【金沢・和菓子の旅】老舗のきんつば、麩あんみつ、手づくり体験
生活雑貨のセレクトショップ「MIGO LABO」ディレクター・カメラマンの石黒美穂子です。春が近づき、気温とともに旅行熱が上昇。季節感のある和菓子の記事にも、グッと気分が高まります。調べてみると、金沢で和菓子の手づくり体験ができるとのことで、いざ出陣。
JR東京駅
北陸新幹線、季節の移り変わりを感じながら金沢へ
夜明け前のJR東京駅から北陸新幹線「かがやき」に乗り込みます。JR金沢駅までは約2時間半。
北陸新幹線ではJR-EAST FREE Wi-Fiが使えるため、金沢の下調べは万全です。
※編集部注:北陸新幹線の車両にはE7系とW7系があり、E7系では「JR-EAST FREE Wi-Fi」、W7系では「JR-WEST FREE Wi-Fi」が利用できます。
眩しい朝の日差しが差し込むと、雪の残る山の頂、一面の田畑の雪景色が見えはじめ、車窓は徐々に北陸の気候を感じる風景へと移っていきます。JR糸魚川駅あたりで視界が開け、深い碧色の日本海と並行して、一路金沢へ。
時雨亭
一服で冴える五感。静寂の茶室「時雨亭」
金沢駅から北鉄バスに乗り約15分、兼六園下・金沢城バス停で下車し、お土産物屋が立ち並ぶ坂を歩くこと約3分、「兼六園」の桂坂口に着きました。
のどかな園内は清々しい空気で思わず深呼吸。冬の間、松の木を雪から守るために施される雪吊りが立ち並ぶ園内。職人さんの手仕事で施された雪吊りが青空に向かう景観は圧巻。冬の景色を満喫しながら「時雨亭」へと向かいます。
兼六園は、加賀前田家5代藩主・前田綱紀が蓮池御亭(れんちおちん)を建てて、その周辺を作庭したのがはじまりです。蓮池御亭は後に時雨亭とも呼ばれて、明治の初めには取り壊されましたが、2000年3月に現在の場所に再現されたそうです。
お抹茶はここでしか味わえない、加賀前田家18代当主・前田利祐氏が名づけた茶銘「蓮池の香」。加賀藩御用菓子司「森八」の上生菓子(時雨亭オリジナル)と一緒にいただきます。久しぶりに味わうお抹茶はジワリと体に沁み入り、甘みを抑えた上品な上生菓子とよく合います。
お茶室に正座していると、襖を開ける音、庭の掃除をする音、水のせせらぎなど、普段はあまり耳にしないかすかな音も聴こえてきます。静寂の中、五感が冴え渡るような感覚です。
庭を眺めていると、水辺に白鷺を見つけてびっくり。急いでカメラを持ち、写真を撮っていると係の方が、「人懐っこくて目が合っても逃げないんですよ」と。気品ある姿は高貴な雰囲気ですね。
石川県観光物産館
初めてのオリジナル和菓子づくり
兼六園の桂坂口を出て、「和菓子手づくり体験」ができる「石川県観光物産館」までは徒歩約3分。
体験料(税込1,500円)を払い会場にはいると、親子連れや元気な女子2人組、シニア世代のご夫婦、外国人の方などさまざまな人がワクワクして待っている様子。
テーブルには見本の和菓子、材料となる色あざやかな練り切り生地、そぼろ通し(練り切り生地を裏ごしてそぼろ状にするこし器)やヘラ類、茶巾絞り(練り切り生地や餡を包んで絞り目をつける)用のビニール、お土産の和菓子が1つ入った持ち帰り用の箱などが用意されています。
手づくり体験は講師の職人さんが手順の説明をしながら作業を進めるのですが、見るのと自分でやるのとでは大違い。思うようにはかどりません。
仕上げの段階でいびつな形が気になってしまい凹んでいると、「大人は綺麗に作ろうとしすぎるからできないんです。子どもは言われたことを素直にやるので上手くいくんですよ」と職人さんに言われて妙に納得。
上の写真の右端、私の作った「茶巾」は絞りきれてないので、まるでピンポン球のよう。「みなさんの作ったお菓子、それぞれオリジナルの良さがありますからね」と励まされました。
帰宅後ですが、作った和菓子を白漆のお皿に盛り付けてみると、不恰好ながら少しは様になったようです。横目で見ていた娘が「可愛いじゃん」と褒めてくれて、初めての和菓子づくりは完結。
鼓門・もてなしドーム
金沢の夜を彩る、鼓門・もてなしドームのライトアップ
