「帰るわけにはいかない…」 外国人技能実習生が日本で稼げなくなったら“やること” これが『先進国』の姿なのだろうか

数年前から外国人技能実習生の失踪が大きな社会問題となっています。失踪する実習生の人数は毎年数千人にのぼります。失踪の理由は様々ですが、不満を抱えて受け入れ先の企業から逃げ出してしまう実習生は後をたちません。
彼らのうちの多くは「お金を稼ぐため」に技能実習生となる道を選びました。母国で仕事がなかったり、家族を養うのに充分な賃金を得られなかったり、一人一人が個別の事情を抱えています。
日本で数年間働いてお金を稼げば…そんな希望を抱いて言葉も文化も違う異国へとやって来るのです。
その希望が打ち砕かれ絶望に変わった時、「失踪」という選択肢を選んでしまう者もいます。
先日、そんな失踪技能実習生のオーバーステイ裁判を傍聴してきました。被告人はオーバーステイだけでなく、逮捕当時には偽造在留カードも所持していました。もちろんどちらも犯罪です。法によって裁かれなければなりません。ただ、傍聴をしていて疑問に思ったことがあります。
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彼が犯した罪は何なのだろう…?
中国人の張浩然(仮名、裁判当時26歳)が来日したのは平成27年11月のことでした。大阪府にある水産加工会社で技能実習生として働くためです。在留期限は平成30年の11月まででした。
「日本人の社長が中国に来て『自分の会社に来れば仕事がある。稼げる』と話していました。それを聞いて日本に行こうと思いました」
こうして彼は数名の中国人とともに来日しました。
会社の寮で暮らしながら日本での生活が始まりましたが、それは以前に聞いていた話と違うものでした。
「仕事があまりなくて…残業もなかったのでほとんどお金を稼ぐことはできませんでした」
彼が日本に来た時点で、会社の経営はかなり危ないものになっていたようです。
そして平成29年12月、この会社は倒産しました。受け入れ先企業がなくなれば技能実習生たちは日本にいる資格を失います。
「実習生は全員、ただちに帰国するように」
そう宣告されました。
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彼はお金を稼ぐために日本に来ました。
貧しい家に生まれ育った彼に学歴はありません。帰国しても仕事に就けるかどうかわかりません。貧困の中で厳しい生活を強いられている両親と姉のためにも、彼はお金を稼がなければいけなかったのです。
突然「帰れ」と言われて帰れるはずがありません。
実習生として共に働いていた同僚たちにもそれぞれ帰れない理由がありました。
結局、この寮で生活していた実習生のうちの半数近くが失踪しました。
帰れるはずがない
寮から逃げ出した後、彼は大阪の簡易宿泊所で寝泊まりをしながら引っ越しや建築現場など日雇い仕事を転々とするようになりました。
もちろんそんな不安定な就労形態で充分なお金を稼ぐことなどできません。食べていくだけで精一杯でした。
こんなはずじゃなかった…。
そんな想いが何度も頭をよぎりました。
ただ家族を幸せにしたくて、ただ幸せになりたくて、それで日本に来たはずでした。しかし思い描いていた未来と現実はあまりにもかけ離れていました。それでも彼は入管に出頭するなど帰国するために動くことはしませんでした。できませんでした。
その後、彼はSNS上で中国人のコミュニティーを見つけました。そこで知り合った中国人が仕事を紹介してくれると同時に偽造在留カードも作成してくれました
このカードを持って上京し仕事の面接を受けた際に、偽造であることが見抜かれて彼は逮捕されました。逮捕された日付は令和2年5月です。約1年半のオーバーステイでした。
彼が法を侵したことは事実です。
しかし、彼が「罪」を犯したとは私にはとても思えません。
最後に紹介しますが、厚生労働相HPによると
「外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的としております」
ということです。(取材・文◎鈴木孔明)
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TABLOとは アメリカが生んだ、偉大な古典ミステリーの大家レイモンド・チャンドラー作品の主人公フィリップ・マーロウの有名なセリフがあります。 「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」 人が生きていく上で、「優しさ」こそ最も大切なものであることを端的に表現した言葉です。優しさとは「人を思いやる気持ち」であり「想像力を働かせること」です。弱者の立場に立つ想像力。 「人に優しく」 これは報道する側にも言えることだと思います。 現在、ヘイトニュース、ヘイト発言、フェイクニュースがネットの普及に従い、増大しており、報道関係者の間では深刻な問題となっています。そこには「人に優しく」という考えが存在していません。 なぜ、ヘイト(差別)ニュースがはびこるのか。「相手はどういう感情を抱くのか」という想像力の欠如がなせる業です。ヘイトによって、人は人に憎悪し、戦争が起き、傷ましい結果をもたらし、人類は反省し、「差別をしてはならない」ということを学んだはずです。 しかし、またもヘイトニュースがはびこる世の中になっています。人種差別だけではありません、LGBT差別、女性差別、職業差別等々、依然としてなくなっていないのだな、ということは心ある人ならネットの言論にはびこっていることに気づいているはずです。本サイトはこのヘイトに対して徹頭徹尾、対峙するものです。
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