新卒でも広がる「リファラル採用」 企業のメリット・デメリット、応募者が注意したいことは?

新卒でも広がる「リファラル採用」 企業のメリット・デメリット、応募者が注意したいことは?
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、選考のオンライン化が進むなど、これまでと大きく変わってきた新卒採用。コロナ禍で注目されている採用方法の一つに、「リファラル採用」があります。

「リファラル」とは、英語で紹介の意味。自社の社員に、知人などの人材を紹介してもらい、選考を受けてもらいます。もとは中途採用で広がっていた採用形態が、新卒採用でも導入される例が増えています。

企業にとってのメリット・デメリットや、紹介する側・される側が注意したいこととは。社会保険労務士の三谷文夫さんに聞きました。

定着率アップを期待できるが人材が偏る懸念も。推薦を受けても一定の選考基準があり、不採用の場合もある。まずは志望動機を明確にすることが大切

Q:「リファラル採用」とは、どのような採用手法ですか?
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自社で働く社員などに呼びかけ、知人や友人の中から人材を紹介してもらい、採用試験や面接などの選考を受けてもらう方法です。「一次面接を省いて二次面接から」など、通常の選考過程とは区別している企業が多いようです。

似た採用方法の一つに「縁故採用」がありますが、大きな違いは、紹介された人を無条件では採用しない点です。縁故採用では、身内などを紹介できるのは特定の社員に限られますが、リファラル採用では、社内で誰もが紹介する側になることができます。

また、新卒採用では、自社の社員が出身大学やサークルなどの人脈をもとに学生にアプローチする「リクルーター制度」があります。社員がリクルーターとしての役割を持ち、大学やサークルなど限られた範囲で紹介するのとは異なり、リファラル採用ではより広い人間関係から人材を見つけることができます。

Q:「リファラル採用」を導入している企業は増えていますか?
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ある調査では、企業の中途採用担当者1148人のうち、約6割が2019年にリファラル採用を導入したと回答しています(「マイナビ 中途採用状況調査2020年版」、2020年1月14日~23日)。

もともと中小企業では、即戦力となる人材獲得のために、従業員からの紹介で中途採用を行うケースはよくあります。近年は、人材の紹介を業務として位置づけ、インセンティブを支払うなど、明確な仕組みづくりが進んできていると言えます。
インセンティブは、採用時点または紹介した人材が6カ月勤続した時点などの条件付きで、数万円程度を設定している企業が多いようです。

従来の「コネ採用」「縁故採用」というとネガティブなイメージがありましたが、「リファラル採用」という言葉が広がり、採用に社員のつながりを活用する手法をポジティブにとらえるようになっています。今後も、新卒・中途ともに積極的に取り入れる企業が増えるのではないでしょうか。

Q:新卒採用でもリファラル採用が広がってきた理由は何ですか?
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SNSの利用が広がり、企業を選ぶ際に、学生が口コミを重視する傾向は年々強まっています。

ただ、SNSに投稿された情報は正確な内容ばかりではないため、企業も積極的に発信するようになっています。以前は、採用情報を発信するのは人事担当者でしたが、入社2年目の営業担当者など、学生に近い立場の社員から発信する例も多くなっています。

リファラル採用では、より求職者に近い立場から、自社の正確な情報を伝えることができるため、新卒採用でも有効だと考えられているのではないでしょうか。

また、コロナ以前の売り手市場では、多くの学生が複数の企業から内定を受けていました。知人からの紹介が前提にあると「辞退しにくい」心理になることも、企業側の導入の動機になり得ます。コロナ以後も労働人口が減少し、若手の人材確保は依然として難しいため、新たな採用の手法として注目されるでしょう。

Q:企業にとって、リファラル採用のメリット・デメリットは?
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メリットの一つに、定着率が高まることがあります。求職者が、実際に働いている社員から、事業内容や社風などを聞けるので、会社への理解が進み、入社後のギャップが少なくなります。また、知り合いがいる安心感は働きやすさにつながるため、早期退職の可能性も少なくなると考えられます。

コロナにより、企業が求職者と直接つながる機会をつくることが難しい中、自社の社員と紹介される側にすでに関係性があるため、密な情報交換や連絡ができる点も魅力です。あわせて、求人広告や人材紹介会社にかかるコストも減らすことができます。

また、リファラル採用を制度化することは、今働いている社員の人材育成にもつながります。紹介する側は、自社の魅力はもとより、時には課題をも正確に伝える必要があります。そのためには、企業がきちんと情報を整理し、紹介役である社員と共有しておく必要があります。この情報共有の作業の過程で、働く一人一人が、経営者の目線で自分の会社をとらえることができるため、本来の業務にもプラスに働きます。

一方、デメリットは、候補者が偏る可能性がある点です。例えば、体育会系のノリの人が紹介する人は、どうしても似たタイプの人が多くなり、社風と合致する場合はメリットとなりますが、多様な人材を集めたい場合にはミスマッチとなります。また、人間の心理として、自分より優秀な人を他者に紹介しない傾向があり、同等のスキルを持った人材ばかりが集まる懸念もあります。

リファラル採用は、社員に人材紹介を強制する制度ではありませんが、採用活動に関わることで、社員の業務量の負担は増えます。また、紹介したのに「不採用となった」「採用したが、合わなかった」という場合に、企業と紹介した社員、あるいは紹介した社員と紹介された人の人間関係に影響を及ぼすこともありえます。

Q:紹介する側、または紹介を受ける側になったとき、注意するべき点はありますか?
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紹介する側は、インセンティブを含め、リファラル採用の仕組みや、求める人物像や採用条件、入社後の待遇などを会社からきちんと確認し、正確に伝えることが大切です。その際、選考前にどこまで話していいかなど、機密情報の取り扱いにも注意しましょう。

「朝礼が毎朝10分ある」「トイレが男女共用」など、設備や福利厚生など、働くときに気になるポイントを伝えておくと、後々「イメージしていたのと違う」とならず、ミスマッチを防ぐことにつながります。

せっかく紹介したのに不採用になった場合は、自身の人間関係が壊れてしまう可能性もあります。企業側の配慮として、通常の採用のように、不採用通知を送るだけで終わらせるのではなく、「キャリアを拝見したところ、当社では活かしきれないと考えた」など、採用に至らなかった理由も丁寧に説明することが求められます。

紹介を受ける側は、「リファラル採用の推薦は、必ずしも入社を約束するものではない」と肝に銘じておきましょう。

一部の選考過程が免除されたとしても、選考基準があり、不採用になる可能性があります。知人からの紹介がきっかけであっても「入社後どのように働きたいか」「何をしたいか」など、志望動機は通常の採用と同じように明確にしておきましょう。

新卒採用では、主に採用のプロである人事担当者が企業を代表して採用活動を行いますが、リファラル採用では、会社の組織や業務についてまだ経験の浅い入社1~2年の社員が、後輩を紹介するケースもあります。まれに不正確・不十分な情報の場合もあるため、新卒者は紹介してくれる知人の情報だけをうのみにせず、しっかりと企業を選ぶ心構えが必要です。

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