「こだわり」は同質化している

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「こだわり」は同質化している

今回は南充浩さんのブログ『南充浩の繊維産業ブログ』からご寄稿いただきました。

「こだわり」は同質化している

ジーンズ続きで恐縮だが、多くのジーンズブランドの謳い文句に「こだわった素材」「こだわった洗い加工」「こだわったインディゴ染め」などというものがある。正直、「こだわった○○」というのは珍しくもなんともないありふれた口上と化している。

さて、元来「こだわる(拘る)」という言葉はマイナスの意味合いが強い。

大辞林によると、

〈旧習に〉泥(なず)む 〈先入観に〉捉(とら)われる 気にする 気に掛ける 拘泥 固執 執着

 
とある。
決してプラス志向の言葉ではない。

言葉というものは時代によって変化するので、最近では「こだわる」ということがプラスの意味合いに変化しつつあることがわかる。

閑話休題

「こだわった○○を使ったジーンズ」という口上は、おそらく20年くらい前なら消費者にインパクトを与えただろう。
しかしこれだけ「こだわりブランド」が林立すると、消費者にはまったく何の印象も与えない。
「こだわって作ってるのね。ハイハイ」。そんな感じである。

言ってしまえば「こだわる」のは当たり前。そこにプラスアルファが必要なのだが、数あるジーンズブランドを見渡す限り、そのプラスアルファを打ち出せているところはほとんどない。皆無に等しい印象を持っている。
以下に引用する。

同質化が一番の問題*1

例えばレストランでこういう表現をよく見ますよね?

「自然素材にこだわったイタリアンレストランです」
「イタリアで修行したシェフが素材にこだわって料理するレストランです」
「厳選されたワインが自慢の新鮮な食材にこだわったレストランです」

こんな言葉はもう使い古されている。
こんなどこにでもあるような言葉を使っていると、なかなか伝わりません。
革命的じゃない。

「素材にこだわる」なんて、今は当たり前になっています。
昔は、「素材にこだわる」というだけで価値があったけれど、今はこだわりだけではなかなか・・・。
こだわるなら、こいつはおかしいんじゃないか? というぐらいこだわらないとダメです。

みんなが使っている言葉はなるべく使わないようにして、

もっと届く言葉はないかな?
インパクトのある言葉はないかな?
伝わる言葉はないかな?

そういうふうに考えていくことです。

北海道のチーズの例を良く出します。
10年くらい前までは、小さな牧場、例えばトンデンファームのこだわりのチーズなどというのがすごく売れていました。
そういうものが少なかったから。

ところが、今行ってみてください。
おみやげ屋さんに行くと、小さいな牧場のこだわったチーズだけで何十種類もある。

花畑牧場から始まって、ずらーっと。
みんなこだわっているんです。
だから、こだわりだけではダメなんです。

そうじゃなくて、もっともっとそこにいろんなものを付加していかなければいけない。
それは、もしかしたらあなたの個人の情報かもしれない。
個人の魅力かもしれない。
あるいは、あなたの会社の何かの魅力。

みんなが使っている言葉は使わないということはすごく重要です。

*1 : 「コンサルタント藤村正宏のエクスマブログ」 2012年11月8日 『同質化が一番の問題』
http://ameblo.jp/ex-ma11091520sukotto/entry-11398347888.html

とのことである。

繰り返すが「こだわったジーンズ」という口上はひどく同質化している。
例えばユニクロの3990円のジーンズだって十分にこだわっている。
使用素材はすべてカイハラによる国内製造だし、クオリティの割には価格が安い。
だから使用素材とコストパフォーマンスに「こだわった」逸品ですと言えなくもない。

じゃあ数ある自称「こだわりジーンズブランド」はこのユニクロの「こだわり」を越える価値を提供できているのだろうか?筆者にはあまりできているとは思えない。

各ジーンズブランドはそこを見つめ直さないと、いつまでもSPAブランドや海外インポートブランドにやられっぱなしになると思うのだが。

執筆: この記事は今回は南充浩さんのブログ『南充浩の繊維産業ブログ』からご寄稿いただきました。

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