもローもだいぶ出るようになって、出過ぎちゃって少し抑えているくらい。ギターは結構いろいろ使っていて、自分のシグネチャーモデルのギブソンES-355、ヴィンテージのギブソン・ファイヤバード、あとヴィンテージのギブソンES-335です。ギターソロはシグネチャーモデルですね。実は俺、ソロで使うギターはわりとなんでもいいんですよ、大事なのは左手(フィンガリング)だと思っているから。自分が望む程度に歪んでくれればいい。あと、リッケンバッカーの335も使いました。
──リッケンバッカーですか?
生形:最近よく使うんですよ、ワーミーとファズとリッケンバッカーという組み合わせで。
──リッケンバッカーとファズ!?
生形:そう、U2のジ・エッジがやっているんですよ。2019年のU2来日公演を観にさいたまスーパーアリーナへ行ったら、ワーミーを使ったリフをリッケンバッカーで弾いてて。それから自分もリッケンバッカーを使うようになったんです。1966年製のリッケンバッカー335で、アームが付いているタイプです。最近はリッケンバッカーとファズの組み合わせが多いから、「Fuel」のファズパートでも使ったかもしれない。ファズはトーンベンダーだったかな。ちなみに、リッケンバッカーは『ANSWER』のレコーディングでも結構使いましたよ。アルペジオとかでも。
──生形さんがステージでリッケンバッカーを弾く姿も観てみたいです。「Fuel」は、バンドとしてまた新たなところへいったと同時に、多くの人に響く音楽となったのではないでしょうか。
生形:本当ですか? 自分達としては久しぶりに、攻撃的なNothing’s Caved In Stoneサウンドを聴いてもらおうかなと思ったんです。元々は大阪野音ライブに合う曲を作ろうと思っていたんですけど、野外に全然合わないゴリゴリの曲になった(笑)。日比谷野音ライブのときに作った「Beautiful Life」(2021年9月)は“野外”という感じでしたが、今回はNothing’s Caved In Stoneらしい曲でいこうということになったんです。
──洗練されていて純粋にカッコいい曲だと思います。そして、ここまでの話でも出ましたが、Nothing’s Carved In Stoneは4月9日に自身初の大阪城野外音楽堂、4月20日に自身初のホールワンマンとなるLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演といった東阪ワンマンライブ<Bring the Future>を開催します。
生形:大阪野音は初めてだし、実はホール会場でのライブも初めてなんですよ。学園祭出演のときに学校のホールでライブをしたことが一回あるだけで。<Bring the Future>はもともと、大阪野音がブッキングできて「いいじゃん! やろうよ!」ということになって。だったら東京でも開催しようと会場をいろいろ探したらLINE CUBE SHIBUYAをおさえることができた。大阪は初の大阪野音、東京は初ホールという“2つの初”というのもおもしろいなと。
──まさに“未来をもたらす”というライブタイトルにもぴったりですね。当日はどんなものにしようと?
生形:なにができるかをスタッフと話していて、新しいこともいろいろ考えています。実はアコースティックもやろうと思っているんですよ。年末から年始にかけて廻ったツアーはアルバム『ANSWER』収録曲をメインにしたセットリストだったから、4月もその延長でいこうかという話も当初はあったんです。だから、<ANSWER TOUR>の追加公演で大阪と東京という形も考えていた。だけど、新曲「Fuel」をリリースすることになって、セットリストでもベストライブ的なものをやりたいねということになって。来てよかったと思ってもらえるライブをする自信はあります。
──以前からNothing’s Caved In Stoneを応援している方は必見ですし、このコロナ禍で知って、まだ生でライブを体験していない人にもぜひ観てほしい内容となりそうですね。
生形:そうですね。ライブの感覚というのはどうしたってPCやスマホ、テレビ画面では伝わらないから。なるべく伝えようと思って映像作品にはしているけど、やっぱり圧倒的に違うものがあるじゃないですか。全身に響く音だったり、会場の高揚した空気感だったり。これは現場に行かないと味わえない。自分が初めて生ライブを観たときの衝撃はいまだに自分の中にあって。それをいろんな人に伝えたいという思いがあるんです。ずっとそういう気持ちでライブをしてきたし、コロナ禍によって最近はそういう思いがより強くなっている。4月の2本のライブもそういう意識で臨みます。
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■<ANSWER TOUR 2021-22>
■ギターサウンドシステムを語る
最新アルバム『ANSWER』を掲げて2021年からスタートしたツアー<ANSWER TOUR 2021-22>のファイナル公演が2月25日、豊洲PITで開催された。その圧巻のステージは先ごろ公開したレポートでお伝えしたとおり。ここでは、当日のステージ上にセットされていたギターサウンドシステムの全貌をご紹介したい。お馴染みのシグネチャーモデルをはじめ、同ツアーで初導入したアンプなど、生形真一本人がそのひとつひとつを解説してくれた。
◆ ◆ ◆
【GUITAR編】
▲Gibson Shinichi Ubukata ES-355 Vintage Ebony (’57 Classic) ※写真左/Gibson Custom Shop ES-355 (Piezo) ※写真右
