次の半グレのシノギは総会屋?! 原点回帰し暗躍する企業恐喝が激増中!

どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。

最近、敬愛する高杉良先生原作、原田眞人監督、役所広司さん主演の『金融腐蝕列島 呪縛』(1999年)という映画を観直しました。原田監督らしい緊迫感とスピード感あふれる映画で、日本映画とは一線を画したハリウッド的な手法を十二分に発揮している作品です。

今回、観直すことで新たな発見もあり、総会屋について改めて調べてみようと思いました。まずは作品の概要から説明させてください。

本作では、日本の銀行や証券会社などの金融不正の内情を描きます。バブル崩壊の1990年代後半~2000年代での総会屋への利益供与、不正融資、日銀・大蔵省の汚職を舞台に、メガバンクの再編、荒れる株主総会などを克明に描写していきます。

日比谷公園を取り囲むように実在する丸野証券(※モデルは野村証券などの4大証券)との商法違反事件を起こした朝日中央銀行(ACB※モデルは第一勧業銀行本店)、東京地方検察庁、大蔵省、記者会見が行われる日本記者クラブプレスセンタービル、密談の舞台になる帝国ホテル。その日比谷公園をそれぞれの重要な登場人物が行き交うようにストーリーが進行するわけですね。様々な不良債権の回収に乗り出したACBのミドルたちは右翼や暴力団から標的にされ、仲間や家族まで狙われて、サラリーマンとは無縁の闇社会との闘いを強いられます。

主演・北野役に役所広司さん、ACBの暴君・佐々木相談役に仲代達矢さん。さらにACB側の大蔵省担当・椎名桔平さん、矢島健一さん、中村育二さんなど錚々たる名優揃い。また、東京地検特捜部の遠藤憲一さん、風吹ジュンさん、ブルームバーグニュースアンカーの若村麻由美さん、調査委員会弁護士のもたいまさこさん、新経営陣の根津甚八さん、石橋蓮司さん、元会長で自らの命を絶つ佐藤慶さん、秘書の黒木瞳さん、総会屋側のフィクサーに丹波哲郎さん、若松武史さんらが出演。

皆さん、重厚な演技で素晴らしいのひと言です。

前置きがついつい長くなってしまいましたが、今回はこの映画に触発されたことで「よくよく調べてみれば、まだ総会屋は生き残っている」という真実を綴っていこうと思っています。話を聞いたのは、以前《総会屋》系の機関誌で筆をとっていたライターのS氏(52歳)。彼に話を聞くことにしました。

2度の商法改正以降のご時世に総会屋?

検察庁からの徹底的な圧力と企業と裏社会との癒着や病巣の切り取りなどを行った2度の商法改正で、総会屋には解散命令が出ました。しかし、大企業や銀行などからは撤退をしましたが、《総会屋》としての生業はいまだに残っていることをご存知でしょうか?

ヤクザが大手を振って活動できなくなった今、≪総会屋≫としての商売に最も注目しているのが半グレたちです。彼らは一体どのようにして大金をせしめているのか。そこにダークサイドで生きる人間たちの多種多様なテクニックというものがありました。

過去に栄華を極めた《総会屋》。半グレたちがその世界に入ったことで総会屋のカタチは180度変わりました。彼らは組織に属していないというフレコミなので、機関紙を売り込んだりするまでに情報収集を怠らないそうです。そこに手を貸しているのが、H氏だというのです。

未だに現存する機関紙

丸野(以下、丸)「どのような感じで、このご時世で総会屋を運営されているのでしょうか?」

H氏「そうですね。やはり、一部上場企業や銀行は警察がうるさい。狙うのは、上場していない中小企業ですね。その企業の経営者や会計責任者にいろいろと仕掛けを作っては、ウチが発行している機関紙の購読やレンタルでは社長室に飾る絵、観葉植物なんかを勧めます

丸「でも、そうそう簡単に置かせてはくれないでしょう?」

H氏「いやいや、商法改正前から総会屋に従事していた元ヤクザたちが今では半グレに鞍替えして、総会屋を営んでいるんですよ。そりゃ年齢層としては、50代から60代まで、昔取った杵柄と睨みはまだまだまだ衰えを知りませんから……。実際に女や金で脅されて、企業体から機関紙代をねん出しているところもありますよ。しかも、相当数ね」

丸「本当ですか」

H氏「2度の商法改正では、我々総会屋はとてつもないダメージを受けました。なにせ、総会屋と蜜月になっているとわかれば、企業も法的に罰せられるわけですから……。企業側は総会屋との付き合いをやめて、協賛金が集まらないようになってしまったわけですからね。絶滅寸前にはなりましたが、こちらもタダで倒れるわけにはいかない

