発達障害を抱える著者が試行錯誤の末に手に入れた「人生を生きやすくするための生活術」を徹底紹介
「大人の発達障害」という言葉がよく聞かれるようになった昨今。脳内の情報処理や制御に偏りが生じることから、日常生活に支障をきたしたり生きづらさを感じたりする人が多くいるのです。
もしそうした状況に陥り、「みんなが当たり前にできていることがうまくできない」と思い悩んだときに読んでみてほしいのが『発達障害サバイバルガイド 「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』です。本書では、日々の習慣、お金、仕事、人間関係、衣食住など発達障害者の困りごとを回避するためのハックが紹介されています。
著者の「借金玉」さんは30代半ばの男性で、実は自身も発達障害を抱えているそうです。幼少期から社会に適応できず、小学校、中学校では不登校になりました。早稲田大学卒業後は大手金融機関に就職しますが、仕事ができずに2年で退職。今度は自分で起業したものの事業破綻を迎え、多額の借金を抱えてしまいました。それを機にTwitterで「借金玉」と名乗るようになったといいます。現在は、たまにうつで働けなくなりながらも、不動産営業とライター・作家をしながらなんとか生活できているそうです。
そんな「やらかし経験の数とバラエティには自信がある」という著者が、「一人の発達障害者としての僕が、少しでもまともな生活を手に入れるために重ねてきた工夫をみなさんと分かち合いたい」(本書より)との思いをもとに執筆したのが本書です。「発達障害という問題を抱えた僕らがどうにか働き、食っていくための『生活術』」(本書より)がこの一冊にまとめられています。
たとえばCAHPTER1のテーマは、発達障害者にとってたいへん重要な「生活環境」。ここでは、食洗機や寝具、机とイスなど、著者の人生を飛躍的によくしてくれたという5つのアイテムが紹介されています。人生をよくするのは「努力」ではなく「設備投資」であり、具体的なモノこそが生活の苦痛を取り除いてくれると著者は記します。
このほか、お金については「乏しい収入で生活を維持する」、日々の生活習慣については「やるべきことに取り掛かるためのハードルを下げる」、料理については「レシピを覚えるのではなく料理の基本ルールを理解する」などが大原則として出てきます。どれもけっして高い目標設定はされておらず、無理なく労力や時間を削減することで、少しでも毎日を快適に過ごせるような知恵や工夫ばかりです。
著者は「発達障害を『治す』のはあまり現実的ではありません」(本書より)と言います。そして、「となれば、障害を抱えたまま人生をうまくやっていくためのノウハウをつくりだしていく以外に、結局のところ選べる道はない」(本書より)と続けます。
その言葉のとおり、自分を変えて無理に社会に適応するのではなく、やり方や道具、環境を変えることで社会と折り合いをつけていこうというのが本書のスタイルです。自身も発達障害を抱え、何度もどん底に陥りながら体得してきた生活術の数々は、同じ特性を持つ人たちにとって非常に役立つ知識でしょう。日々生きづらさを感じている人のための実践書として、多くの人におすすめしたい一冊です。
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