定額の「ホテル住まい」コロナ禍でスタンダードに? 長期滞在プランが続々

定額の「ホテル住まい」コロナ禍でスタンダードに? 長期滞在プランが続々

2021年に入ってから、「ホテルに住む」というコンセプトのもと、長期滞在向けのプランが次々と登場しています。以前からホテルに住む人はいましたが、芸能人やインフルエンサーなど一部の人に限られていた印象。ところが背景を探ってみると、このコロナ禍で生まれた「ホテルに住みながら、やりたいことに集中する」新しい暮らしの価値観が見えてきました。

「ホテルに住む」という新しいライフスタイルの選択肢

コロナ禍でテレワークの推進やワーケーションに注目が集まるなどライフスタイルが大きく変化し、定住を基本とする今までの「住まい方」が変わろうとしています。ホテルの長期滞在プランは、短期の賃貸と捉えることもできます。今まで、主にリゾート目的で利用されていたホテルに「住む」という選択肢が増えたのです。ホテル住まいのメリットは、どこに住んでも、賃貸のような一連の契約や初期費用が一切不要であること。清掃付きで、洗濯はランドリーサービスが利用でき、おいしい料理をルームサービスで楽しむこともできます。

新しく登場しているホテル長期滞在プランは、一定期間を定額で利用できるサブスクリプションサービス(以下、サブスク)です。最近では、2021年2月に予約を開始した帝国ホテルの定額で1カ月間泊まれるプランが注目を集めました。観光や出張の需要が減る中、利用者を増やしたいホテルと新しいニーズが一致した形です。

三井不動産ホテルマネジメントでは、新しいライフスタイルに着目。2月にホテルを活用した、新しい住まいと暮らしの形を提案する2種類のサブスク「サブ住む」の提供を開始しました。

「サブ住む」(利用期間:2021年3月1日~6月30日)は、三井不動産ホテルマネジメントが展開する3ホテルブランド・全国12都道府県38施設を活用したプランで、ホテルでの新たな過ごし方を提案するサービスです。

全国にある35施設のうち好きなホテルを楽しめる「HOTELどこでもパス」と全国にある38施設のうち気に入ったホテルにゆっくりと滞在する「HOTELここだけパス」(画像提供/三井不動産ホテルマネジメント)

全国にある35施設のうち好きなホテルを楽しめる「HOTELどこでもパス」と全国にある38施設のうち気に入ったホテルにゆっくりと滞在する「HOTELここだけパス」(画像提供/三井不動産ホテルマネジメント)

全国さまざまな場所で多拠点生活を実現する「HOTELどこでもパス」と、契約や初期費用が不要でセカンドハウス等として活用できる「HOTELここだけパス」の2種類を定額料金で利用できます。「HOTELここだけパス」では、30泊の定額料金(都内15万円~)で、お気入りのホテルにじっくり住むことができます。

三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミアのデラックスツインは、30泊定額21万円で大浴場やフィットネスも無料で使える(画像提供/三井不動産ホテルマネジメント)

三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミアのデラックスツインは、30泊定額21万円で大浴場やフィットネスも無料で使える(画像提供/三井不動産ホテルマネジメント)

三井ガーデンホテル豊洲ベイサイドクロスの大浴場。仕事に集中したあとは、贅沢な施設でゆっくりくつろげるのがうれしい(画像提供/三井不動産ホテルマネジメント)

三井ガーデンホテル豊洲ベイサイドクロスの大浴場。仕事に集中したあとは、贅沢な施設でゆっくりくつろげるのがうれしい(画像提供/三井不動産ホテルマネジメント)

無料で安定したWi-Fiを利用でき、ホテルのサービスを割引や定額で受けられるところもある(写真/PIXTA)

無料で安定したWi-Fiを利用でき、ホテルのサービスを割引や定額で受けられるところもある(写真/PIXTA)

また東急は、旅するような暮らし方ができる定額制回遊型住み替えサービス「tsugi tsugi(ツギツギ)」をスタート。全国の東急ホテルズ35施設、東急バケーションズ4施設を対象に、「60泊体験プラン」「30泊体験プラン」を用意しています(「60泊体験プラン」4月16日(金)、「30泊体験プラン」5月9日(日)申込締切)。観光やローカルな生活体験を楽しみながら、全国に「ただいま」と帰れる場所をつくろうという試みです。

「30泊体験プラン」18万円、「60泊体験プラン」36万円(いずれも税・サービス料込)で、同伴者1名まで無料で利用できます(写真は下田東急ホテル)(写真提供/東急ホテルズ)

「30泊体験プラン」18万円、「60泊体験プラン」36万円(いずれも税・サービス料込)で、同伴者1名まで無料で利用できます(写真は下田東急ホテル)(写真提供/東急ホテルズ)

ホテルに定額で「住める」! 長期滞在向け定額プラン

このサブスクが話題になる前から、コロナ禍以降、苦境に立たされたホテル業界は、テレワーク需要に活路を見出し、デイユースプランの販売を開始していました。2021年に入り、続々と定額で長期滞在ができるサブスクプランが登場します。
前述の帝国ホテルのほかにも、たくさんあります。

疲れたらコーヒーや軽食、マッサージのルームサービスを受けてもいい(写真/PIXTA)

