深層学習により病理組織標本における胃印環細胞癌を検出するAIを開発

デジタル病理診断支援ソリューション「PidPort」を提供するメドメイン株式会社は、札幌厚生病院、広島大学病院らと共に、胃の内視鏡生検病理組織デジタル標本において印環細胞癌を検出するAIの開発に成功しました。

なお、この開発に関する論文をTechnology in Cancer Research and Treatmentに投稿したところ、2021年6月30日に掲載されたようです。

ROC-AUCは0.99

臨床的に胃がんが疑われた場合、内視鏡検査によって胃の内部を観察し、がんなど病変が疑われる箇所の組織を採取して病理検査で胃がんかどうかを確定する「内視鏡生検」が行われることがあります。

今回の開発においては、広島大学および国際医療福祉大学三田病院より胃内視鏡生検病理組織標本の提供を受け、標本をデジタル化。複数の病理医によって作成された教師データを用いて深層学習を行うことで、胃内視鏡生検病理組織デジタル標本において印環細胞癌の検出を可能にするAIを複数モデル開発しました。

同社は、広島大学と国際医療福祉大学三田病院およびDigestPath2019から提供をうけたデジタル標本を検証症例として用いてこのAIの精度検証を実施。学習方法や倍率を変えた複数のAIのいずれの検証症例でも、印環細胞癌の検出においてROC-AUCが0.99という高い精度の結果が得られたといいます。また、AIがヒートマップで示唆する印環細胞癌の領域は、病理医による検証の結果、妥当であることが確認されました。

未分化型を検出するというインパクト

国立がん研究センターによると、2017年の1年間で胃がんと診断された数は129,476例にも上るようです。胃がんには、「分化型」と「未分化型」という二大組織型が存在します。一般的に「分化型」は進行が緩やかで、「未分化型」は進行が速い傾向があるといわれていて、今回のAIが検出可能な印環細胞癌は「未分化型」に分類されるものです。

また、胃印環細胞癌の予後に関しては、特に胃の粘膜下層以下に浸潤したがんでは、硬性癌(スキルス胃がん)となって発見される例が多く、リンパ節への転移や腹膜への播種、癌性リンパ管症などを伴うこともあり、不良とされています。

今回の共同研究者のひとりである札幌厚生病院 病理診断科 主任部長の市原 真氏によると、胃の未分化型癌に分類される印環細胞癌の判別が可能となったことは、臨床診療的にも病理診断的にも大きなインパクトを持つとのこと。というのも、がんの組織型に未分化型の成分がどれだけ含まれているかによってその後の治療方針が変わるからだそうです。また、病理診断の現場においては、未分化型の成分を判別するための負担が大きく、AIを活用した検出による負担軽減と精度向上に期待が高まっています。

PR TIMES

(文・Higuchi)

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