コロナ終息後もテレワークは定着する見込み。理想の働き方はオフィス・テレワーク併用?
三菱地所では、コロナ禍の環境変化を調べるために、2020年6月以降、東京都に勤務する首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)のオフィスワーカーに定期的に調査をしている。今回は、第三回(2021年6月調査)の結果を公表した。定着しつつあるテレワークについて、オフィスワーカーはどう評価しているのだろうか。【今週の住活トピック】
「第三回就業者アンケート調査」結果を公表/三菱地所
コロナ終息後もオフィスのみは30%、オフィス・テレワーク併用が65%
筆者は住宅事情に詳しいとして、他の媒体から取材を受けることもある。先般は、「コロナ終息後にテレワークはどうなるか」と聞かれた。これまでの各種調査を見る限り、一定層はテレワークを評価しており、続けたいという意向を示している結果が多い。そこで、「頻度は今とは変わるかもしれないが、終息後も何らかの形でテレワークは継続されると見ている」と答えた。
テレワークの継続がうかがえる結果が、三菱地所の調査結果にも見られる。まず、現在のオフィスとテレワークの比率と、現在理想と思う比率を聞いた結果を見よう。
現在のオフィスとテレワークの比率では、「オフィスのみ」33%、「オフィス・テレワーク併用(オフィス50~90%)」33%、「オフィス・テレワーク併用(オフィス10~40%)」26%、「テレワークのみ」8%となっている。東京都に勤務するオフィスワーカーの3人に1人は、勤務日には通勤をしてオフィスに通っていることになるが、大半はオフィスにも行くがテレワークもしており、オフィスに通わずテレワークのみという人も1割近くいるわけだ。
これが、現在の理想の比率を聞くと、「オフィスのみ」の比率だけが19%に下がり、テレワークの比率を今より増やしたいと考えている人が多いことが分かる。
出典:三菱地所「第三回就業者アンケート調査」
では、コロナ終息後はどうなると見ているのだろう。コロナ終息後は、「現在」よりもオフィスで働く比率が高いと見る傾向がうかがえ、「テレワークのみ」や「オフィス・テレワーク併用(オフィス10~40%)」が、現在よりも下がっている。また、「オフィスのみ」も現在より下がるが、「オフィス・テレワーク併用(オフィス50~90%)」が42%に増えるという予想になった。
ただし、コロナ終息後についての「希望」も聞くと、「現在の理想」と同じような比率に変わる。つまり、自分の仕事は、コロナ終息後もオフィスとテレワークの比率が変わりはするものの、テレワークを併用する形が継続すると考えているが、オフィスワーカーそれぞれの希望は、今よりテレワークの比率を増やしたいと思っているということになる。
打ち合わせやディスカッションは、オフィス(対面)の方が生産性は高い?
テレワークは、感染対策として「三密」を避けるために奨励されたのだが、コロナ終息後もテレワークが続くと見ているのは、別の理由があるからだろう。一部の業務の生産性の向上や浮いた通勤時間を有効に使えるなどのメリットを感じる人が多いと考えられる。
一方で、オフィスに集まって勤務するスタイルも無くならないと見る人が多い。今回の調査では、業務の生産性についても聞いている。特に顕著なのが、「社外との打ち合わせ」、「社内ミーティング(共有目的)」、「社内ミーティング(ディスカッション)」、「社内ミーティング(プレゼン)」など、一堂に会して互いの表情やアイコンタクトなどで状況が確認できる会議については、オフィス(対面)での生産性が高いと考える人が多いことが分かる。
出典:三菱地所「第三回就業者アンケート調査」
ほかの個人作業についても、オフィス(対面)のほうが生産性は高いと考える人が多いのは、ちょっと意外な結果だった。となると、テレワークが支持される理由は仕事の効率よりも、それによって生み出された時間の有効活用ができることなのかもしれない。
テレワークの場所は自宅が94%、シェアオフィスを希望する人も
では、テレワークをしている場所はどこだろう。これはやはり、「自宅」という人が94%だった。ただし、「理想」の場所を聞くと、「シェアオフィス」や「カフェ等その他」が増える。
●実態
自宅:94%、シェアオフィス:5%、カフェ等その他:2%
●理想
自宅:72%、シェアオフィス:21%、カフェ等その他:7%
実態と理想が乖離しているのは、「在宅しか認められていないから」(27%)や「シェアオフィスの料金が高く、会社の補助・負担がないから」(28%)などが挙がり、自宅以外の場所で働く環境が整えば、シェアオフィスなどでのテレワークが広がる可能性が感じられる。
また、コロナ禍で注目された新しいライフスタイルについては、半数近くが「興味がない」と回答しており、次いで「興味はあるが、現実には無理で検討に至らない」が多いという結果だった。
出典:三菱地所「第三回就業者アンケート調査」
同社では、「『郊外居住』『地方居住』『二拠点生活』を積極的に検討しているワーカーは10%程度。逆に『都心居住』『自転車通勤』を志向するワーカーも 10%程度あり、単純に都心⇒郊外・地方への人口流出が急速に進むとは言い切れない」と分析している。
コロナ禍が長引くなか、テレワークが普及し、そのメリットとデメリットが分かるようになってきた。コロナ禍で一気に普及したテレワークだが、終息した後でも、オフィス(対面)とテレワークを使い分けて、併用される時代が来るだろう。
コロナ禍で分かったことは、働き方が変わると住宅ニーズも変わることだ。コロナ終息後は、副業の普及などもあってさらに働き方も変わるだろう。それに応じて住宅ニーズも変わるので、注目していきたい。
●参考
「第三回就業者アンケート調査」結果を公表/三菱地所
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