「癒やされた」「優しい言葉と気持ちに救われた」 空気が見える女子新入社員が無愛想な先輩とケーキバイキングに行くマンガがハートフル

空気が物理的に見えてしまう不思議な力を持っている新入社員の志野聡子さんが、無愛想だけど実は優しい慈先輩との日々を描いた鳥原習さん(@t_rsa)のマンガ『空気が読める新入社員と無愛想な先輩』。2020年11月25日にZERO-SUMコミックスから単行本が刊行となり、2020年11月23日に開催された『COMITIA134』で頒布された番外編の『無愛想な先輩との日常』もkindle版が配信されています。

ここでは、まず単行本に収録されているケーキバイキング編を紹介します。

※参考記事 「安心感がすごい」「自分も頑張ろうと思えた」 イライラ空気が読めてツラい女子新入社員を心配する先輩マンガに共感多数
https://otajo.jp/93536 [リンク]

上司からペアチケットを譲ってもらい、実は甘いものが大好きな慈先輩とケーキバイキングに来た志野さん。空気が読める志野さんですが、それを読まずとも女子ばかりの中、スーツ姿の慈先輩が明らかに浮いているのが分かります。

真剣にケーキを選ぶあまり、眼力と圧がすごくなっている慈先輩。周囲から人に避けられてごめんちゃんが出ているのが見えて、志野さんは「中身は子鹿のように繊細な人なのに」と思い、努めて楽しんでもらおうと「先輩ほらあっち!チョコびしゃってなるやつありますよ!」とチョコレートファウンテンに誘導。わくわくちゃんになって、「よかった、喜んでくれてる」と安心した矢先に、「あのカップル、彼氏ずっと不機嫌じゃない。彼女かわいそうに」という陰口が耳に入ってしまい、「…んっ!?」と嫌な心臓の音がします。

「周り…は女性ばかりだし、ってことは。……落ち着け。先輩には聞こえてないかもしれないし」と自分に言い聞かせる志野さんですが、慈先輩の「いやなおもいさせてごめん」という空気が見えて……。思わず「あの……今日先輩と来られてよかった。すっっごく楽しいです!!」と周りにも聞こえるように言ってしまい、ざわざわとなったのに我に返ります。

テーブルで「…やっちゃった~~~~…」とずーんとなった志野さん。前に紅茶が置かれて、「飲み物取って行かなかったでしょ」という慈先輩に、「すいません、ありがとうございます!!」とお礼しつつさらに赤面。「いつぶりだろう、あんな感情的になるなんて」と思います。

空気が見えてしまう故に、波風を立てずに察することが染み付いてしまっている志野さん。慈先輩から照れちゃんが出ていて、「何してるんだろう私、先輩に恥ずかしい思いさせて…」と反省しているところに……。

「志野さん、さっきはありがとう。俺も志野さんと来られてよかったよ」と言う慈先輩。周りには照れちゃんとうれしいちゃんが……。それを見て、「察してほしいと訴える空気を読むたびに、少しずつ自分が削がれていく気がするのに」と思いながら、「ごはんでも、お茶でも、先輩と食べると美味しいですから」と言う志野さん。「先輩の周りの空気は、いつもただ優しく、私の気持ちと向き合ってくれる」と感じているのでした。

「心が暖まる」「癒やされた」「優しい言葉と気持ちに救われた」という声が寄せられていたこのケーキバイキング回。今回、鳥原さんに単行本刊行に合わせてお話をお聞きしました。

-- 『空気が読める新入社員と無愛想な先輩』のストーリーを思いつかれたきっかけは何だったのか、改めて教えてください。

鳥原習さん(以下、鳥原):去年の4月頃、街で新入社員の方たちを見かけて、初めて行く職場は緊張するよなあと思っていたのがきっかけでした。そこから、新しい出会う上司や先輩の気持ちがもし見えたら…など考え始めました。

-- Twitterなどで公開された際は、連載や単行本化を想定していらっしゃったのでしょうか?

鳥原:全然なかったです。思いついたらすぐ描きたくなるので、その日から描き始めて1、2日で仕上げて公開したと思います。タイムリーな内容ですし、新入社員の人の緊張がちょっとほぐれたらいいなあ、という感じでしたね。

--空気ちゃんはストーリーが進む上で種類が増えているように思います。これは志野さんがこれまで抑えていた感情がだんだん豊かになっていったからなのでしょうか?

鳥原:志野が感情豊かになっているというよりは、慈が志野と出会ったことでより感情の変化が複雑になって、新しい空気が出てきているのはあるかもしれません。あとは、志野に見えるすべての空気は描いていないので、マンガには描いていないけれど日常で見えている空気もまだあると思います。

--空気ちゃんのLINEスタンプの評判と、人気のあるものはどれなのか教えてください。

鳥原:ありがたいことに、日常でも使いやすいと言って頂けています! 作品タグと画面のキャプチャを上げてくださっている方も多くて楽しく見させて頂いています。特に使って頂いているのは「うれしい」「無言のうれしいちゃん」「死にかけ」「わくわく」あたりみたいです。私も、自分でもよく「死にかけ」「無言のうれしいちゃん」 を使っています。

--ご自身にとって、思い入れのある回を挙げるとすればどのエピソードになりますか?

鳥原:現在進行中のエピソードなのですが、志野が他部署のヘルプへ行く話です。新入社員である志野の成長に関する話なのですが、物語としてきれいな勧善懲悪にならなくても、会社組織のなんともいえない理不尽や言葉にできない空気感から来る「働く大変さ」としっかり向き合う話にしたいと思い、かなり悩みながら描きました。

--単行本で「ここを見てほしい!」というところはどこになりますか?

鳥原:描き下ろしの話では珍しく表情のある慈を描いたので(笑)、ぜひ見て頂けたらうれしいです!

--番外編の『無愛想な先輩との日常』の内容についても教えて下さい。

鳥原:番外編は、志野による慈の日常観察のような感じで、二人が出会った春からコミックス終了あたりの冬にかけてを描いています。せっかくなのでコミックスとは違うことをしようと思い、慈と空気がいる光景はカラーで収録しています。

--読者の方々へのメッセージをお願いします。

鳥原:たくさんの方に応援して頂けたおかげで、多くの書店さんや電子書店さんに置いて頂ける本を出すことができました。本当にありがとうございます……!

『空気が「読める」新入社員と無愛想な先輩』(ゼロサムオンライン)
https://online.ichijinsha.co.jp/zerosum/comic/kuuki [リンク]

いろんな「空気」たち(LINEスタンプ)
https://store.line.me/stickershop/product/12731845 [リンク]

※画像はTwitterより
https://twitter.com/t_rsa [リンク]

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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