▲メインギター(写真左)はギブソンと生形が共同開発したシグネチュアモデル。基本仕様はギブソンES-355と共通しているがクロームのハードウェア類やダイヤモンドfホール、バリトーンスイッチ、ブラックピックガードなどが採用されていることが特徴だ。
「メインで使っているシグネチュアモデルは2本あって、それぞれ搭載しているピックアップが違うんです。1本はギブソンの57クラシックで、もう1本はMHS (GIBSON MEMPHIS MHS ES-335 PAF)。同じライブで2本を使い分けることはなくて、その日の気分とか会場の特性に合わせて、どちらを使用するか選んでいます。どちらにも良さがあるけど、57クラシックのほうが最近の自分の好みに合いますね。豊洲PITのときも57クラシックを使いました」
▲写真右はピエゾピックアップが搭載されたカスタムショップ製のES-355。そもそもES-355はES-335の上位機種として開発されたモデルで、マルチバインディングやダイヤモンドヘッドインレイ、ゴールドハードウェアといった装飾が生み出すゴージャスかつ風格に溢れたオーラが印象的だ。ウッドマテリアルには、メイプル/ポプラ/ネイプルボディー、マホガニーネック、エボニー指板、メイプルセンターブロックを採用。レンジが広くアタックの効いたトーンから、ブルースやフュージョンなどはもとよりロックにもフィットするセミアコモデルとして知られている。
「このギターはアコースティックギターの音色を出すとき用で、今回のライブでは「Milestone」と「Recall」で使いました」
▲Gibson Custom Shop ES-355 Cherry Red ※写真左/Gibson SG ※写真右
▲生形真一がシーンに登場したことで、日本にセミアコを使用するロックギタリストが爆発的に増えたのは誰もが認めるところだろう。そんな彼がシグネチュアモデル制作期間中に愛用していたのが、写真左のES-355だ。現在は半音下げチューニング用としてスタンバイされている。
「半音下げチューニングの「Walk」で使っています。シグネチュアモデルを作るときにギブソンから、“バリトーンスイッチが付いているギターを試してほしい”と送られてきたギターです。2015年くらいに製造されたギターになるのかな。マエストロビブラートは最初から搭載されていて、最近はこのアームが好きですね。シンプルな構造だけど効きがいいし、アーミングしたときの感触も気に入っています」
▲生形のSGといえばペルハムブルーのフィニッシュを思い浮かべるが、最近のライブではマエストロビブラートユニットを搭載したこちらのモデルを使用。SGならではのヘヴィ過ぎないトーンや群を抜いた弾きやすさなども気に入っているとのことだ。豊洲PITのライブでは「We’re Still Dreaming」「Beautiful Life」「Diachronic」などで使用した。
「実はリハーサルのときに、ペルハムブルーのSGのネックが折れちゃったんです。このSGは修理してもらっている間、代わりのギターとして使わせてもらっていたものなんですけど、すごくいい。ペルハムブルーはクールな音で、こちらは明るくてカラッとした音だから、キャラクターが全く違う」
▲Gibson Shinichi Ubukata Firebird III ※写真左/PICK ※写真右
▲シグネチャーモデル第二弾となるファイヤーバードIII。1965年から1969年にかけて生産されたノンリバースタイプがモチーフだ。スペックは、マホガニーボディー/ネック、ローズウッド指板、P-90ピックアップ×3基、マエストロビブラートユニットを採用。
「まだ製作途中のギターなんですけど、ソリッドな音でエフェクターの乗りもいい。ファズをかけるとオルタナテっぽい音になるので「No Turning Back」とか「Rendaman」で使っています。あとは、俺が今一番好きなピックアップがP-90なんですよ。ここぞというときにはパワーがあるハムバッカーを使うけど、P-90は汎用性が高いんですよね。P-90が好きだというギタリストが最近増えているけど、それはよくわかります」
▲ピックはシェクター製のオリジナルモデルを使用。トライアングルタイプで、厚さは0.72mm。
「ずっとフェンダーのミディアムを使っていたので、オリジナルピックを作るときもそれを参考にしました。フェンダーのミディアムは0.80よりも少し薄くて感触がいい。オリジナルピックは俺にとっては絶妙な仕上がりです」
【EFFECTOR編】
▲EFFECTOR/FOOT PEDAL
▲数々のコンパクトエフェクターはFree The ToneのプログラマブルスイッチャーARC-3でコントロール。写真上段右から、 BOSSのアナログディレイDM-2W、SubdecayのフェイザーQuasar Quantum、Diaz PedalsのトレモロTexas Tremodillo、KLONのオーバードライブKTR、Human GearのファズANIMATO FORTE。それらが載った台の下は右から、Free The ToneのオーバードライブRED JASPER RJ-2V、Bognerのブースター/コンプレッサーHARLOW RUPERT NEVE DESIGNS BOOST With BLOOM、Wren and CuffのファズYour Face 60’s Hot Germanium Fuzz、その裏側にはZ.VexのファズFuzz Factoryもセット。写真上段中央部のmerisのリバーブMERCURY7 Reverbから左へ、Mad ProfessorのディレイDual Blue Delay、その下はBOSS のデジタルディレイDD-500、BOSSの電子メトロノームDr.Beat DB-12、KORGのデジタルチューナーDT-10。写真下段右から、DigitechのワーミーペダルWhammy 5、Free The ToneのプログラマブルスイッチャーARC-3、Free The ToneのボリュームペダルDIRECT VOLUME DVL-1 series、Jim DunlopのワウペダルSU95 Shinichi Ubukata Crybaby。