丸「といいますと……」

交渉事は情報戦略から……

H氏「淘汰されるものは消え、知恵者だけが生き残ったわけですね。私たちのようなものが組織内にひとりいると、シノギにくい総会屋の世界の生き抜く方法がわかります。紙媒体もやってはいますが、今尽力しているのは、Web系の機関誌ですね

丸「ネット系の機関誌ですか?」

H氏「交渉というのは、情報を操れば、なんとでも勝てるわけですよ

丸「はぁ」

H氏「中小企業の社長というのは、苦労人が多いし、すぐにハメを外してしまう。総会屋になった半グレたちは身なりを整えて、経営者が酒を交わす懇親会やクラブで名刺交換、ゴルフ場で声をかけて“握る(=金をかける)”なんてことをして、距離を詰めます

丸「それからは?」

H氏「そして、親しくなって住んでいるところや家族構成を洗うということを聞くという算段です」

本人だけの情報ではなく、周囲の情報から詰めていく

丸「恐ろしいですね」

H氏「“先日は大変ごちそうになりました、ぜひご馳走させてください、社長”と電話を入れ、自分たちが経営しているキャバクラに連れ出します。そのまま酔わせて女とホテルで寝ているところの写真を撮ったりね。“たまには女なんてどうですか?”と経営する風俗店で、女の子から本番行為を持ちかけて、ことが終われば全裸のターゲットのところに乗り込んだりね。恐喝の仕方はいろいろとあるんですよ

丸「古典的といいますか、映画でいえば伊丹十三の『ミンボーの女』、北野武の『アウトレイジ』を地で行くようなやり方で相手を脅すわけですね」

H氏「それからは、“社長さんの愛人の自宅って、〇〇区の〇〇6丁目ですよね”なんて揺さぶりをかけます。免許証を確認すればわかりますが、逆にそれはやらない。初期費用をそれなりにかけて、相手の痛いところを突くわけです。例えば<奥さんの勤務先><子供の大学>とかね。すると、だいたい電話をかけた相手の喉が緊張してゴクリと鳴りますよ。私たちと結託している安価な興信所であれば、会社から出てきた社長を尾行して、住所を確認することはできますから……」

丸「はぁ~」

H氏「最低住所はちゃんと知っておかないと……。“相手が知るはずない情報を制すること”。それで、相手を意のままに操れるわけです。もちろん、株の一部も手に入れて株主総会のときに物申せるようにはしておきます、一般株主としてね」

訪問者の多いネット機関誌で企業イメージを失墜させる

丸「もし、機関紙定期購入や観葉植物などのレンタルに従わない場合は?」

H氏「そこで、私たちの出番です。とにかく企業の評判が悪くなるように書き連ねる。まずはWeb媒体から、そして辛辣なタイトルや文言をちりばめて、紙面に起こします。これを主に行うのは、ネットに長けた半グレたちです。グーグル検索で評判の悪い企業情報を載せて情報拡散したり、同じような企業への見せしめに“おまえのところもこうなるぞ”と恫喝のつもりで機関誌を配布。ネットというのは、どうしても就職希望者が検索をして情報を取るわけです。すると、よからぬ会社だという噂がネット上に出現してくるわけですね

丸「一番簡単な総会屋のスタイルの嫌がらせとしては、“ステマでの情報拡散”ということですか。Web検索をすれば、他の企業も“この企業との取引はやめておこう”、就職者は“この企業に就職先に選ぶのはやめておこう”とダブルパンチになるわけですね

H氏「そこで、突然社長に電話をかけて“毎月50万円支払えば、おかしな投稿は消去しますよ”“提灯記事を書いて企業イメージをUP”しますと伝えるわけです。それでも支払わなかった場合は、写真はバラまかれ、一家離散。もちろん、口コミサイトにはボロカスに悪評を書かれます。株主総会にも粛々と圧力をかけていきます

最後にH氏は「自分たちの商いっていうのは情報戦だけです。情報を制する者が当然勝つわけですよ」とコーヒーを啜りながら高笑いしていました。このような闇社会の住人を相手にしてしまえば、一巻の終わりだということがわかっていただけたと思います。

どのアイデアも、数年前に総会屋の機関誌を書いていたライターH氏が作り上げたもの。瀕死状態だった総会屋の一部はこのような手口で息を吹き返しています。触らぬ神に祟りなし……中小企業の企業主の方、経営が今、順風満帆だからといってハメを外してはいけません。

(C)写真AC

(執筆者: 丸野裕行)

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