『GetsuFumaDen: Undying Moon』Switch版レビュー:『月風魔伝』をベースに再解釈・再構築したローグライクアクション
Steamで早期アクセス版としてリリースされていた『GetsuFumaDen: Undying Moon(ゲツフウマデン アンダイイングムーン)』が、とうとうNintendo Switchで配信開始! これは『GetsuFumaDen: Undying Moon』が本当の意味で完成したということ。つまり、いよいよ真の『GetsuFumaDen: Undying Moon』をプレイできる状況になった!
そこで、筆者も早速プレイ。その模様をご紹介したい。
完成を迎えた『GetsuFumaDen: Undying Moon』! そもそも早期アクセスとは?
早期アクセス版というのは、正式リリース前に未完成の状態でゲームをリリースするという手法。開発者側からすると、プレイヤーの意見を反映しつつゲームの完成度を高めることができる。一方プレイヤーの方は、いち早くゲームに触れる上、市販価格より安価な価格で購入できるというメリットがある。
早期アクセスは、PCゲームやスマートフォンゲームではたびたび見られる手法。しかし、家庭用ゲームでは目にしない。これは、早期アクセスという手法がおなじみのPCゲームやスマートフォンゲームで商品としての完成度を高めた上で、家庭用向けに発売するからだ。
つまり、『GetsuFumaDen: Undying Moon』がNintendo Switchで出たということは、完成を迎えたということになる。
『月風魔伝』の新作! 浮世絵風ローグライク剣戟アクションゲーム
『GetsuFumaDen: Undying Moon』は、ファミコン向けにリリースされていた『月風魔伝』シリーズの最新作。
ただ、シリーズといっても『月風魔伝』以降、本作に至るまで続編は出ていない。つまり本作はシリーズ2作目となる。ここまでの年数35年。ファンとしては非常に長い年月だった……。
本作のゲームジャンルは、「浮世絵風ローグライク剣戟アクションゲーム」とされている。アクションRPGだった『月風魔伝』のシステムをそのまま踏襲するのではなく、現代的なシステムへと再構築したかたちだ。ゲームシステムのコアになっているのは、ローグライク要素と、剣戟アクション。
これぞローグライク! 挑むたびに変化するステージとドロップアイテム
ローグライク要素というのは、コンピュータRPGの元祖と呼ばれる『ローグ』が持っていた要素のこと。具体的には、敵も味方も1ターンに一回行動するというシステム、ランダムに変化するダンジョン、ランダムなドロップアイテム……などが挙げられる。このうち本作が継承しているのは、ランダムに変化するダンジョンと、ランダムなドロップアイテムだ。
本作の主人公、月風魔が挑むステージは、入るたびにマップが変化する。このため、「この地形は右に行くんだよな……」だとか、「このタイミングが出たらジャンプ!」だとかいった風に覚えることに意味がない。臨機応変なアクションが求められるのだ。
そして、より重要なのは、武器がランダムにドロップするということ。風魔は武器ごとにアクションが変化し、プレイヤーは異なる立ち回りが求められる。このため、アイテムの出現状況はプレイスタイルに大きな影響を与えるのだ。
また、強化用の素材アイテムもランダムでドロップする。『月風魔伝』がそうだったように、本作も風魔や武器の強化が可能。ランダムドロップする素材アイテムを周回プレイによって収集し、強化することでより先のステージまで進めるようになるというわけだ。
ベースは剣戟アクション! 敵の攻撃パターンを見切ることが重要
ローグライク要素を持つ作品では、育成が攻略のカギとなることが多い。周回プレイを重ね、キャラクターを育成することで攻略を進める。先に触れたとおり、本作もこうした要素を持ってはいるのだが、それよりも剣戟アクションの方が高い比重を占めている印象だ。
本作の剣戟アクションは、強力な攻撃を連打し、ガンガン回復する……というタイプではない。敵の攻撃力は高く、回復アイテムもなかなか出現しないので、敵の攻撃を適切に回避することが重要。ノーダメージで一定回数以上の攻撃を行うと風魔がパワーアップしていく「鬼人化」という要素も存在するなど、回避が大前提の作りになっている。
このため、連打は基本的にNG。敵のパターンを見切り、攻撃タイミングで適切に回避アクションを発動。敵が攻撃を空振りしている間にダメージを与える……というのが、基本的な立ち回りとなる。
ただ、ここに絡んでくるのがランダムドロップ要素。武器の中には遠距離攻撃が可能なものも多い。武器はメイン武器2つ、サブ武器2つを装備し、自由に切り替えられるため、回避が苦手であれば遠距離武器で装備を固めておくというのも手だろう。
