再稼働賛成派に聞きたいこと

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再稼働賛成派に聞きたいこと

今回はkamiyakenkyujoさんのブログ『紙屋研究所』からご寄稿いただきました。
※すべての画像が表示されない場合は、https://getnews.jp/archives/277998をごらんください。

再稼働賛成派に聞きたいこと

安全基準が厳しくなって、それで原発が止まったら仕方ないと思うの?

福島で原発事故が起きたので、安全規制が厳しくなることが予想されるよね。

その厳しくなった規制で、いまある原発がハネられたら、「経済のために原発を再稼働させるべきだ」という人は、「ルールにあわないんだったら、しゃあねーなー」と思うんだろうか。それとも、「カネがあってこそだろ。そんな厳しい規制は、ゆるめるべきだ」と主張するんだろうか。つまり法令に従うのか、法令をまげてしまうのか。

そんな法令などつくられない、とタカをくくっているんだろうか。

原発をつくったときにOKとかNGとかをだす、「審査指針」ってのがある。

法令上の強制性がないらしいんだけど、もともと原発の建設っていうのは、「国策」といわれるように、政治的・政策的判断なわけだよね。政治の側が「いいよ」って言えば電力会社は原発をつくれたし、「だめ」っていえば、止まってきた。実際には「いいよ」としか言わなかったわけだけど。

んで、いま原子力規制委員会って新組織がたちあがって、この見直しをやっている。

タテマエとしては、「福島の事故くらいものは想定して、それにも耐えられる原発の基準にする」っていうわけだ。

でも、福島の事故が原子炉にどんな影響を与えたのかは、よくわかってないんだよね。放射線量が高すぎて近づけないから。地震で炉や配管がダメになったんじゃないのか、っていう疑問には、各種の調査委員会は「たぶんよかったと思うんだけど、よくわかんないよね」という結論を出している。「だから今後ももっと調査した方がいいね」というふうに言っている調査委員会もある。

それを、「よくわかってないから、わかるまで基準づくりはできない」と受け取るのか、「問題があったという結論は出てないよね。じゃあ、まあだいたい今の耐震性でいいってことで、ここはひとつ」と受け取るのかで大きな違いが出てくる。ヌルヌルと逃げていける穴が小さく空いているのである。事故を起こした炉の中は「よくわかっていない」ことを幸いに。だから、けっこうな年月「わかっていない」ままになる。

福島の原発事故で「よくわかってしまっている」こと

ところが、「よくわかってしまっている」こともある。

炉の外のことはかなりわかってしまっている。

敷地との境界。この放射線量がどれくらいだったのか、なんていうことは、わかっちゃってるんだ。

その、福島の事故について「よくわかってしまっている」ことが、審査指針とぶち当たってしまう場合はどうなるのか。

この点で、11月7日の衆院経済産業委員会での共産党・吉井英勝の質問は、おそろしく鋭かった

原発で事故がおきたとき、原発は「放射線量が高くなって操作できなくなる」なんてことがあってはいけないことになっている。そうなると、東電の「撤退」の話みたくなってしまい、原子炉をだれもコントロールする人がいなくなり、原子炉がどんどん大変なことになって、炉が破裂するような最悪の自体になっちゃうからだ。まあ、もちろん、作業している人たちの健康を考えているわけだけどね。

だから、事故が起きたときでも原発の敷地内の放射線量が一定レベル以下に収まるように設計しないといけないのである。

これが国際放射線防護委員会(ICRP)で決まっていて、累積で100ミリシーベルト。日本ではこれは250ミリシーベルトまでゆるめてある。

これまでの審査指針っていうのは、「事故なんか起きるわけねーだろwwww」っていう思想でつくられているので、この基準をクリアしていた。

「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針について」 1990年08月30日 『文部科学省』
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19900830003/t19900830003.html

