アーティスト 奥天昌樹が個展 気配だけが残る本人不在のポートレート
奥天昌樹さんの個展「A Whiter Shade of Pale」
アーティスト・奥天昌樹さんの個展「A Whiter Shade of Pale」が7月18日(日)まで、東京・銀座のGallery Hayashiで開催されている。
奥天さんは、美術史におけるコンテクストを排除した普遍的な美を探求し、5歳未満の児童が無意識に描いた抽象的な線を取り入れた作品を制作。
本展では新作ペインティングも発表する。
「5歳未満の幼児の落書きに原始的な線を感じた」
「新生児の甥との出会いから始まり、人間としてのアイデンティティを獲得する前の5歳未満の幼児の落書きに原始的な線を感じた」ことから作品制作をはじめた奥天昌樹さん。
作品内の真っさらな線は幼児期だったころの他者の落書きのフォルムであり、マスキングにより画面深部から最前部に表出することで、旧く遥か彼方の洞窟壁画の描き手と筆談するかのように時空を超越しつつ、一つの絵画空間内でそれぞれの存在を繋ぎ合わせている。
幼少期の記憶は、本人が覚えている・覚えていないに関わらず、誰もが経験として本来持っているもの。そういった記憶や感覚に鑑賞者が思いを馳せることができるよう、画面の深部に転写した記憶の手がかりを追憶し対話するように絵の具を重ねていく。
そうして層状に被覆されたマスキングを最後に剥がすことで、これまでの絵の具の階層を貫く白いラインを残してフィニッシュ。この工程の理由を奥天さんは「描画材が生まれる前の線の成り立ちは轍や削られた溝のようなものが最初であり、その理屈で言うと線というのは凹凸になっているのが自然である」と語ってる。
気配だけが焼き付けられたポートレート
真っさらな白線とエフェクトだけが残され何か中心が抜け落ちたような絵画空間は、人物の気配だけが焼き付けられた不在のポートレートのよう。
これは、自身の存在感をあえて作品に残さないことで、画面に描いた他者の痕跡を純度の高い状態で見てもらいたいという姿勢の現れ。作者すら作品のコンテクストに含まれてしまうということを踏まえた上での選択でもある。
一連の制作において奥天さんは自身の存在を作品から消していくアプローチをしていますが、どこか生きた痕跡や気配が漂う。
作者の不在性によって個の存在をより色濃く描写し、絵画空間を通じて対話を実践する作品は、ある種のメタファーとして、マスゲーム化した社会、そして生産され消費される絵画そのものへのアンチテーゼとしても機能している。
美術の原初を彷彿とさせる普遍的な美を感じると同時に、誰しもが持ち合わせる幼少期の記憶を思いを浮かび上がらせる作品との対話。作品と対峙した時に人は何を感じるのか、会場で確かめたい。
引用元
アーティスト 奥天昌樹が個展 気配だけが残る本人不在のポートレート
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