ツリーハウスのある空間「椿森コムナ」が素敵!不動産会社が宅地計画を中止した理由

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ツリーハウスのある空間「椿森コムナ」が素敵!不動産会社が宅地計画を中止した理由

千葉駅から徒歩9分、千葉公園沿いに「ツリーハウスカフェ&コミュニティスペース 椿森コムナ」があります。運営しているのは地元千葉をメインに展開する不動産会社・株式会社拓匠(たくしょう)開発です。同社は千葉県内にもコミュニティ活動を目的としてパン屋をはじめとした複合商業施設も運営しています。なぜ不動産会社がコミュニティスペースを運営するのか、その想いを聞きました。

本物のツリーハウスと吊り橋に子どもも大人も思わず笑顔に!

(写真撮影/片山貴博)

(写真撮影/片山貴博)

おしゃれで居心地よく、何より楽しい!「椿森コムナ」(写真撮影/片山貴博)

おしゃれで居心地よく、何より楽しい!「椿森コムナ」(写真撮影/片山貴博)

千葉を代表するターミナル千葉駅から10分ほど歩くと、住宅街に突然、木製の階段とデッキ、ツリーハウスが見えてきます。何もしらない人であれば、「えっ?なに?ココ?」と驚くことでしょう。木製の階段を登ると、一面にウッドチップが敷き詰められ、おしゃれなキッチンカーがあり、さまざまな人々がコーヒーを片手に思い思いに過ごしています。

階段を登るとそこはカフェスペース。取材日は月に1度の「農の市」が開催されていて出店も多く、より和やかな雰囲気に(写真撮影/片山貴博)

階段を登るとそこはカフェスペース。取材日は月に1度の「農の市」が開催されていて出店も多く、より和やかな雰囲気に(写真撮影/片山貴博)

コムナからは千葉公園の木々と池が見え、風が通り抜けていきます。そのためか平日・休日問わず、老若男女がにぎわい、まさに地域の人々に愛される場所となっています。誕生は2015年ですが、本年1月にリニューアル、ツリーハウスの間に吊橋(通称・コムナブリッジ)ができたほか、崖地にテラス席を増設、より多くの人がくつろげる場所となりました。

ツリーハウスとそれをむすぶ吊橋。子どもはもちろん、大人もはしゃいでしまう(写真撮影/片山貴博)

ツリーハウスとそれをむすぶ吊橋。子どもはもちろん、大人もはしゃいでしまう(写真撮影/片山貴博)

2021年1月に拡張してできた「椿森コムナ」のテラス席。施工を担当したのはなんと宮大工。拡張した場所と既存の建物に違和感がない(写真撮影/片山貴博)

2021年1月に拡張してできた「椿森コムナ」のテラス席。施工を担当したのはなんと宮大工。拡張した場所と既存の建物に違和感がない(写真撮影/片山貴博)

この「椿森コムナ」の開発・運営を手掛けているのは、千葉県を中心に展開する不動産会社です。大変失礼ながら、「コミュニティスペース」は不動産会社の直接的な収益とは遠い印象を持ちます。今回はまずその企画意図を、執行役員の湯浅里実さんに聞きました。

「立派なカシやイチョウを残したい」が「運命の出会い」を招く

「もともと、弊社がこの場所を購入したのは宅地として開発、販売するためでした。ただ現地を訪れてみるとイチョウ、カシ、サクラ、キンモクセイなどの立派な木々があって伐採するには惜しい。ちょうどそのころ、米国・ポートランドを参考にしたまちづくりをする話が社内で出ていて、せっかくなら『木々を活かしたコミュニティスペースとしよう!』という企画が立ちあがりました。コムナにあるタイニーハウスやテント、持ち運べるキッチンカー、廃材活用などは、すべてポートランドから学んだものです」と湯浅さん。

(写真撮影/片山貴博)

(写真撮影/片山貴博)

とはいえ、不動産会社である拓匠開発には、カフェなどの飲食店の企画運営経験のある人はおらず、施設運営のカギとなる人物を求めて、千葉県内のカフェを巡っていたそう。

「おしゃれなカフェがあるという噂を聞いてそのお店を訪ねたところ、たまたま出会えたのがジーザスさんでした。実はそのカフェにいらっしゃったのはお手伝いに来ていた3日間だけ、出会った日が最終日だったんです。その場でコムナの企画を説明し、施工中の現地を見学。木々を見てもらって、その場で話がまとまりました」と振り返ります。

執行役員の湯浅さん、中央がジーザスさん。右は椿森コムナを知り拓匠開発に入社したという経営企画部の石井友美さん(写真撮影/片山貴博)

執行役員の湯浅さん、中央がジーザスさん。右は椿森コムナを知り拓匠開発に入社したという経営企画部の石井友美さん(写真撮影/片山貴博)

実はジーザスさん、造形アーティストとして活動していましたが、庭師としても長いキャリアの持ち主。湯浅さんの「木を伐りたくない」という思いに共鳴し、コムナのプロデューサー、アートディレクターとして参画することになったといいます。

美しく、居心地よい空間だからこそ人は集まる

湯浅さんによるとオープン当初には課題もあったそう。
「2015年にはコミュニティスペースといってもまだ、なじみがなく、どのように利用してもらうのか課題もありました。来場者に意図を説明することで、次第に理解してもらえるようになりました」と歩みをふりかえります。また、オープン後に追い風になったのがSNS、いわゆる「インスタ映え」です。

