『ナイル殺人事件』映画レビュー「現代の観客により訴えかける内容に」「遥か遠い異国の旅情気分を味わって」
2月25日(金)に公開となる映画『ナイル殺人事件』のレビューをご紹介します!
世界中の映画ファンとミステリファンが公開を待ち望んでいた映画『ナイル殺人事件』が、ついに映画館にやってきます!! ご存知のとおり、原作はミステリの女王アガサ・クリスティー。2017年に公開された『オリエント急行殺人事件』に続き監督・製作をつとめたケネス・ブラナーが、今回も主役の名探偵エルキュール・ポアロを演じています。
ことの起こりは社交界でゴシップの嵐となった婚約報道。世界でも有数の資産家の一人娘リネット・リッジウェイ(ガル・ガドット)のお相手は、地方の名もない一家出身のサイモン(アーミー・ハマー)だったのです。たぐいまれな美貌と財産をあわせ持ったリネットは、それが原因で恨みを買うことも多かったのですが、今回の結婚発表で、ある一人の女性から命を狙われることとなります。彼女の名はジャクリーン(エマ・マッキー)。リネットの親友であり、リネットが婚約を発表する直前までサイモンと婚約していたのです。突然婚約者を奪われたジャクリーンは彼らを脅し、ハネムーン先のエジプトまで追ってきます。偶然エジプトを休暇旅行中だったポアロは事態を知り不吉な予感を覚えるのですが、一同を乗せてナイル川をさかのぼる豪華客船カルナック号の上でついに惨劇が起きてしまいます。
原作となった『ナイルに死す 新訳版』(黒原敏行訳/ハヤカワ文庫)は作者クリスティーが実際にエジプトを訪れ、遊覧船でナイル川を上った体験を思い出しながら帰国後に書いた作品だけあって、エジプトの名所旧跡や観光地での日常のひとこま、そして船旅の醍醐味などが臨場感あふれる筆致で描かれており、家にいながらにして遥か遠い異国の旅情気分を味わうことができます。
1978年に製作され日本でも大ヒットした映画『ナイル殺人事件』でも見どころだった壮大なアブ・シンベル神殿のシーンも新たに再現された本作は、衣装やセットの豪華さはもちろん、原作にひとひねりを加えた脚色をほどこし、現代の観客により訴えかける内容となっています。旧作ではニーノ・ロータの荘厳なテーマ曲が強い印象を残しましたが、本作では舞台となった時代のゴスペルやブルースの名曲が使用され、歌詞も含めて非常に重要な役割を果たしています。脇をつとめる俳優陣も、アネット・ベニング、ソフィー・オコネドー、レティーシャ・ライト、トム・ベイトマンをはじめ、誰が犯人であってもおかしくない手堅いラインナップ。原作を読んでいる方も未読の方も楽しめること間違いなしのクリスティー作品。ぜひ劇場でご覧ください。
【書いた人】♪akira
翻訳ミステリー・映画ライター。ウェブマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」、翻訳ミステリー大賞シンジケートHP、「本の雑誌」等で執筆しています。
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