もし1980年代に『ネットフリックス』があったらこんな広告だった?! SNSのレトロ風映像が話題に/作者にいろいろ聞いてみた
これは完全におじさんの昔話なんですが、2000年ごろにDVD-Videoが普及した当時、再生した映像を見て「もうこれ映画館と変わらないな」なんて思っていました。もちろん映画館のほうが断然に解像度は高かったので先ほどの感想は筆者の思い込みなのですが、それまで使っていたVHS規格の記録メディアに比べるとDVDは映像に曇りが無いように感じたものです。
それが地デジやブルーレイが登場してHD解像度の動画が当たり前になり、今では4K映像が自宅のモニターで見られる時代となりました。
ここまでのざっくり20年だけでも身近な映像は大きく変化したわけですが、それ以前の昭和・平成のテレビ映像は、現在よりも特徴のある画質や絵作りでした。
これら趣のある“レトロ映像”、“レトロムービー”は昨今のレトロブームも手伝って再評価されています。
そんなレトロムービーのエッセンスを取り出して、最新サービスのCMを作ったらどうなるのでしょうか?──そんな作品が、ネットで話題となっています。
「1980年代初頭に地方局で放送されており地元民ならみんな存在を知っているが契約者の話は聞いたことがないローカルCM」みたいなNetflixのCMを作りました pic.twitter.com/Y1m4uc6JyL
— かねひさ和哉 (@kane_hisa) March 10, 2022
「1980年代初頭に地方局で放送されており地元民ならみんな存在を知っているが契約者の話は聞いたことがないローカルCM」みたいなNetflixのCMを作りました
https://twitter.com/kane_hisa/status/1501881106596990976
まさしく1980年代を思わせる構成のこのCM風作品、Twitterでは10.7万ものいいねを集めました。
こちらの作品を手掛けたのは映像クリエイターでありライターのかねひさ和哉(@kane_hisa)さん。
なお、別のツイートでは、この作品の作り方についても解説されています。
昭和50年代風「ネットフリックス」CMについて「どうやって作ってるの?」という声を多く戴いたので、簡易的なメイキング動画を作成しました。ちなみに作中の台詞やナレーションはかねひさ自身が担当し、ラストのサウンドロゴも友人とアイデアを出し合った上で自作しています。 https://t.co/aKZiQzhTMm pic.twitter.com/2myCYzFUOm
— かねひさ和哉 (@kane_hisa) March 15, 2022
昭和50年代風「ネットフリックス」CMについて「どうやって作ってるの?」という声を多く戴いたので、簡易的なメイキング動画を作成しました。ちなみに作中の台詞やナレーションはかねひさ自身が担当し、ラストのサウンドロゴも友人とアイデアを出し合った上で自作しています。
https://twitter.com/kane_hisa/status/1503623592969342979?s=20&t=vaQFsjctkJ6lEXIh-rOeDQ
絵コンテ作成から作画、フィルター加工を経て、実際のVHSに録画し直すという手間のかかりよう。かねひささんの映像にかかった独特の空気はこうして作られていたことがわかります。
作者のかねひささんに聞いてみました
今回、作者のかねひさ和哉さんにいろいろ聞いてみました。
─『ネットフリックス』など、レトロテイストがあふれるムービーの“本物感”が最高なのですが、相当に昔のムービーがお好きでないとなかなか作れないと思います。かねひささんのサイト( https://kanehisa-kazuya.jimdosite.com [リンク] )を拝見すると2001年生まれにして幼少期からレトロムービーに興味を持たれてたとあるのですが、きっかけはどんなことだったか覚えておられますか?
かねひさ和哉さん:“レトロムービー”という言い方が適切かどうかは私にはわからないのですが、確かに幼少期の頃よりアメリカの古いアニメーションや1970年代の日本で製作されたテレビアニメには特別な関心を抱いていました。「古いから興味がある」というより、むしろその時代に流行していた表現や、まだ技術が洗練されていなかったからこそダイレクトに伝わってくるアニメーションの楽しさに惹かれていた記憶があります。
きっかけとしては、幼少期にDVDや動画サイト、CS局などの各種メディアにて偶然『鉄腕アトム』や『ミッキーマウス』などの古いアニメ作品に触れたことが大きいかもしれません。
─今回のムービーの制作過程を可能な範囲で教えていただきたいです
かねひさ:制作期間は1日程度です(案外シンプルな工程で手間もあまりかかっていません)。まずはCMのイメージを組み立てた後にそのイメージを絵コンテに書き表し、コンテを元にアニメーションの原画をペイントソフトで作画します。
アニメーションの原画やナレーション音声(ナレーションは自分が吹き込んでいます)といった素材ができあがったら、Aviutlというフリーの映像編集ソフトで編集作業を行います。ラストで流れるサウンドロゴは自分で作曲し、「NEUTRINO」というフリーの音声合成ソフトを使用して歌声を生成しました。そうして完成した映像をフィルム映像風に加工した後、PCとVHSデッキを接続して映像をVHSに録画。VHSの映像データをPCに取り込み、ようやく完成となります。
─1日で!! ……あとAviutl、懐かしい! 有名なフリーの映像ソフトですね。僕もお世話になったことがあります……! かねひささんがこのムービー制作で気を使った点、苦労した点などはどこでしたか
かねひさ:やはりこの手の映像は如何にして皆さんの中にある「懐かしさ」という感情を掘り起こすかという部分に成功の決め手があると思うので、当時らしい表現の調整にはこだわったつもりでした。(しかし完成後、いくつかの時代考証ミスを複数の方から指摘され、まだまだ修行が足りないと痛感しました……)
─いち早く、古(いにしえ)の映像に着目されていたようですが、レトロムービーの魅力はどんなところにあると感じておられますか?
かねひさ:1960-70年代のCMには、表現が洗練されていない分クリエイターの挑戦したいことや熱意、試行錯誤の跡が直接的に画面に表れているように思います。
「昔は良かった」という懐古主義には個人的にあまり賛同できないのですが、昔の作品を現代に改めて再見することで、新しい発見や新鮮な驚きが隠されているのではないかとは強く思っています。
─ありがとうございます。かねひささんの更なる表現に期待しております
旧い人には懐かしい、新しい人には新鮮なレトロな表現は、かねひささんによる他のツイートでも触れることができます。ぜひご覧ください。
かねひささんのTwitter(@kane_hisa)
https://twitter.com/kane_hisa [リンク]
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