「ある時期から、お客さんがいっせいに写真を撮っていくようになって。若いスタッフに聞いたら、SNSで検索してくるんだと聞きました。今は若い世代だけでなく、いろんな人が写真を撮っていきます。単なる場所をつくるだけじゃなくて、美意識があって、居心地よいと人は集まるんだと思います」とジーザスさん。

コムナでは廃材や端材も活用していますが、色や見せ方にこだわり、木々と遊び心を感じさせる空間は、幅広い世代から支持を集めるようになったのです。

(写真提供/拓匠開発)

(写真提供/拓匠開発)

場所をつくるきっかけとなった木々も、変化したといいます。
「サクラも当初は元気がなくて、申し訳なさそうに花をつける程度でしたが、年々、人に見られるようになって、樹勢を増してきたように思います。春のサクラ、新緑のカシ、秋の紅葉したイチョウ、キンモクセイなど、季節ごとに風景もうつろっていく。夏は池をあがってくる風が心地よいし、四季折々の発見があるんですよ」とジーザスさんは解説します。

オープンエアだからこそ、雨の日、寒い日などの苦労は絶えませんが、何よりもこの場所で「大人も子どもも笑い声が絶えない」ということに喜びを感じるそう。

月に1度、日曜朝は7時から営業し、マルシェを開催(写真撮影/片山貴博)

月に1度、日曜朝は7時から営業し、マルシェを開催(写真撮影/片山貴博)

千葉の新鮮野菜や岡山のしょうゆ、オリーブオイルなどさまざまな美味しいものが並ぶ(写真撮影/片山貴博)

千葉の新鮮野菜や岡山のしょうゆ、オリーブオイルなどさまざまな美味しいものが並ぶ(写真撮影/片山貴博)

初めてでも常連でも! また来たくなる居心地のよさ

利用者はどう思っているのでしょうか、訪れていた人に聞いてみました。

「私は何度も来ていて、今日は知り合いと来ました。今日のような昼間もいいですが、夏の夜、仕事終わりにビールを一杯、飲んで帰るのが幸せです。向かいの公園には池があるので、風が心地よいんですよ」と地元在住の女性が教えてくれました。一緒にいた若い女性は、「今日、初めてきました。あのツリーハウスや吊橋って、大人も登っていいんですか? ワクワクします。あとで絶対、登ろう(笑)」と楽しそう。

こちらのカフェは常時開店している。左の小屋はポートランドのタイニーハウスに着想を得たもの(写真撮影/片山貴博)

こちらのカフェは常時開店している。左の小屋はポートランドのタイニーハウスに着想を得たもの(写真撮影/片山貴博)

カフェで提供され、椿森コムナの名物となっている「BAMBIバーガー」。肉の焼ける匂いが食欲をそそります(写真撮影/片山貴博)

カフェで提供され、椿森コムナの名物となっている「BAMBIバーガー」。肉の焼ける匂いが食欲をそそります(写真撮影/片山貴博)

同じグループの男性も「大人も登れるなら、ツリーハウスに登りたいですよね(笑)。自分はキャンプが好きなんですが、今回、初めて訪れました。まさか近所にこんな場所があるとは思わず。すごく居心地がいいですねえ、またぜったい来ると思います」とにこやかです。

来場者には、ジーザスさんの人柄、センスのファンもいるそうだとか。
「駅を歩いていてジーザスさん!って声をかけられることもあります。この1年、コロナ禍でしたが、屋外ということもあって、人が途絶えることはありませんでした。運営では大変なことも多かったけど、はっきりとコムナの存在価値が見えてきたなあと思っています」とジーザスさん。

この場所に『あったらいいな』と思う空間をつくる。それが仕事

椿森コムナはファンや常連客に愛される場所となり、採算も確保して継続的に運営できる状態だとか。
「イベント開催や飲食の売上などで、無事に運営できてきます。地元のご高齢の方々が、毎朝、千葉公園を散策されるのですが、コムナでコーヒーを飲んで、無人販売の野菜を買っていってくださいます。また、コムナの運営は、弊社を知っていただくきっかけになり、採用にも良い影響を与えています。会社の取り組みや想いを体感してもらえる場所として、価値のある活動だと思っています」と湯浅さん。

お子さんも大人も、吊橋を渡るときはドキドキしてうれしそう(写真撮影/片山貴博)

お子さんも大人も、吊橋を渡るときはドキドキしてうれしそう(写真撮影/片山貴博)

一方、椿森コムナが千葉都市文化賞、グッドデザイン賞などを受賞したことで、他の場所にもつくらないの?と聞かれることもよくあるといいます。

「弊社では野田市の大型分譲地内でパン屋を運営しているのですが、それも社員から『ここにパン屋があったらいいよね』という意見からはじめたものなんです。コムナの場合は、木があったからこれを活かすには?ということからはじまりました。これからも、どこにでもあるものではなく、『この場所にあったらいいね』を叶えていきたいと思っています」とさらりと想いを話します。

木を残したいという思いからはじまった、椿森コムナの物語。すっかり元気になった木々の下で、これからもたくさんの物語が紡がれていくことでしょう。

「椿森コムナ ブランドストーリー」 from 拓匠開発 on Vimeo.

●取材協力
拓匠開発
椿森コムナ

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