考え方・構成の仕組みがわかる! 志望理由書の書き方レッスン!(事例つき)

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考え方・構成の仕組みがわかる! 志望理由書の書き方レッスン!(事例つき)
大学の総合型選抜(旧:AO入試)、や学校推薦型選抜(旧:推薦入試)の出願時に必須の志望理由書。

実際に志望理由書を書いてみたものの、これで良いのか、自分で判断するのは難しいよね。

そこで今回は、高校2年生のゆらさんに実際に志望理由書を書いてもらって、志望理由はこれでいいのか、どこをどう直せばいいのか、スタディサプリ大学受験講座で総合型選抜・小論文・探究の講師を務める神﨑史彦先生にアドバイスをいただいた。

この記事を読み終わったころには、自分ならどんな方向性で志望理由書を書くべきか、考えられるようになっているだろう。

今回教えてくれたのは
神﨑史彦先生

神崎史彦先生
株式会社カンザキメソッド代表取締役。
スタディサプリ講師。私立学校研究家。高大接続・教育コンサルタント。
大学卒業後、大学受験予備校において小論文講師として活動する一方、通信教育会社や教科書会社にて小論文・志望理由書・自己アピール文の模擬試験作成および評価基準策定を担当。
のべ6万人以上の受験生と向き合うなかで得た経験や知見をもとに、小論文・志望理由・自己アピール・面接の指導法「カンザキメソッド」を開発する。
現在までに刊行した参考書は26冊(改訂版含む)、販売部数は延べ25万冊、指導した学生は10万人以上にのぼる。
今回、志望理由書を書いてくれたのは
考え方・構成の仕組みがわかる! 志望理由書の書き方レッスン!(事例つき)
ゆら
高校2年生(東京都)
【趣味・特技】ギター・人見知りせずに明るく話すこと

志望理由書には何を書けばいいの?

大学の総合型選抜・学校推薦型選抜では、志望理由書や自己アピール文の重要性が増しつつある。

志望理由書に書く内容としては、大きく分けて2つ。

①なぜその大学を選んだのか

②なぜその学部・学科を選んだのか
しかし、ただ選択理由を書いただけでは評価されないことが多い。

では、志望理由書にどんなことを書けばいいのか?

まず、情報コミュニケーション系の学部を志望する高校2年生ゆらさんに、自分なりに調べて志望理由書を書いてもらった。

★ゆらさんが初めて書いた志望理由書★

私は貴学●●学部●●学科への入学を志望します。

私は大学卒業後の進路として、マスコミ関係の仕事に就きたいと考えており、テレビ局への就職を希望しています。テレビは災害の際の情報伝達からファッション、スイーツの流行などまでをテレビを見ている多くの方に届けることのできるものです。

私たちの生活において大きな情報源の1つであるテレビを、より良くするために興味をもってもらう為の方法や、いかにわかりやすく伝えるかを考える「番組制作」に携わり、毎日新しい情報を取り入れるためのテレビをもっと活性化させたいと考えているからです。

高校では、希望者制のゼミの中で、科学未来館を訪れて知った未来のことや修学旅行で訪れる地域の問題点についてプレゼンテーションを行いました。

これを活かし貴学では、1年次での基礎ゼミナールの授業でディスカッションやプレゼンテーションを中心とする実践的に学ぶことを通じて更に人に伝える力を養い、多くの人と共に新たな番組制作を行う際のための「自分の考えを表現する力」をより一層高めていきたいです。

また、貴学の●●学部は、他学部に比べ必修科目が少ないことにより、自分の学びたい分野を自分で選択することができることに魅力を感じました。「メディア・リテラシー」の講義では、私たちの生活に必要不可欠となっているメディアについての発達や伝達手段の変化について改めて考え、メディアが社会へどのように変化をもたらすかを構想したいと考えています。

他にも、情報を伝達する立ち位置を目指すことより、現代の社会で重要視されているジェンダーや犯罪について詳しく学びたいと考えています。

そのため貴学の「ジェンダー論」「犯罪と法I・II」を受講し、ジェンダーレス問題について深く考えるきっかけや、身近な犯罪について知ることに活かしていきたいと考えています。

このような理由から、私は●●学部を志望します。進学後は、目標実現のため精一杯励むつもりです。

大学はこんな学生を求めている

ゆらさんの志望理由書は、一見、しっかり書かれているように見えるが、まずは大学側がどのような学生を採りたいと考えているかを知ることが必要だと神﨑先生は居言う。

そもそも教育基本法という法律の第七条では、大学の意義について、「大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」と記されている。

