畳空間は減少、洗面所は広く。注文住宅10年のトレンド変化
アキュラホーム住生活研究所では、自社が2009年から2021年に建築した注文住宅を各年で100棟抽出し、10年間の住宅の間取りの傾向を調査している。今回は、2021年と2009年を比較した間取りの変化や、直近のコロナ禍で流行した間取りがその翌年どのように変化したかを発表している。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「住宅傾向調査2021」を発表/アキュラホーム住生活研究所
コロナ禍で話題の「玄関手洗い」はどうなった?
アキュラホーム住生活研究所では、同社の施主のボリュームゾーンである延床面積30~40坪(約99~132平米)の住宅(単世帯)に限定し、各年100棟の間取りを抽出し、居室の面積や動線の長さなど様々な観点から傾向を分析している。なお、同社の施主の年齢を見ると、30代がほぼ半数を占め、比較的若い世代が多い点が特徴だ。
ではまず、コロナ禍で話題になった「玄関手洗い」の状況はどうなっているのかを見ていこう。
コロナ禍では“手洗い”が推奨され、ウイルスを室内に持ち込まないために、玄関の脇に手洗いを設置する間取りが注目を集めた。今回の調査結果を見ると、2020 年に一時的に増加したものの翌年の2021 年からは減少する傾向が見られた。代わりに、「玄関から他の居室を通ることなく、直接洗面所に行くことができる動線」が増加していることから、同研究所では「洗面台を2つ設置するよりも、間取りの工夫によってコロナ禍に対応する住宅が増加している」と見ている。
出典/アキュラホーム住生活研究所「住宅傾向調査2021」より転載
この結果には、筆者も納得感がある。筆者自身はマンションに住んでいるので、手洗いをする洗面所は玄関から近いこともあり、その距離が短ければ室内にウイルスを持ち込むリスクは少ないと思っていた。加えて、玄関手洗いを設置するには、玄関まで給排水管を配す必要があるので、間取りに制約を受けたりコストアップしたりといったことも考えられる。感染拡大当初は感染の不安が強かったものの、今は冷静に判断しているという印象を受けた。
10年間で洗面所が広くなり、シューズクローゼットの設置が増加
次に、10年間経って間取りはどう変化したかを見ていこう。
まず注目したいのは、「シューズクローゼット」だ。設置件数が、2009年では100件中32件だったのが、2021年には100件中75件にまで増加している。しかも、設置した場合の面積が広くなっている。同研究所では、ライフスタイルの多様化やコロナ禍のアウトドア需要によって、スポーツ用品やバーベキュー用品、子どもの外の遊び道具など大きな物を収納できるシューズクローゼットのニーズが高まったと見ている。
たしかに、シューズクローゼットは外で使う物を出し入れしやすいので便利だ。これに加えて、外出時に持って出たコートやカバンなども仕舞うことができるので、外出先で使ったものをできるだけ室内に持ち込みたくないという、今どきの発想もあるのだろう。
さて次に注目したいのが、「洗面所」だ。洗面所の面積が、2019年の平均2.3畳から2021年には平均3.0畳となり、3割ほど広くなっている。同研究所では、その要因を“共働き世帯の増加”と見ている。洗面所が広くなることで、収納を増やせるだけでなく、洗面所で洗濯や乾燥などの家事をまとめてできることで効率化が図れるからだ。
共働き世帯増加の影響はほかにも見て取れる。筆者は畳空間が減少するのは妥当として、バルコニーの設置率が減っている点に違和感があったが、「バルコニーがない間取りの大半(27件中23 件)には室内干しスペースが設けられている」というので、日中在宅しない共働きの影響が見られる結果となった。
出典/アキュラホーム住生活研究所「住宅傾向調査2021」より転載
特に、同社の施主の中心が30代ということもあり、共働き率はかなり高いと推測される。となると、家事効率や家族の家事参加などを意識した間取りが好まれるのだろう。
間取りは、延床面積が広いほど希望の形に配置しやすいが、2階建ての約99~132平米の住宅となると、何を重視して広げて、何を諦めて狭めるかといった選択をすることになる。となると、共働きの増加やテレワークなどの働き方の変化、子育てに対する考え方の変化など、さまざまな影響が反映されることになる。家庭ごとのライフスタイルは、今後もさらに多様化すると考えられるので、間取りはまた変わっていくのだろう。
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「住宅傾向調査2021」を発表/アキュラホーム住生活研究所
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