もっとも、武器はランダムドロップなので、望みの武器が手に入るかどうかは運次第。「なんだよ、運ゲーかよ!」と感じる人もいるかもしれないが、ランダムな状況でいかに最善を目指すか? がローグライク系ゲームの醍醐味。勝手がわかってくると、運をコントロールしているかのような感覚がおもしろく感じるのだ。
ところで、ステージやドロップアイテムがランダム変化するのに対して、敵のパターンは一定となっている。いくつかのアクションを持つ敵も、そのアクションを繰り出すサイクルやタイミングは一定。このため、初見だと苦戦するような強敵も、何度か戦っているうちにコツを習得、ノーダメージで倒すことができるようになってくる。
その最たる例がボス戦だろう。対処法がわからない初見ではボコボコにやられてしまうが、行動パターンを掴むことができれば、いとも簡単に倒せてしまう。この楽しさは、まさにアクションゲームの持つ楽しさだ。
調整によって早期アクセス版からぐっと遊びやすくなったSwitch版
ちなみに、ここまで書いてきたことは、早期アクセス版の時点でもおおむね実装されていた。では、早期アクセス版とSwitch版とで何が変化したかといえば、ずばりアクションのバランスだ。
早期アクセス版では、現在のバージョンよりさらに剣戟アクションの比重が高かった。敵の強さもさることながら、強化用の素材アイテムの出現率が低かったため、ほぼ純粋なアクションゲームといっていいほどのバランスだったのだ。しかし現バージョンでは調整によってグッと遊びやすくなっている。
とはいえ、主体が剣戟アクションという点は早期アクセス版と変わらない。敵のパターンを覚えることでまずプレイヤーの腕前がアップ、すると、そのころには素材アイテムも貯まっていて、キャラクターの方も強くすることができる。つまり、あくまでプレイヤー自身がアクションを楽しむことが前提。
このため、正直なところ、ゲーム序盤はややストレスが貯まった。敵のパターンがわからずゲームオーバーを繰り返す上、素材アイテムがなかなか貯まらず、キャラクターを強化できないからだ。
しかし、勝手がわかってくると、自分の上達にキャラクターの強化が掛け合わさって、一気に楽しさが増してくる。おもしろさが徐々に高まり、やがて爆発するといった印象だ。
『月風魔伝』を再解釈・再構築した新規作品
最後に、『月風魔伝』シリーズの新作としてどうか? という点について触れておきたい。なんといっても35年ぶりのシリーズ新作。この点に触れないので終わることはできない。
冒頭でふれたとおり、『月風魔伝』はアクションRPGだった。RPGのように見下ろし型マップで探索を行い、横スクロールのアクションステージや3Dダンジョンに挑戦。アイテムを手に入れ、風魔を育成してボスに挑む……
本作は『月風魔伝』が持っていた横スクロールアクションの要素を剣戟アクションとして。そして、見下ろし型マップや3Dダンジョンでの探索といった要素は、ランダム生成マップの探索要素へ。アイテム探しや育成の要素は、ランダムなドロップアイテムによる育成要素……と再解釈した上で取り込んでいる。
こうした再解釈を行い、現代的なローグライクアクションとして作り上げた手腕は見事だと思う。ただその一方で、『月風魔伝』シリーズのプレイ感かと言われると、やや違和感が残るかも……旧来のファンからすると、シリーズの新作というより、『月風魔伝』をベースとしながら、再構築した新規作品と考えた方がいいかもしれない。
もちろん再構築した新規作品と捉えるなら、世界観も含めて非常に魅力的だ。とくに、浮世絵風ビジュアルで再現されたボスキャラクターたちは素晴らしい。ボスに出会う旅に、「今度のボスはどんな攻撃を出してくるんだ?」というワクワク感がある。
また、デジタルデラックスエディションで購入すると、初代『月風魔伝』がついてくるので、「やっぱり初代がいい!」だとか、「もう忘れちゃったから、初代を再プレイしたい」という人は、そちらがオススメ。古き良き『月風魔伝』の楽しさも、現代風に生まれ変わった楽しさも、両方味わうことができる。
筆者は『月風魔伝』の一ファンとして、本作をベースに初代『月風魔伝』の要素を取り入れつつ、ぜひ今後、継続的に続編をリリースしてほしい。35年も待たされるというのはファンとして辛い……まあ、本作のボスである龍骨鬼が復活する周期、千年と比べたら、たいした年月ではないのだけど!
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https://getnews.jp/archives/3013559[リンク]
文/田中一広
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