「razr 5G」と「ThinkPad X1 Fold」の独占販売に見る、ソフトバンクのフォルダブル戦略
ソフトバンクは、レノボ傘下のモトローラ製スマホ「razr 5G」と、レノボ製のPC「ThinkPad X1 Fold」の2機種をキャリアとして独占発売する。
2機種は、スマホとPCでジャンルは異なるが、いずれもディスプレイそのものを折り曲げられる「フォルダブル」が特徴だ。ソフトバンクは、この2機種でラインナップの幅を広げる狙いがある。
ソフトバンクにとって、この2機種には2つの「初」がある。
1つ目は、同社初のフォルダブルスマホであること。フォルダブルスマホは、ディスプレイ開発を手がけるサムスン電子がリードしている。日本ではKDDIが「Galaxy Z Flip」や「Galaxy Fold」「Galaxy Z Fold2」を独占的に取り扱ってきた。razr 5Gは、前者のGalaxy Z Flipに対抗できる「縦折り」の端末だ。
縦に折れると、持ち運びのときだけ、形状をコンパクトにできるのがメリット。かつてのフィーチャーフォンに近いが、開くとタッチパネルのスマホで、ディスプレイサイズも6.2インチと大きい。閉じたままでも、背面に搭載されたクイックビューディスプレイで操作可能だが、こうした使い勝手もフィーチャーフォンを彷彿とさせる。
それもそのはず。razrとは、モトローラがフィーチャーフォン時代に手がけていた端末の名称。フォルダブルの技術を使って、そのデザインを現代風に復刻させたのがrazr 5Gというわけだ。もちろん、中身は最新のスマートフォンで、チップセットにはSnapdragon 765Gを採用。5Gに対応しており、メインカメラの画素数も4800万と高い。
一方で、フォルダブルスマホは折り曲げられるディスプレイの部材や機構設計の難しさから、価格はまだまだ手が届きにくい。razr 5Gも、ソフトバンクでの本体価格は19万8000円と、ハイエンドモデルのさらに上をいく。2年間の利用後に端末を返却すると、割賦の半分が免除される「トクするサポート+」を使うと、実質9万9000円で利用できるのはキャリアで端末を購入するメリットだが、どこまで販売が伸びるのかは未知数だ。
ソフトバンクにとっても、razr 5Gの投入は実験的な意味合いがあるという。同社の常務執行役員、菅野圭吾氏は価格に見合った価値はあると前置きしつつも、「ユーザーの皆様の反応を見たい」と語る。5Gをアピールする端末としても、先進感のあるフォルダブルというギミックはうってつけだったようだ。同社の郷司雅通本部長は、「5G時代になったとき、こういう端末も動くのかというのは分かりやすい」と語る。
もう1つの初は、PCに対して、上記のトクするサポート+を適用したことだ。ThinkPad X1 Foldは、世界初のフォルダブルPCだが、価格は40万2480円と非常に高額。開いて大画面で使うもよし、半開きでノートPCのように使うもよし、タブレットスタイルで使うもよしと、フォルダブルによってさまざまな利用シーンにフィットする1台に仕上がっているものの、一般のユーザーは手が出しづらいのが実情だろう。
このPCに対し、ソフトバンクはトクするサポート+を適用して販売。2年後に端末を返却する前提であれば、半額の20万1240円で利用できる。また、ソフトバンクの「メリハリ無制限」など、大容量プランには月額980円でデータ通信料をシェアできる「データシェア」オプションが用意されている。5G対応PCであれば、こうしたプランをユーザーに勧めやすい。こうした料金プランはあったものの、端末のバリエーションが乏しかったソフトバンクにとって、ThinkPad X1 Foldはまさに目玉と言える商品だ。
コロナ禍でリモートワークやリモート授業の機会が増え、PCの需要は急増している。ソフトバンクは、こうしたニーズも取り込みたい構えだ。ThinkPad X1 Foldは先進層向けのPCだが、今後は、徐々にラインナップを広げていく可能性もあるという。その意味で、ThinkPad X1 Foldの販売は、携帯ショップの商品の1つとしてPCが定着するのかどうかの試金石になりそうだ。
(文・石野純也)
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