8月21日に開幕を迎えるイタリア・セリエA。毎年過去イチを更新する面白さを見せてくれるセリエAだが、今年も例年通り、“過去イチ”を更新しそうなニオイがプンプンする。
上位10チーム中8チームが監督交代!
20-21シーズンの上位10チーム中、監督が続投するのは2位ミラン(ピオリ監督)と3位アタランタ(ガスペリーニ監督)のみ。なんと8チームが監督を交代している。
イタリアサッカー界のお家芸と言われる監督交代。それにしても今季は激しかった。11シーズン振りのスクデットを獲得したインテルはコンテ監督からラツィオのシモーネ・インザーギ監督へ。ユヴェントスは新人監督のピルロ監督を解任し、アッレグリ監督が再登板。インザーギ監督が抜けたラツィオはサッリが就任。ナポリはスパレッティ、そしてローマはジョゼ・モウリーニョが収まった。
この監督大シャッフルで、どのようにチームが生まれ変わるか本当に楽しみなシーズンになる。戦術が変わることで各クラブは“めちゃくちゃ強くなる”かもしれないし、“めちゃくちゃ弱くなる”かもしれない。実はスパレッティのナポリがめちゃくちゃ強いかもしれないし、インザーギ・インテルがボロボロなるかもしれない。いや、その可能性は十分にある。
王者インテルが一番ヤバい!?
11年振りのスクデットを獲得したインテルだが、新シーズンの船出は順調ではない。いま、インテルはとにかくお金が無いのだ。
インテルはアメリカの投資会社オークツリー・キャピタル・グループ(OCG)から約300億円の貸し付けを受けている。これをきっちり3年で利子をつけて返済しなければならない。単純に年間110億円の返済(オーナーの蘇寧グループとOCGは以前からのビジネス関係があるため、返済期間などは柔軟に対応してもらえるのではないかと噂されてはいる)ということになり、これは非常に大きなプロジェクトだ。
とにかくお金がないインテルは、今回のマーケットでは主力のアクラフ・ハキミを約90億円で、そして昨季セリエAMVPの超主力でるロメル・ルカクを約150億円で売却。その他主力にも移籍の噂が浮上している。さらに昨季途中からチームの核となったクリスティアン・エリクセンがEURO試合中に心臓発作で倒れ、手術は成功したが今季中の復帰は絶望的。エリクセンの代役になるであろう宿敵ミランから獲得したハカン・チャルハノールがどこまで機能するのかも未知数。
王者インテルは、王者の形を保てないまま21-22シーズンに挑まなければならない。
ライバルチームも順調ではない!
昨季冬の王者となり、最終節までもつれながら2位でフィニッシュしたミランも苦しいスタートになりそうだ。
絶対的守護神だったジャンルイジ・ドンナルンマがパリサンジェルマンへ、中盤の主力だったハカン・チャルハノールがインテルへ移籍。いまや世界で5本の指に入るであろうボランチのフランク・ケシエは、コートジボワール代表オーバーエイジ枠で出場した東京五輪の影響で筋肉系のトラブルを起こし、開幕戦欠場が濃厚。極めつけは昨季出場19試合ながら15ゴール2アシストを記録したズラタン・イブラヒモビッチが6月に受けた手術の回復が遅く開幕戦には間に合わない。
レンタルした選手の買取に成功したり、チェルシーからFWオリビエ・ジルーを獲得したりとメルカートでは積極的に選手を獲得してはいるが、スタートダッシュに躓く可能性は十分にある。
昨季4位のユヴェントスは、積極的に補強を行っておらず、昨季の戦力をベースに戦っていく様子。戦力は十分にいるが、アッレグリ監督となりフォーメーションの変更が予想される。すぐにフィットすれば良いが、イタリアには「温め直したスープは不味い」(出戻りや同じことの焼き直しを揶揄するときに使われる)ということわざもあり、チームを立て直せるのか不安なところ。
毎年のことながら、順位予想がまっっっっったく読めないセリエA。
「今年も」というインテル。「今年は」というミラン。「今年こそ」というユヴェントス、アタランタ。スペシャル・ワンを迎え入れたローマか、プレシーズンでバイエルンに完勝したナポリか。2022年5月まで続く長いシーズンを制するのはどこになるのだろうか。