「忖度しない検事」が巻き起こす旋風の行方…社会派に薦める韓流ドラマ|李策
4日、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長が電撃的に辞任した。文在寅(ムン・ジェイン)政権は、政権や与党要人らの疑惑に容赦なく切り込んできた尹氏を疎んじ、あの手この手で検察からの追放を目論んできた。そうした攻勢を跳ね返し、「聖域なき捜査」を押し通してきた尹氏だが、与党が「重大犯罪捜査庁」設置法案を準備するに及び、もはや検察の内部にとどまって戦うことは不可能だと判断したようだ。
韓国では、犯罪に対する捜査権と公訴権を独占する検察がたびたび政治に介入。社会の不公正の根源のように見られてきた。特に現政権と与党は、同じ進歩派の廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が強引な捜査により自殺に追い込まれたこともあって、検察への怨念は深い。これまでも捜査権の一部を警察に移管させるなどして検察の力を削ぎ落してきたが、残った捜査権も完全に取り上げ、起訴と公判だけを担当する組織に作り替えようとする同法案で、検察改革の総仕上げを期している。
しかし実際のところ、そうまでしなくとも、現在の韓国検察はこれまでの改革ですでに、以前とは違う形になっている。同法案の本当の目的は、検察がいま進めている政権と与党に対する捜査を、うやむやにすることにあると筆者は見ている。何しろ検察が捜査に取り組む事件の中には、文在寅大統領が被疑者となり得るケースまで存在するからだ。
そうした事件についての説明は別の機会に譲るとして、今このタイミングで是非とも見て欲しい韓流ドラマがある。チョ・スンウ、ペ・ドゥナ主演の『秘密の森』(シーズン1・2)である。シーズン1が放映された2017年には、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が選ぶ「国際TVドラマTOP10」に入った社会派ミステリーの秀作だ。
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シーズン1のストーリーの縦軸は、ワイロや接待で検察に食い込んでいた実業家の殺人事件だ。ある理由から感情を失った冷徹な検事ファン・シモクと、人情派の女性刑事ハン・ヨジンが真相を追ううちに、第2、第3の事件が発生。「次はいったい何が起きるのか」と見る者を引き込む脚本の力はすごい。そしてドラマの横軸として、韓国の政財界からエリート検事が何を期待され、どんな役回りを担い、どのようにして正義に背を向けてきたかが描かれる。
個人的に面白かったのは、感情を持たないはずの主人公の表情の変化だ。ラスト近くの取り調べのシーンでは、チョ・スンウの演技力に感嘆させられた。ちなみに、主人公は「忖度しないキャラ」が特徴でもあるが、この点は現実の世界の前検事総長、尹錫悦氏とも重なる。
【公式映像】犯罪スリラーの秀作『秘密の森』深い闇の向こうに…
シーズン2は、先述した検察と警察の捜査権調整が重要なテーマになっており、そこに双方の暗部が複雑にからまる。ミステリーとしての魅力は前シーズンが勝るが、リアルさの点ではこちらの方が上だ。そして前シーズンにも増して脂の乗りきったペ・ドゥナの演技は、見て置いて決して損ではない。(取材・文◎李策)
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TABLOとは アメリカが生んだ、偉大な古典ミステリーの大家レイモンド・チャンドラー作品の主人公フィリップ・マーロウの有名なセリフがあります。 「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」 人が生きていく上で、「優しさ」こそ最も大切なものであることを端的に表現した言葉です。優しさとは「人を思いやる気持ち」であり「想像力を働かせること」です。弱者の立場に立つ想像力。 「人に優しく」 これは報道する側にも言えることだと思います。 現在、ヘイトニュース、ヘイト発言、フェイクニュースがネットの普及に従い、増大しており、報道関係者の間では深刻な問題となっています。そこには「人に優しく」という考えが存在していません。 なぜ、ヘイト(差別)ニュースがはびこるのか。「相手はどういう感情を抱くのか」という想像力の欠如がなせる業です。ヘイトによって、人は人に憎悪し、戦争が起き、傷ましい結果をもたらし、人類は反省し、「差別をしてはならない」ということを学んだはずです。 しかし、またもヘイトニュースがはびこる世の中になっています。人種差別だけではありません、LGBT差別、女性差別、職業差別等々、依然としてなくなっていないのだな、ということは心ある人ならネットの言論にはびこっていることに気づいているはずです。本サイトはこのヘイトに対して徹頭徹尾、対峙するものです。
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