ところが、福島の事故が起きてしまったので、「福島のような事故は起こりうる」という思想で考え直すことが最低限求められることになる。

そうなると、どうなるのか。

福島の事故では、原発の敷地と外の境目の線量が、100ミリシーベルトどころか、1年で956ミリシーベルトになってしまっていたのである。では100ミリシーベルにまで落ちる地点はどこかと見ていくと、なんと原発から10キロメートルも離れたところでもまだダメなのである。10キロ離れていても、1週間で100ミリシーベルトをこえている。

原発の敷地を30キロメートルくらいまで広げるしかない……。

「既存原発すべて不適合/放射性物質拡散予測 吉井議員が追及/衆院経産委」 2012年11月8日 『しんぶん赤旗』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-11-08/2012110802_03_0.html

さて、じゃあ、福島クラスの事故が起きるとして、この基準で日本にある原発を見直すと一体どうなってしまうのか。

実は、日本にある既存原発がすべて「不適合」になってしまうのである。

これは、いかにも共産党らしい、理屈に満ちた追及の仕方で、質問された方は、逃れようがなかった。「一般論としてはご指摘のとおり」「大変納得できる質問」と言わざるを得なかったのである。原子力規制委員会の田中委員長は「バックフィット規定も含めまして今検討させていただいています」、つまり、いまある原発に対して、さかのぼって新ルールではかってみる、と答弁した。さらに、「基準を満たすように、満たさないものは動かさない、動かせないという判断をしていくことになろうかと思っております」と答えさせている。

まさに「詰み」になった追及型の質問で、これくらい鮮やかに詰んでいる質問というのは、なかなか無い。もったいないので、該当部分を議事録から全部紹介したい(冗長と思う人は、以下の議事録を飛ばしてもらっても構わない)。

○吉井委員
日本共産党の吉井英勝です。

原子力規制委員会は、十月二十四日に、全国十六サイトの原発で重大事故が発生したときの放射性物質拡散予測結果を公表しました。既にお話がありましたように、何度かの訂正も行われましたが、要するに放射性物質の拡散予測というのを出されたので、私も読ませていただきました。

この問題について触れる前に、この重大事故時の拡散の中で、実は福島第一原発による昨年三・一一からの三週間分はデータがないということでおいてあるんですが、四月一日からことしの三月三十一日までの丸一年間については、累積放射線量が、去る六月五日の衆議院環境委員会で、私の質問に対して当時の原子力安全・保安院より、最大九百五十六ミリシーベルトに達したということが明らかにされました。

このとき、班目春樹原子力安全委員長は、現行の立地審査指針では敷地境界で全身に対し二百五十ミリシーベルトとしているが、実際には百ミリシーベルトという検討のままで来た値を実質的に現在の審査の目安の値としていると答弁されました。この百ミリシーベルトというのは、実際には二〇〇七年のICRPの勧告に基づくものだと思うんです。

ですから、全体の基準の見直しは来年の七月にしても、少なくとも立地審査指針の中で敷地境界の値については百ミリシーベルトにということは中間報告等で繰り返し出ているわけですから、速やかにまず改定を行われるべきだと思うんですが、これを最初に田中委員長に伺っておきます。

○田中政府参考人
現在、御指摘の立地指針全体も含めまして、考え方を検討しております。その中で、今までですと、先生御存じのように、重大事故とか仮想事故とかということ、それから放出割合とかということを想定してきたわけですが、その妥当性についても見直しを図ってきております。

今、二百五十ミリというのを百ミリにすべきということですが、これは国際的にも、今御指摘のようにICRPもそういうふうな考え方を出していますので、そこが基本になると私は思っております。具体的には、これから全体的な検討の中でそこはきちっと見直させていただきたいと思っております。

○吉井委員
ですから、全体的にはこれから見直すにしても、敷地境界については既にICRPが勧告を出している百ミリシーベルトということで、きちんと早く線量を示しておく、このことがまず大事なことというふうに思うわけです。