疲れたらコーヒーや軽食、マッサージのルームサービスを受けてもいい(写真/PIXTA)

例えば、ANAインターコンチネンタルホテル東京の「ホーム アウェイ フロム ホーム」(利用期間:2021年3月1日~7月15日、8月15日~11月15日/30泊35万円~)は、フィットネス利用無料やルームサービス、ランドリーサービスの特別割引など各種サポートが充実。赤坂・六本木・霞が関まで各徒歩圏内というロケーションで、ビジネスやワーケーションなどさまざまな利用ができそうです。

京王ホテルの「“暮らす”@theHOTEL」(利用期間:2021年2月22日~5月15日/30泊21万円~)
は、朝食の無料サービスが付くシンプルなプランが好評で既に完売しました。

充実のサービスが魅力の有名ホテル暮らしのプランにバリエーションが増えてきています。

都心で暮らすように泊まるリーガロイヤルホテルの「Home Hotel」

ホテルに長期滞在している間は、家事から解放されて、仕事に集中したり、食事を楽しんだりできる(画像提供/リーガロイヤルホテル)

ホテルに長期滞在している間は、家事から解放されて、仕事に集中したり、食事を楽しんだりできる(画像提供/リーガロイヤルホテル)

ここで、定額で長期滞在できるプランのひとつをご紹介しましょう。
全国に11店舗のホテルを展開するリーガロイヤルホテルグループでは、4月より長期滞在プランを大阪、京都、広島、小倉、リーガプレイス肥後橋、リーガグラン京都で販売しています。大阪のリーガロイヤルホテルで販売している「Home Hotel」企画の背景を総支配人室の竹村梓さんにたずねました。
「長期滞在型プランは、大阪・関西万博をむかえる2025年に向けてコロナ前から構想していました。コロナ禍でホテル業界が厳しい局面を迎えた2020年は、社会情勢の変化に伴い、テレワークの増加や長距離の移動後に家族との接触を避けたいなどお客さまのニーズの変化を感じた年でした。アフターコロナを見据えた長期的な観点から新しい試みを行っています」(竹村さん)
長期滞在の定額プランは、ビジネスなどの出張向けのシンプルプラン(30泊15万円~)とホテルで寛ぎの時間を堪能できるデラックスプラン(30泊30万円~)です。ビジネスや家のリフォーム、通院や看護など、一時的にホテル住まいが必要となった人を想定し、部屋タイプ、金額など幅広いラインナップをそろえました。

客室イメージ。デラックスフロアデラックスツイン30泊40万円は、贅沢な時間を堪能できる部屋に泊まれるプラン(画像提供/リーガロイヤルホテル)

客室イメージ。デラックスフロアデラックスツイン30泊40万円は、贅沢な時間を堪能できる部屋に泊まれるプラン(画像提供/リーガロイヤルホテル)

「デラックスプラン」は、ロイヤルスイミングクラブのプール、サウナ、大浴場が無料で利用可能。長期滞在中の健康づくりをサポートしてくれるサービスだ(画像提供/リーガロイヤルホテル)

「デラックスプラン」は、ロイヤルスイミングクラブのプール、サウナ、大浴場が無料で利用可能。長期滞在中の健康づくりをサポートしてくれるサービスだ(画像提供/リーガロイヤルホテル)

コロナ禍でテレワークなどのホテルの需要が増加した理由はどこにあるのでしょうか。
「ホテルが快適で自宅のように安心できる場所だと信頼していただいた結果だと考えています。プランの内容では、お客さまのセキュリティを守りつつ、『ホテルで暮らす』利便性や快適性を追求しました。専用フロアやエレベーターには、利用者様しか入れないセキュリティシステムを導入しています」(竹村さん)

リーガロイヤルホテル(大阪)では、長期滞在者専用フロアを用意し、入り口にセキュリティドアを設置しました。さらに、自動洗濯乾燥機、電子レンジ、トースターを無料で利用できるユーティリティールームを新設。館内は無料でWi-Fi接続でき、インターネットに接続されたパソコンが利用できるビジネスセンターにはパソコンを持参できるブースもあり、滞在中無料で利用可能です。館内直営レストラン&バーやルームサービス、ランドリーサービスを割引で受けられるので、面倒な家事から解放され、仕事や余暇に時間をたっぷりと使えます。

「大阪・関西万博やIR(カジノのほかホテルや劇場、国際会議場や展示会場、ショッピングモールなどが集まった統合型リゾート)誘致に関わる方など、国内外のお客様の長期需要を見込んでいます。今回の販売での利用状況やニーズを踏まえ、今後のプランに活かしていきたいと思っています」(竹村さん)

リーガロイヤルホテルが、2021年2月19日にホームページや雑誌などで「Home Hotel」の情報を公開したところ、販売開始前にもかかわらず、問い合わせが100件以上あったといいます。その他のホテルでも、予約開始後すぐに満室になったプランも。「ホテルに住む」ことへの関心は、着実に高まっています。コロナにより加速する暮らしの最適化。アフターコロナを見据え、ホテルの模索が続きます。

●取材協力
三井不動産ホテルマネジメント
・リーガロイヤルホテル
・東急ホテルズ

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