「高い教養と専門的能力」とは「知識・技能」のこと。「深く真理を探究」するためには「思考力・判断力・表現力」が求められる。「新たな知見を創造」できるよう、「学びに向かう力や人間性」が必要となってくる。

shibou02『プレゼンテーション・グループディスカッションのルールブック』(KADOKAWA)

※参考資料:『プレゼンテーション・グループディスカッションのルールブック』(KADOKAWA)より

つまり、大学側は、これらの能力を身につけ、その「成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与する」ことができる学生に入学してほしいと考えている。

「知識・技能」は調査書やマークシート方式の試験、「思考力・判断力・表現力」は記述式試験や小論文で判断できるが、「学びに向かう力や人間性」は志望理由書や面接でないとわからない。

志望理由書では、「学びに向かう力や人間性」を兼ね備えて、「新たな知見を創造」し、それを「社会の発展に寄与」できる人材かどうかが審査されるといえる。

これをふまえて読むだけでも、ゆらさんの志望理由書のNG箇所が見えてくる。

志望理由書では「大学で何を研究したいのか?」を明確に!

★神崎先生からのアドバイス!
「志望理由書には自分の思いを書けばいい、と考えている人が多いのではないでしょうか。しかし、大学は研究機関です。

この学生はどういう研究をしたいのか、何を学ぶ意志があるのか、志望理由書で確かめたいのは、研究テーマとプロジェクトなのです。

どんな問題や課題をもっていて、どんな風に、それを学問の力で解決したいのか。大学で何を学びたいかという研究テーマが明確で、どう学ぶかという計画(プロジェクト)をもち、確固たる意志をもっているかどうかが問われるのです。

ゆらさんの志望理由書では、将来テレビ局に就職したいという思いは伝わりますが、肝心な研究テーマが見えてきません。

さらに、『●●の授業を受けたい』といった受け身な回答はNG。なぜその分野に興味をもったのか、なぜ学びたいのか、理由を明確に書く必要があります」
と神﨑先生。

実際にゆらさんの話を聞きながら、まずは研究テーマについて一緒に考えてもらった。

★神崎先生とゆらさんとの会話

「なぜテレビ局に就職したいの? どんな番組を制作したいの?」(神﨑先生)
「テレビなら口コミを拾い上げて拡散し、幅広い年代の人たちに情報発信ができるからです。新しいことを発信するバラエティー番組をつくりたいと考えています」(ゆらさん)
「『毎日新しい情報を取り入れるためのテレビをもっと活性化させたい』と書いているけど、なぜ活性化させたいの?」(神﨑先生)
「修学旅行で岡山県の吹屋という過疎地域を訪れ、地方で埋もれている希少価値のある商品の魅力をメディアの力で広めたいと思ったのがきっかけです」(ゆらさん)
「なぜテレビなの? SNSやWEBメディアではダメなの? さまざまな角度から情報発信する方法を考えてみた?」(神﨑先生)
「年配の方がインターネットを利用されないし、SNSなどは自分からアクセスしないと見られないけれど、テレビは何気なく見ていることが多いので、受け身の姿勢の方にも幅広く伝えられると思いました」(ゆらさん)

さらに、修学旅行での体験談、岡山県の吹屋を世の中に広めたいと思うようになった経緯、そのために何をしてきたかなど、ゆらさんの考えを引き出してもらって志望理由を深く掘り下げていくなかで、神﨑先生から、岡山県の吹屋の魅力をどうやったら伝えられるのか、「地域ブランド戦略」を研究テーマにしてはどうかというアドバイスをもらった。

考え方・構成の仕組みがわかる! 志望理由書の書き方レッスン!

※志望理由書を書く上で受け身の姿勢はNG!

★ゆらさんの気づき!