それで、福島第一では最も放射性物質の放出量の多かった三・一一からの約三週間分のデータはないということなんですが、今回のシミュレーションは、放出量を事故から一週間分について試算すると、十六のサイト全部で、百ミリシーベルトを超えているのが十キロを超えているわけですね。ですから、やはり敷地境界の基準をきちんとして、そして百ミリシーベルトが十キロメートルを超えているというものについては一体どうするのかということを、それこそ他の全体の指針の見直し、基準の見直しの中ではお考えになるべき話になると思いますから、それは七月までというのはよくわかるんですが、そこのところをまずきちんとしなきゃいけないと思うんです。

ところで、今回の重大事故時の放射性物質の拡散予測によると、全ての原発で十キロ以遠に及んでいるんですが、公開された放射性物質の拡散予測において、十六のサイトで、それぞれの敷地境界での一週間の放射線量、敷地境界では幾らなのか。百ミリが十キロのところはどこだという地図はあるんですけれども、そもそも敷地境界では幾らであったかというのが示されておりませんから、これを伺っておきたいのと、そこでの累積の年間放射線量は幾らになるのか。

福島では、昨年四月一日からことし三月三十一日までで最大で九百五十六ミリシーベルト。ですから、恐らく三週間分を足して、基準の約十倍をはるかに超える分を放出しているわけですが、一年間の放射線量は幾らになるのか。やはりこれは今明らかにしていただく必要があると思うんですが、これを伺っておきたいと思います。

○田中政府参考人
大変私も納得できる御質問だと私は思っております。

今回のシミュレーションは福島の事故を模擬した放出量でやっておりますけれども、ああいった放出量を仮定しなければいけないようであると、御指摘のように、原子炉を動かすということはなかなか困難だろうと思います。

そういうことにならないために、今回の事故を踏まえて環境への放射能放出量を防ぐためにどうすべきかということを、バックフィット規定も含めまして今検討させていただいています。ですから、そういったことを踏まえて、実際の原子炉の今後の稼働についてはきちっとした安全評価をしていきたい、そんなふうに思っています。

ですから、今回のシミュレーションありきということでの原子炉の稼働は、私はあり得ないというふうに思っています。これは私自身の考えですけれども、そういうふうに思っております。

○吉井委員
一週間の積算線量、敷地のところ、それから、年間の積算線量についてはお答えがありませんから、多分まだ計算中ということなんでしょうが、それは速やかにコンピューターをはじいて示していただきたいと思います。

それで、福島の重大事故を想定すると、原発敷地境界では、立地審査指針の線量目安である百ミリシーベルトを大きく超えているわけです、十キロ以遠があるわけですから。そうすると、日本の原発というのは、現状ではこれまでの審査指針には不適合ということになると思うんです。先ほどのお答えを伺いながら、大体そういう趣旨のことかなと思いましたが、重ねて伺っておきたいと思います。

○田中政府参考人
一般論としては御指摘のとおりですけれども、原子炉それぞれに安全装置も随分違っておりますし、いろいろな立地条件も違いますので、それについては個々に一つ一つ点検させていただきまして、基準を満たすように、満たさないものは動かさない、動かせないという判断をしていくことになろうかと思っております。

○吉井委員
一般論としてはということですが、個々に機器の違いはあるにしても、今、敷地境界百ミリシーベルトということでいきますと、日本の原発は全て、現状では審査指針に不適合という事態にあることだけは申し上げておきたいと思います。

(議事録より。強調は引用者)

大事故は「10年に1回」起きる

福島レベルの事故を想定する、っていうのは、福島の事故が起きてしまったので、そういう想定をすることが「現実的」になってしまったのである。だって「現実」に起きた事故だもの。

そして、確率的にも、現実的になってしまったという、ものすごさ。

それまで電力会社っていうのは「事故は1000万年に1回」って言ってればよかった。

「原発事故確率 現実離れ 電力会社「1000万年に1回」」 2012年7月4日 『東京新聞』
http://megalodon.jp/2012-0705-1602-43/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012070490070451.html

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