意外に知らない?写真で見る「印刷の歴史」
普段、私たちが何気なく読んでいる本には、小説やビジネス書、地図や写真集などさまざまなものがあります。しかし、どんなジャンルにせよその本質は「情報の伝達」にあるといえます。
「情報の伝達」としての本は、現在は印刷によって大量生産が可能になっていますが、そこに至るまでには長い道のりがありました。
今回は、東京・文京区の「印刷博物館」にお邪魔して、その歴史を見学してきました。こちらの博物館では、「印刷」をコミュニケーション・メディアの一つとして捉え、人類の発展にどのように貢献してきたのかを、さまざまな印刷物を通して紹介しています。
◇ ◇ ◇
太古の昔。コミュニケーションの始まりは、口伝によるものであったと考えられています。その他、モノを媒介にしたコミュニケーションとして、石に絵や文字を刻んで情報を伝える方法も生まれました。
古代インカ帝国で使われていたキープという縄文字。結び目の数に意味やメッセージがあるそうです。コミュニケーションといっても、図や文字を記述するばかりではなかったのですね。
紙の本のように見えますが、これは紙ではなく羊皮紙(動物の皮を加工したもの)を使った写本。写本は、手書きのため大量部数つくることが難しい産業形態でした。
また、羊皮紙は当時貴重なものだったそうで、高価で量産で気軽に使える材料ではなかったとか。
これは百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)と呼ばれる、奈良時代に印刷された経文です。印刷された年代が明確なものとして世界最古の印刷物です。
この百万塔陀羅尼の中には文字面にまたがって断裁されたものがいくつか発見されており、大きな版に複数の経文を面付けし、写真にあるような細長い形に断裁したのではないかと考えられています。
お経を繰り返し唱えることでわかるように、仏教は数をたくさん作ることに価値を置いていたため、経文や仏様の図像を短時間で大量につくる方法として印刷は使われていきました。
江戸時代になると錦絵と呼ばれる色鮮やかなカラー印刷も可能になりました。
役者絵など需要がたくさんあるものに関してはこの方法で大量生産していたようです。
ルネッサンス期のヨーロッパで大きく発展したのが活版印刷です。
活版印刷とは、「活字」と呼ばれる金属や木製の字型を並べ替えて組版を行い、印刷する技術。一頁を一つの版に彫った整版印刷と違い、一文字一文字が独立しているため、文字を詰めたり、次のページに飛んだりということが頻繁に起こる本の印刷に適していたのだそうです。
この技術を大成させたドイツの職人・グーテンベルクの名前は聞いたことがある人が多いのでは?
こちらは活版印刷でつくられた書物(『徒然草』)。
草書体で書かれた手書きの文字に見えますが、木の活字を使っています。
時を経るごとに印刷の技術は進歩して、大量生産が可能になります。
そして、産業革命を経て、あらゆるモノを大量生産することが可能になり、新しい考え方が生まれます。
それが「広告」。
印刷物やポスターなども大量につくれるようになり、情報を伝える目的に「消費を促す」役割が加わりました。
写真の商品パッケージはDTP導入以前のものですが、見た目的には現代の商品パッケージとほとんど違いがありませんね。
今回写真で紹介した展示物は、すべて「印刷博物館」のプロローグ展示ゾーンのもの。
奥に進むとさらにたくさんの貴重な展示物を目にすることができ(じっくり見ると8時間以上かかるそう!)、印刷の歴史を肌で感じることができます。
デートで、あるいは休日の息抜きに、一度訪れてみてはいかがでしょうか。(写真入りの記事はこちら→http://www.sinkan.jp/news/index_3449.html)
■印刷博物館
所在地:〒112-8531 東京都文京区水道1丁目3番3号 トッパン小石川ビル
開館時間:10時〜18時(入場は17時30分まで)
休館日:毎週月曜日(ただし祝日の場合は翌日)
入場料:一般:300円(250円)/学生:200円(150円)/中高生:100円(50円)/小学生以下無料
( )内は20名以上の団体料金
(新刊JP編集部)
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ウェブサイト: http://www.sinkan.jp/
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