「核になっているエフェクターは上段右側の台下にあるんです。まずFree The ToneのRED JASPER RJ-2Vという新製品はブースターとして使っています。俺はアンプセッティングで歪ませているので、バッキングのときはアンプ直の音なんですけど、コードリフとか少し音量を上げたいときにONに。一番よく使うのはRED JASPER RJ-2VとWren and CuffのファズYour Face 60’s Hot Germanium Fuzz。Your Faceはいわゆるファズフェイスのクローンで、ファズフェイスはローがすごく出ちゃうんですけど、Your Faceはローを調整できるんです。あとは、NEVEとのコラボによるBognerのHarlowは、NEVEのトランスを搭載していて、そこが肝。ブースターとコンプの中間的なエフェクターなんですけど、すごくいい。だから音量を上げたいときは、JASPER RJ-2VかBogner Harlowのどちらかを使う感じですね。メインの歪みはこの3台あたりで、ギターソロとかで昔から使っているZ.VexのFuzz FactoryをONにしてます。HUMAN GEARのANIMATO FORTEは「No Turning Back」のリフとかでONにしていて、klon ktrはいわゆる普通のギターソロ……過激じゃない音で、ピッキングでニュアンスをコントロールできるようなソロを弾くときに使っています。ディレイのメインはBOSSのDD-500。Jim DunlopのSU95は俺のシグネチャーワウです」
▲EFFECTOR/FOOT PEDAL
▲メインボード左側のサブボードはピエゾピックアップ用スイッチとDI、アンプセレクターをセット。写真右上から時計回りに、Free The ToneのアウトプットセレクターFC-370 Output Selector、ピエゾとマグネットピックアップ切り替え用アウトプットセレクター、Mad ProfessorのディレイDeep Blue Delay、RadialのダイレクトボックスJ48。
「Free The ToneのFC-370はロッカフォルテとマッチレスを切り替用です。それと、ピエゾピックアップを搭載したES-355は、ギターの中にあるピエゾピックアップの回路を外に出しました。足元でON/OFFのコントロールしているんです。ギブソンのスタッフと相談して、ギターの中に入れると重くなるし、故障したときのメンテナンスも簡単という効率性を考えてのものですね」
【AMPLIFIER編】
▲AMPLIFIER
▲写真左のアンプヘッドは<ANSWER TOUR 2021-22>から新導入されたロッカフォルテ Levant Series。ロッカフォルテはエディ・ヴァン・ヘイレンのアンプのリペアやモディファイを手がけていたダグ・ロッカフォルテが立ち上げたアンプブランドだ。1960年代ブリティッシュアンプのクラッシックトーンを彷彿させるレンジの広さや圧倒的な音圧、抜けのよさなどを備えた良質なトーンを引き出せる。スピーカーキャビネットはマーシャル412Aキャビネットだ。
「ロッカフォルテはマーシャル系のアンプですよね、めちゃくちゃ気に入ってます。本当にいいアンプだけど、音がデカ過ぎて敬遠する人が多いみたいですね(笑)。マスターボリュームが付いてて、ツマミを“1”にしただけで爆音が鳴る。でも、先日の豊洲PITくらいの規模のライブだったら全然大丈夫。俺は普通の人よりもちょっと音がデカめだとは思いますけど(笑)」。
一方、写真右のマッチレスDC30は基本的にクリーン用としながら、曲によってロッカフォルテと使い分けているそうだ。
「今回は「Diachronic」とか「We’re Still Dreaming」でマッチレスDC30とギブソンSGの組み合わせで使いました。その辺りの曲にハマる音がするんですよね」
取材・文◎村上孝之
撮影◎西槇太一(ライブ)/野村雄治(機材)
■Digital Single「Fuel」
配信:2022年3月30日0時スタートhttps://ssm.lnk.to/Fuel

■東阪ワンマンライブ<Bring the Future>
4月09日(土) 大阪城野外音楽堂
open16:00 / start17:00
4月20日(水) LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
open17:30 / start18:30
▼チケット
指定席:6,400円
一般発売:2022年3月19日(土)〜
・チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/ncis-btf/
・e+:https://eplus.jp/sf/word/0000033776
・ローチケ:https://l-tike.com/artist/000000000414391/
※学生の方は会場にて学生証提示で1,500円キャッシュバック
※高校生以下の方は2,000円キャッシュバック
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