「政府も自民党内も問題があると認識していない」 コスプレ著作権ルール化報道について山田太郎参議院議員に聞いてみた

共同通信が2021年1月23日に『コスプレ著作権ルール化へ 政府、海外展開を後押し』と題した記事で、「コスプレが非営利目的なら著作権法に抵触しないが、写真をインスタグラムなど会員制交流サイト(SNS)に投稿したり、イベントで報酬を得たりすれば、著作権侵害に当たる可能性が出てくる」とされていることに関して、ネットでは「コスプレ活動が制限されるのではないか」といった不安の声が広がっています。

2021年1月29日の記者会見で井上信治クールジャパン担当大臣は、「現時点では大きな問題はなっていないものの、今後コスプレ人口が増えるにつれ、法的な問題が発生する可能性が高まることをを懸念する声があると承知している」とした上で、「こうした懸念を払拭し、コスプレ文化を盛り上げて、関係者が安心して楽しむ環境が重要であり、そのための必要な方策を考えたいというのが本意」と述べ、「現在関係者からのヒヤリングを行い、実態把握と課題の整理を進めており、年度内に関係者との議論をさらに進めていきたい」としています。

現在、自民党の政務調査会知的財産戦略調査会事務局次長で、オタク文化にも詳しい山田太郎参議院議員(@yamadataro43)は、内閣府知財事務局に井上大臣の発言について確認をしたとして、次のようにツイートしています。

内閣府知財事務局に「懸念払拭し安心してコスプレできる様、課題整理、年度内に方策整備」の大臣発言の真意確認。発言はスタディの範疇でありコスプレと著作権関係で今問題があり法改正等が必要だとは考えてないとの事。安心して頂いていいと思います。コスプレ必ず護ります!

今回、山田議員にオンラインで直接お話を伺い、政府や自民党内での議論についてお訊きしました。

--内閣府の知的財産戦略推進事務局に確認をしたということですが、その内容を詳しくお願いします。

山田太郎参議院議員(以下、山田):井上大臣の会見の発言についてまとめている知財事務局に確認したところ、「著作権法を改正することを考えているわけではない。ルール作りに関する議論をしているわけでもない」という回答でした。年度内にどうなっているか調査をしたいというのは、問題があるのかどうかも含めて、「課題があるなら調査をしたい」ということで、問題があるということを認識しているわけではありません。ただ、井上大臣の会見を見ると、真意が勘違いされかねない。大臣には慎重な発言をして頂きたいと思います。

--ご自身も、報道で今回の件を知ったと聞いています。

山田:私は(自民党)政務調査会知的財産戦略調査会の下の『デジタル社会に対応した知財活用小委員会』の事務局長とクールジャパン戦略推特別委員会の事務局次長をしていて、著作権やデジタルの見直しに関しては党内の責任者ですので、関係する話は全部来ます。今回は(著作権法を所管する)文化庁ではなく、知財事務局マターの話でした。

--コスプレに関しては、権利関係だけでなく勝手にネットに画像をアップされるといった事例がトラブルになるケースもあるように感じます。

山田:今回、複製権侵害の議論と、公衆送信権の問題は分けて考えないといけません。前者に関しては、自民党を含めて、直ちに著作権が問題だという認識にはなっていません。公衆送信の問題に限らず、著作権法は50年前(1970年)に制定されて、今のデジタルの時代に合わせないといけないという議論はしていますが、直ちに改正が必要だと意図して議論しているわけではありません。

--実際に自民党内ではどのような議論をしているのでしょうか?

山田:デジタル時代の著作権の議論は、フェアユースも含めて議論しています。今のコスプレの対応は、(同人活動などの)著作権違反に関しては親告罪なので、権利者が問題だという形でなければ、法的な問題にはならず、ある種フェアユース的ではあると言えるわけです。しかし、現状でグレーのものをはっきりとさせようとしたところで、「訴えられそう」となれば萎縮しかねず、議論の余地があると考えています。

--今回、報道ではコスプレの営利・非営利といった話も出ています。

山田:著作権で財産権も営利・非営利の関係はありません。私の方の整理では、人格権と財産権という形に分けていて、デジタル時代に寄せていくと、報酬があれば権利者に分配できる仕組みにしなければ、という議論はあります。ただ、著作権はベルヌ条約のような国際条約に縛られているものなので、そう簡単に変えられるものでもありません。慎重に議論する必要があります。

--コスプレに限らず、著作権に関わる報道には、ネットユーザーから毎回不安視する声が上がります。今後の議論の方向性も含めて、ご自身のご見解や展望をお願いします。

山田:今回、著作権に関して理解されていないということは改めて感じました。繰り返しになりますが、コスプレそのものの複製・翻案権の違反の話をしているのか、公衆送信権か肖像権を問題にしているのか、整理ができていません。著作権に関しての萎縮や不安をメディアが呼び起こしている。問題がないものを取り上げるのはちょっとどうなのか、と思います。クールジャパンに関しては振興策を積極的に取り組んでほしいですし、よりよい社会に向けて進んでいけるようにしたいと考えています。

追記 2021/1/29 20:20

山田議員より、下記ツイートの通りご指摘がありました。それに合わせて訂正しております。

ガジェット通信取材記事9か所私の発言と違う部分が有。知財事務局も私に関係有。公衆送信権も著作権の一つ。50年経た著作権法は公衆送信以外も課題有り。営利非営利は人格権だけでなく財産権も関係なし。ベルヌ条約は人格権だけ拘束ではない。報酬増でなく有れば。肖像権は著作権ではない。その他複数

※関連記事 コスプレイヤー・えなこさんをクールジャパン・アンバサダーに任命 井上信治担当大臣「著作権の正しい理解や適切な利活用の普及啓発も期待している」
https://getnews.jp/archives/2835028 [リンク]

※画像はTwitterより
https://twitter.com/yamadataro43 [リンク]

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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