【医師が解説】肩こりの原因と効果的な対処法とは
Q:ここ何年かずっと肩が重く、張っていて痛いです。この症状は肩こりでしょうか?
いわゆる「肩こり」の可能性があります。
肩こりの症状としては「こり」のほかに「痛み」や「重さ」「張り」「硬さ」「つかまれている感じ」「鉄板が入っている感覚」などがあります。
またこれらに続く症状として「頭痛」「吐気」「集中力低下」「目の疲れ」「倦怠感」「腕や手のしびれ」なども肩こりから生じる症状です。
肩こりはありふれている病気ですが、仕事の効率を低下させ、やる気の低下もつながるため、症状が強い場合は放置することは望ましくありません。
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Q:肩こりの症状が出る場所を教えてください
肩こり症状の出る場所ですが、肩甲骨の周りの筋肉に症状を持つ人が多いです。
肩甲骨周囲に位置する僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋、棘下筋、小円筋といった筋肉に症状が起きます。またそこから派生して後頭部や首、顔面の筋肉にも症状が出ることが多々あります。
Q:かれこれ5年以上肩こりに苦しんでいます。何か重大な病気になっているという可能性はありますか?
肩こり症状のように見えて重大な病気が隠れている、というような場合、まず挙げられるのは「脊柱管狭窄症」という病気です。この場合、肩のコリだけでなく、手に力が入らない、シャツのボタンがうまくかけられない、階段を降りるのが怖い、などの症状が伴います。これらの症状がある場合は調べてもらったほうが良いです。
そのほかに、「化膿性脊椎炎」という病気もあります。その場合は微熱が続いていたり、血液検査で炎症の強さを表す数字が高くなったりするため、血液検査でわかります。
もちろん、実際に診察をしないと判断しかねますので、上記のような重大な病気が隠れていることの心配があるようでしたら、総合病院などの内科や整形外科を受診してみることをお勧めします。
Q:肩こりのため毎週マッサージを受けています。その日は良いのですが、翌日には元に戻ってしまいます。マッサージは肩こりに有効ですか?
マッサージを受けるとその場では肩こりが良くなったように感じますが、翌日になるとまた元に戻ることがほとんどです。あるいは以前より強い症状が出ることすらあります(「もみ返し」などと呼ばれている)。
なぜかというと、マッサージは肩こりの原因を治療しているのではなく、「対症療法」であるからです。いったんその場では改善したように感じるのは「オフセット鎮痛」と呼ばれる現象が起きるからです。
このような理由からマッサージで肩こりは治癒するわけではありませんので、改善しないという人は、専門的な医療機関の受診を検討してください。
Q:肩こりで苦しんでいます。肩こりの原因は何ですか?
肩こりの原因は、肩甲骨の周りの筋肉が「腫れている」ことだと様々な研究から指摘されています。筋肉は密閉された袋の中にある組織で、筋上膜という包みの中に筋肉の組織があります。密閉された袋の中の内容物が腫れると、人間の身体は「こっている」として感じます。
ではなぜ腫れるのか?腫れる原因は一言でいうと「入り込んでくる液体の量が、出ていく液体の量を上回っている」と説明できます。
肩こりの患者さんでは、そうでない方に比べて、筋肉に異常な流入血管が増えていて、入り込んでくる血液が多いことがわかってきました。このために「腫れ」が生じていると指摘されています。
さらにこの異常な血管には神経も一緒になって増えており、この神経からも肩こりの症状が出ているという説も提唱され、これらの異常な血管を標的とした新しい治療も提供されています。
Q:肩こりがひどいのですが、やはりストレスが関係しているのでしょうか?
肩こりに限らず、「痛み」や「しびれ」などの身体の不快な感覚は、ストレスが少なからず関与しています。
といっても誤解してほしくないのは、ストレスがあるから肩こりが生じてしまうわけではない、ということです。そうではなくストレスは肩こりの症状を「増幅」させます。
人間には、痛みなどの不快な感覚をある程度遮断して、軽度の痛みであれば意識させないようにする働きがあります(下降抑制系と呼ばれています)。しかしこの働きはストレスがかかると弱まってしまいます。
ご自分の痛みとストレスとの関係を深く知りたい方は専門的な医療機関を受診してみてください。
Q:昔から肩こりがありましたが、最近は首をつかまれるような痛みや頭痛もしてきました。これも肩こりからくるのですか?どうしたら治りますか?
