藤岡みなみ|畑から生まれるコミュニケーション【思い立ったがDIY吉日】vol.63
タレントの藤岡みなみさんが、モノづくりに対してのあれこれをつづるコラム連載!題字ももちろん本人。可愛くも愉快な世界観には、思わず引き込まれちゃいます。今回はジャンボピーマンについて!
藤岡みなみ
タレント、エッセイスト。タイムトラベル専門書店 utouto店主。縄文時代と四川料理が好き。やってみたがり。
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畑から生まれるコミュニケーション
2021年のMVP野菜はジャンボピーマン。
生まれて初めて「売りたい」と思った野菜は、ジャンボピーマンだった。2021年の春から畑を始め、30種類以上の植物を育ててみた。大きなスイカも下半身のような形の大根も育てていてかなり楽しかったけれど、一番の自信作といったらジャンボピーマンだ。種をまいて苗を作るところから始めたのに、15cm以上の大きな実が7月から12月までごろごろ採れて食べきれないほどだった。しかも苦味がほとんどない品種で、ピーマンが苦手な人でも絶対においしいと言ってくれる。調子に乗ってピーマン農家になりたくなった。
ゴールデンウィークに、小さいポットに種をまいた。すくすく育ってきたところで大きめのポットに入れ替える。そのポットも窮屈そうになった頃、畑に植えてみた。想像以上に発芽率が高く、10本の苗を育てていくことになった。
一般的なピーマンと並べてみたところ。
さすがにこれ以上は手に余ると思ったので友人にも苗を送る。すると今度は友人からお礼に手作りの堆肥をもらえることになった。家庭で出た生ゴミをコンポストに入れて熟成させた肥料で、それにわざわざ1000円くらいの送料をかけて送ってくれたのだ。1000円あったら肥料も買えるのに、ちゃんと分解されているとはいえ自分の出した生ゴミ由来のものを送ってくれたことが少し面白かった。でも、そういうことじゃないんだ。効率とか損得とかとは全く別のよさがある。さっそくピーマンの苗の根元に堆肥を与えた。彼女の暮らしと私の暮らしと植物と地球とがいい感じに交わりあった気がする。他の友人にも苗を送ったら、成長の様子をちょくちょく知らせてくれてうれしかった。仕事や恋愛や人生の話よりも、植物の話の方が楽しいってこともあるな、と思う。
ジャンボピーマン、それは愛
逆さまのどんぐりだった頃。
7月に最初のピーマンが実った。どんぐりみたいな小さい実が上向きについている。こんな小さなピーマンが本当にジャンボになるのか不安だった。3日後、どんぐりだったピーマンはししとうの形になっていた。細長い実はどう考えてもししとうにしか見えず、間違ってししとうを植えちゃったのかなと焦る。そそっかしい私にとって、そのくらいのミスは日常茶飯事である。その後2週間ほどかけゆっくり横に太っていき、ちょっと目を離すともう15cm大になっていた。よかった、ししとうじゃなかった。
普通、ピーマンの肉詰めといえば縦半分に切ったものに肉を詰めるけれど、ジャンボピーマンでそれをやったらすぐにおなかいっぱいになってしまう。ジャンボピーマンの肉詰めは、輪切りが正解だ。家族5人分の肉詰めピーマンを作るのに、必要なジャンボピーマンはたったの2個だった。実が肉厚で甘くて人気なので、たくさん作ってもすぐになくなる。
大きいし柔らかいから顔にしやすい。
ジャンボ野菜の持つパワーはすごい。成長する姿が常にエネルギッシュだし、こんな立派なものを育てられたのだと自分を褒めたくなる。誰に見せても「わあ、大きい!」と驚いてもらえた。ハロウィンにはかぼちゃのかわりにピーマンで飾りを作った。ジャンボピーマンの中には喜びと驚きがたっぷり詰まっている。
おなかいーっぱいになる肉詰め。
本当に出来がいいので、これ、売れるんじゃない?と思った。例えば1個100円で売ったとして、1ヵ月で何個売ればしっかりした収入になるだろう、と計算してみる。するとすぐに、30万円を得るのに3000個必要だとわかった。いや、無茶だ。実際には土地代、人件費、その他諸々の経費がかかる。利益なんて出るのだろうか。そりゃそうよ。いやあ、改めて農家さんってすさまじいな。ジャンボピーマンの皮算用は夢と消えた。今後も私の、私による、私のためのジャンボピーマンを育てていきたい。
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