石川県観光物産館を出て金沢城の石垣を眺めながらお堀通り、石浦神社、金沢21世紀美術館近辺を散策。日も暮れかけてきたころ、「鼓門(つづみもん)」のライトアップを見に金沢駅に向かいます。
金沢の伝統芸能・能で使われる和楽器の「鼓」をイメージして作られた鼓門は、想像していたよりも立体的で迫力があります。
日没から0:00までのライトアップ時間中、毎時00分になると2分間、日替わりで加賀五彩(月曜:えんじ、火曜:藍、水曜:草、木曜:黄土、金曜:古代紫)と、異なる色に変わります。土・日・祝日には5色全ての色に変わっていく10分間の豪華なライトアップ。私はちょうど週末だったので5色のライトアップを満喫。
撮影後は金沢駅から徒歩1分ほどのホテルへ向かい、明日に備えてゆっくり休みます。
長町武家屋敷跡界隈
凛とした佇まいの長町武家屋敷跡界隈
2日目は金沢の街を散策します。金沢駅から北鉄バスで約10分の香林坊(日銀前)バス停で降りて歩くこと約8分、「長町武家屋敷跡界隈」に到着です。
立派な土塀の武家屋敷跡には、冬の間、雪による損傷から土塀を守るために「こも(わらなどを編んだもの)」が掛けられています。時雨亭の雪吊りと同じく、職人さんによる丁寧な仕事で趣のある街並みを引き立たせています。
散策途中、長町武家屋敷休憩館で聞いたオススメスポット「金沢市老舗記念館」に立ち寄ってみました。
1878年(明治11年)に建てられ1919年(大正8年)に改築された薬種業「中屋薬舗」を移築し、伝統的町民文化を広く知ってもらおうと作られた施設。
館内にはレトロな看板や道具が多く陳列されています。骨董が好きな私は時間の経つのを忘れて見入りました。
豪華な婚礼模様の展示。写真には写っていませんが、江戸時代から伝わる加賀五色生菓子も添えられていて、ここでも金沢の和菓子文化に触れることができます。
武家屋敷跡近くにはハイセンスな雑貨屋さんやカフェ、美味しそうなレストランが並ぶせせらぎ通りがあります。素通りできない気になるお店ばかりですね。
FUMUROYA CAFÉ 香林坊大和店
モダンなお麩スイーツ
少し歩き疲れたところで、今年(2021年)創業156年になる加賀麩の名店「不室屋」が手掛ける甘味処「FUMUROYA CAFÉ香林坊大和店」へ。金沢市老舗記念館から歩くこと約7分です。
加賀麩には150年以上の歴史があり、金沢では馴染み深い食材です。市場やスーパーにはさまざまな種類の加賀麩が売られています。麩そのものにはほとんど味はなくアレンジしやすいため、FUMUROYA CAFÉではフレンチトーストやカレーなどの、麩を使った軽食メニューもあります。
スタッフのアイディアで写真撮影用のランチョンマットを貸し出していて、好評なんだとか。
人気の「麩あんみつ(税込880円)」をいただきました。花形の生麩は、彩りが華やかで繊細。麩の原材料であるグルテンにもち粉を混ぜた特製の「しら玉生麩」は、弾力のあるもちもち食感が特徴です。食感の違いが楽しめる2つの生麩と、舌の上でとろける滑らかなこしあんがとても美味しい。加賀麩と和菓子の絶妙なマッチングが味わえます。
金沢駅
金沢駅で手軽に老舗めぐり
名残惜しいですが帰りの時間です。再びバスで金沢駅まで戻ります。新幹線の乗車前には、駅構内にある「金沢百番街 あんと」へ。市内の老舗が一堂に揃っていて、お土産を買うのにとても便利。いろいろと迷ってしまったのですが、きんつば中田屋の銘菓「きんつば」を買いました。季節限定の「うぐいす」や「さくら」は、色も鮮やかでフォトジェニック。帰ってから撮影するのが楽しみです。
四季折々の景色が楽しめ、散策にぴったりの街・金沢。今回の旅では、古い街並みや昔ながらの食文化を守りながら現代と融合させている金沢の良さを随所で感じながら、加賀五彩といった伝統的な色へのこだわりにも触れることができました。次回は季節を変えて、伝統工芸や美味しい魚介類を味わいに訪れたくなりました。
東京駅
掲載情報は2021年4月8日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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