それらも肩こりの症状と考えられます。肩こりは首の付け根(ピップエレキバンの宣伝で紹介される位置。僧帽筋という筋肉があるところ)から症状が出ることが多いですが、状態が悪化すると後頭部の痛み、さらには顔の痛みなどが生じることがあります。また肩甲骨の内側や外側にも症状が広がることがあります。
筋肉の腫脹は、隣接する他の筋肉に伝搬し連鎖するようにできているようです。このため、僧帽筋という筋肉から生じた緊張が、周りの筋肉に波及してしまいます。顔の表情筋、側頭筋、後頭筋、また棘下筋や小円筋というような筋群に波及することで首の痛みや頭痛、あるいは顔の痛みやこわばりにつながります。
そのような場合の治療法は、大きく分けて二つです。一つは自分でできるエクササイズや生活習慣を変えること。もう一つは医療機関や治療院で受けることのできる治療となります。このあとにそのような治療についても記載していますので引き続き読んでみてください。
Q:肩こりに効く薬はありますか?
結論から申し上げると、これを飲めば肩こりが完全に治るというような特効薬は残念ながら今のところ存在していません。
しかし全員に効くわけではありませんが、効果を感じる人もいる、という飲み薬を紹介したいと思います。
一つは漢方薬の葛根湯(かっこんとう)です。風邪をひいたときに飲む薬ですが、実は肩こりにも効くと感じる人もいるようです。しかしあくまでも個人差があり全員には効きません。
また、ミオナールという薬剤は筋肉の緊張を緩める作用があるため肩こりに効くとされてきました。他には、痛み止めのカロナール、ロキソニン、トラマールもあります。しかしいずれの薬も副作用があるため長期間内服することはお勧めしません。また湿布も肩こりの症状をある程度和らげてくれる可能性はあります。
どうして「特効薬」ではないか?というとやはり対症療法になってしまっていて、肩こりの本当の原因にアプローチしていないからと言えます。
Q:肩こりの治療のために姿勢を良くしようと思っていますが、綺麗な姿勢をとりなさいと言われても、どうしていいかわかりません。どのように気を付けたらいいですか?
スマホをのぞき込む時やパソコンを凝視するときなどは、頭が前に突き出す姿勢になり、頭の重心が胴体より前に位置するようになります。すると前倒しになった重心を支えるために、首の付け根のあたり(後ろ側)の筋肉の緊張を高めなければならなくなり、肩こりが生じやすくなります。
悪い姿勢
そのような悪い姿勢になるのを防ぐのに意識するといいのが「胸骨」という骨です。のどぼとけを触り、指をまっすぐ下にずらしていくと、くぼみがあります。そのままさらに下に降りていくと胸の真ん中に触るのが胸骨です。
肩こりを改善させる良い姿勢は、この胸骨に天井からのびた糸がついていると想像して、その糸で胸骨を軽く上に上げるような意識を持つのが良いです。こうすると無理に胸を張りだすことにならずに綺麗な姿勢になります。肩回りの負担も少し減るのがわかるでしょうか?気づいたときに試すように心がけてみてください。
良い姿勢
専門のクリニックでは姿勢のプロフェッショナルが見てくれますので、チェックしてもらいたい人はぜひ受診してみてください。
Q:肩こりに効果的な対処法やストレッチ、体操などはありますか?
肩こりに対して自分でできる対処法としては、普段の生活からくる繰り返しの負担を軽減することが重要です。そのための簡単な体操をここでは紹介します。
今回は自宅で簡単にできるエクササイズ2つです。
1.肩甲骨を動かすエクササイズ
肩甲骨を内側に寄せ、その後、肩甲骨を背骨から離すように外に動かします。また、肩甲骨を回すように意識することで、肩甲骨に付着している僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋の緊張を下げことが可能です。1日5回程、行ってみてください。
2.背骨を伸ばすエクササイズ
座った姿勢をとり、両手を胸の高さまで上げます。(肩に痛みがある場合は、無理に上げないで下さい。)背中を丸めず、伸ばした状態で前方へ腕を伸ばし、ひっこめます。1回5秒ほど行い、1日5回してみて下さい。
Q:肩こりを解消する新しい治療はありませんか?教えてください。
最近になっていくつかの医療機関で肩こりの新しい治療を開発しようという取り組みがあります。ここでは二つを紹介します。
一つは「筋膜リリース」あるいは「ハイドロリリース」と呼ばれている注射の治療法です。
この注射は生理食塩水(人間の身体にとって自然な成分の水)を筋膜という筋肉と筋肉の間の隔てている結合組織のところに注入する治療法です。この治療は即時的な効果(すぐに効く)というメリットがあります。しかし効果が長続きしないというデメリットも指摘されています。効果の持続時間は5日間ほどです。このため良い状態を保つには繰り返し打たないといけません。
もう一つは「運動器カテーテル治療」という新しい治療です。
先ほどの記事でも述べていますが、肩こりの痛みの原因は「異常な血管とその周りに増えた神経」です。この痛みの原因にアプローチしないと重症の肩こりは治りません。
[文:オクノクリニック | モヤモヤ血管による慢性痛治療(https://okuno-y-clinic.com)]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
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