「大学に入ってやりたいことを多めに書いたつもりでしたが、大学の学びと自分のやりたいことをリンクさせないといけないことがわかりました。大学で学べる最大限のことを書いたことが、浅く広くになってしまっている。テレビ局に就職するために、いかに自分がテレビを好きか語るのかと考えていたけれど、志望理由書で語らなければいけないのは研究テーマ

修学旅行で経験したことが自分の研究テーマとして活きてくるのだと気づき、新しい発見がありました。

ひとつのことを深く研究したいと焦点をしぼるべきだと知り、テレビで情報発信するために『地域ブランド戦略の課題と解決方法』を研究テーマに決めました」(ゆらさん)
★神﨑先生のアドバイスを受けて書き直した志望理由書

私は貴学●●学部●●学科への入学を志望します。

私は大学卒業後の進路として、マスコミ関係の仕事に就きたいと考えています。

高校でのゼミ活動の一環として、修学旅行で岡山県吹屋という過疎地域について事前に調べ、学年の生徒と地域活性化のための改善策として商品開発を行いました。

現地の唐辛子育成プロジェクトにかけて唐辛子にまつわる商品を3つ作成し、現地の方の前でプレゼンテーションを行いました。
当日は、現地の方からどの商品も試作品を作ってみたいとの感想を頂いたので、商品名や販売場所まで考え尽くした商品に前向きな評価をいただけた事にすごく達成感を感じました。

しかし、蒜山という地域を訪れたグループではひるぜん焼きそばを学校でも販売することで名前を広めていきたいという旨のプレゼンテーションを行いましたが、食材や味付けに特徴のある料理であり、徹底した再現が必要な為、簡単に学校での販売は行えないとの意見をいただきました。

地域活性化をしたいという同じ思いから始まったプレゼンテーションでしたが、受け取る側によってこんなにも反応に違いが出ること、それぞれの地域には現地であるからこそわかるブランドがあるのだということを学ぶことができました。

この経験を経て、私はメディアを通じて、まだ知名度の少ない地域の魅力を多くの人に発信していきたいと考えると同時に、地域に合った魅力の伝え方を現地の人の声に合わせて考えていく必要性を感じました。

ただSNSや番組で紹介するだけでなく、地域のブランドを守りながらできる発信方法をみつけることで、他の地域の方々が自分たちも魅力を伝えたいと思うきっかけ作りにもつながると考えます。

地域に寄り添い、場所に合わせた発信方法で魅力を広げていくことで、少しずつ他の地域が動き始めたくなる契機になり、社会全体に変化をもたらす出来事になると思っています。

そのためにも、メディアの仕組みや、地方の希少価値性を活かす方法について学び、土地によって違う魅力を伝えるために何をすべきか研究していきたいです。

このような理由から、私は●●学部を志望します。進学後は、目標実現のため精一杯励むつもりです。

さらに「自分が研究したいことを大学でどう学ぶか?」が重要!

考え方・構成の仕組みがわかる! 志望理由書の書き方レッスン!

※さらに深く調べて研究テーマへの意欲を示そう!

★神崎先生からのアドバイス!
「ゆらさんが書き直した志望理由書では、『マスコミ関係の仕事に就きたい』と希望する職業について述べつつ、『地域にある希少価値を見つけ、発信する方法(を研究したい)』という研究テーマと意欲を示そうとしていますね。

ご自身が高校で経験した地域活性化の取り組みをもとに、地域の特性の違いに気づき、その発信方法について検討の余地があることを見出そうとしている姿勢が伝わります。

その上で、さらなる飛躍のために、どういうことをするとよいのかを整理してみましょう」

ゆらさんが最初に書いた志望理由書から進歩はみられるものの、さらなるブラッシュアップが必要だという神﨑先生に、大学での研究テーマとプロジェクトがより伝わりやすい志望理由書を書くためのポイントを解説してもらった。

▼志望理由書をさらにパワーアップするためのポイント1:研究テーマ(リサーチクエスチョン)を洗練させよう

修学旅行の話が全体の半分以上を占めています。この経験をきっかけとしてていねいに説明していますが、きっかけは延々と書きやすく、肝心な「大学でどういう研究をしたいのか」「入学後にどういう研究・履修をしたいのか」が薄くなりがちです。

修学旅行の経験から、地域の魅力を発信するにあたって、発信者により差が生じているという課題を見いだしているようですから、なぜそういう差が生じるのかを調査してみることから始めてみましょう。

自治体や団体によって、その方法やその手段が異なり、その発信の効果を測定しているケースもあるのではないでしょうか。

インターネットで関連しそうな論文を検索して、研究者の間でどういうことが解き明かせていないのかを探ってみると、研究テーマが見つかるのではないかと思います。

▼志望理由書をさらにパワーアップするためのポイント2:研究の重要性を語ろう

「なぜメディアを対象にするのか」というところが明確になると良いですね。地域活性化(過疎化をどう解消するか)という問題に対する解決の方針は複数考えられます。

商品開発、商業施設・工場・教育施設などの誘致、地域コミュニティーを作るなど、いろいろ考えられるなかで、ゆらさんは「メディアによる地域の魅力発信」を取り上げたわけです。

