ある死刑囚の告白からはじまる衝撃のノンフィクション――史上最悪の凶悪事件を描いた映画『凶悪』
一人の雑誌ジャーナリストが、警察も知らない事件を死刑囚の告発を頼りに明るみに出し、首謀者逮捕に至らせたという実在の凶悪殺人事件を題材とした映画『凶悪』。山田孝之さん、ピエール瀧さん、リリー・フランキーさんが共演する話題の今年最大の衝撃作です。
『凶悪』はある死刑囚の、
「自分は死刑判決を受けた事件の他に、誰にも話していない3つの殺人に関わっています。そのすべての首謀者は、自分が先生と呼んでいた男です。そいつが娑婆でのうのうと生きているのが許せない、この話を記事にしてもらい、先生を追いつめたい」
という突然の告白を元に、ひとりの雑誌記者が警察も知らなかった凶悪事件を暴いたノンフィクションの映画化。
日本中を震撼させたこの一連の物語をドキュメントとした原作、新潮 45 編集部編『凶悪 -ある死刑囚の告発-』(新潮文庫刊)は2009年に文庫化されベストセラーに。
本作のメガホンを取るのは、反体制的視点から日本社会にメスを入れ続けた唯一無二の映画監督、若松孝二に師事した若松プロダクション出身の映画監督、白石和彌監督。実在の凶悪殺人事件の真相を描くとともに、内在する日本の社会問題をもあぶり出します。
事件を追うジャーナリストに山田孝之さん、告発する死刑囚にピエール滝さん、狡猾な殺人犯にリリー・フランキーさんという異色なキャスティングも注目度大。今回解禁となったポスターには3人の顔がそれぞれ映し出され、これまでの日本映画には無かったシリアスで骨太な雰囲気に期待が高まります。
それぞれのキャストからのコメントは以下の通り。映画『凶悪』は9/21(土)新宿ピカデリーほか全国公開です。
【山田孝之 コメント】
脚本を読ませていただいたときに、是非この作品に参加したいと思いました。タイトルの通り「凶悪」な内容ですが、雑誌記者である藤井が、須藤と木村の狂気、事件の異常さに触れて変わっていくところに面白さを感じました。正義とはあくまで自分の中だけにあるもので、それは時として他人にとっては悪とも成りうるものだと思います。
藤井が持つ正義心は木村への強い憎しみへ変わり、いつしか狂気の方向へ暴走してしまう。その感情の変化がこの映画では何よりも重要と感じていたので、実話ということを深く意識せず、脚本に書かれた藤井の人物像を理解し、表現することに注力しました。
人間誰しもが持つ二面性を、リアリティをもって伝えることが出来ればと思っています。また、この作品には無視することのできない要素がたくさん含まれていると思っています。エンターテイメントとしてだけで終わることなく、観た方それぞれが、今自分が置かれている環境や社会について考えるきっかけとなれば嬉しく思います。
【ピエール瀧 コメント】
人殺しで死刑囚の役と聞き、「須藤という人物と同じ気持ちになることはできない」と正直に思いました。ですが、監督から強い覚悟と決意を感じたので、この作品に参加させていただきたいと思いました。この事件について、お話しをいただくまでは知りませんでしたが、原作本の印象はリアリティがあり過ぎて、とてもネガティブな気持ちになったのを覚えています。
暴力シーンを初めて演じた時は嫌な気持ちでしたが、お芝居を重ねるうちに徐々にその気持ちが薄れていく感覚がありました。それが、暴力が持つ魔力であり、暴力の本質なのではないかと思います。今回、「凶悪」なお芝居で競演したリリー・フランキーさんは日頃から親交がありますが、ここまでしっかりと二人でお芝居をしたことは初めてなのでとても新鮮でした。
【リリー・フランキー コメント】
木村役を演じることにひどく消耗しました。木村という人物を「殺人を犯すことを何とも思わず、お金がなくなることへ恐怖を感じている人物」と理解していましたが、この役を演じることは本当に疲れました。そんな木村や須藤は常軌を逸した人物だけれども、どこか普通の人間らしい一面も時にはあり、また藤井は正義なのか偏執狂なのかわからない。
それぞれの二面性が描かれて魅力的な脚本でした。原作も脚本の後に読ませていただきましたが、「こんなにも悲惨な事件が日常に行われていたのか」という驚きとともに、色々と考えさせられる部分がありました。木村は目的のために一見冗談っぽく殺人を起こしていきますが、監督の演出が素晴らしく、妙なリアリティがそこにはありました。またリアリティという面でいうと、劇中でピエール瀧さん演じる須藤に睨まれた時、役を越えて本当に悲しい気分になりましたが、昔からよく知っている彼との関係が、木村と須藤の関係性にも反映され、芝居によりリアリティを持たせることができたと感じています。
(C)2013「凶悪」製作委員会
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