であれば、メディアによる発信がいかに地域活性化に効果的なのかということをていねいに説明する必要があると思います。インターネットで「地域活性化 メディア 発信 重要性」というキーワードで検索すると、総務省の資料や論文が数多く見つかります。

その中から、地域をメディアで発信することの意義について語られている箇所を数多くみつけることができるでしょう。

もちろん、地域に出向いて担当者に取材をしたり、研究者と語り合ったりすると、さらに良いでしょう。それらを参考にしながら、なぜこの研究が重要なのかを志望理由書で語ると良いと思います。

▼志望理由書をさらにパワーアップするためのポイント3:研究ができる志望校なのかを再検討しよう

志望校についても再検討する必要がありそうです。①②の内容をもとに、ゆらさんの志望校で研究できるかどうかを探ってみると、現状では、こうした研究の支援をしてくださりそうな研究者の先生がいないようです。

こうした場合、この研究ができそうなほかの大学・学部・学科を探るか、研究テーマを変えずに「この先生の下であれば、こういう研究の筋が考えられそう」と改めて研究計画を見直すか、という判断が必要になります。

ただし後者の場合、「指定校推薦の枠があるから大学・学部・学科を変えたくない」「この大学にあこがれがあるから、絶対にこの大学でないとダメ」という理由で、大学・学部・学科・研究者に寄せて志望理由を語り、いつの間にか自分の意思が消え去ってしまうことがないよう気をつけてほしいと思います。

志望理由書は大学で自分がやりたいプロジェクトを伝える

志望理由書で書くべきことはこの2つ!

考え方・構成の仕組みがわかる! 志望理由書の書き方レッスン!

※研究テーマに合わせて志望校も考えよう!

志望理由書で書くべき内容は2つ。

①学部・学科の選択理由
私はこういう研究テーマをもち、こういうプロジェクトを学部・学科で実行したい。
このプロジェクトには、こういう「知」を生み出すという意義がある(だから、学部・学科でこういうプロジェクトを行いたい)。

②大学の選択理由
このプロジェクトを実行するためには、こういう学問の修得や教育、環境や支援者が必要だ。
志望校では、このプロジェクトがこう実行できる(だから志望した)。

志望理由書を書くためのプロセスとは

そのためのプロセスとして

①大学での研究テーマを決める
自分の将来の希望、興味あることなどから、大学で何を学びたいのか、どんな研究をしたいのか、軸になる研究テーマを決めよう。
国立情報学研究所のホームページCiNiiで検索すると、研究テーマに関連すする論文が見つかる。その領域の最先端の論文を読むことで、ここまでわかっているけど、その先がわからないから研究したい、と研究テーマのヒントになる。

②その研究の重要性、どうやって社会貢献できるかを考える
書籍や論文を読んだり、研究テーマに関係する人と対話をする。
SNS上の会話でもいいので、自分と違う世界の人、いろいろなメディアの人と話をすることが大事。
オープンキャンパスで大学の先生の話を聞いてもいい。

③研究計画(履修の流れ)を考える
大学でどんな授業を選択したり、何を学んで、この研究を進めていくのかをシミュレーションする。
大学のホームページやパンフレットに記載されているシラバスで授業内容を調べ、こういうことを学んだり、この研究室に入ったら、研究テーマの答えが出せそうかを考えて、志望校とマッチングする。
志望校の先生がどんな研究をしているのか、CiNiiで検索して論文を読んでみるといい。

④活動報告書にも書ける実績作り
自分の研究テーマに対して、調べて終わるだけでなく、実際に活動して、その内容を志望理由書に書くことができたら、さらにアピールできる。大学の先生や研究テーマにかかわる人に会って話を聞いたり、コンテストに出品するなど、活動実績を作れば、志望理由書とともに活動報告書を提出することができる。
志望理由書は、この大学・学部・学科で、何をどう学びたいのか、その熱量を理論的に詳しく伝えることが大切。

まずは、自分の研究テーマを探求することから始めてみよう。

監修/神﨑史彦 文/やまだ みちこ 構成/黒川 安弥

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