「鬼才」ジャスミン・ギュ先生インタビュー 異色のマッサージギャグ漫画連載中

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「鬼才」ジャスミン・ギュ先生インタビュー 異色のマッサージギャグ漫画連載中

衝撃の登場から早、2年。『バックストリートガールズ』は世の中の漫画愛好家に衝撃を与えました。ストーリーは、下手を打った若手ヤクザ3人が親分に命令されて性転換手術を受け、アイドル「ゴクドルズ」として活動。落とし前をつけろ、というわけです。このぶっ飛んだ設定に読者もざわつきました。

そして第二弾が早くも始動。タイトルは『ケンシロウによろしく』。両親をヤクザに殺された主人公・沼倉は復讐を図ります。その為に『北斗の拳』を読み漁り、身体を鍛えついに敵を討つチャンスに恵まれますが、漫画で培った技は全く効かず惨敗。そこで気功を覚えて、再び沼倉の復讐が始まるのでした――。

 

●「マッサージ漫画に料理漫画的要素を入れたら面白いと思って」

――単行本、第一巻発売、おめでとうございます。クスクス笑いながら読ませて頂きました。『ケンシロウによろしく』の発想はどこから生まれたんですか?

「ありがとうございます! 最初は普通のマッサージギャグ漫画を描こうと思っていたんです。街中にマッサージ屋さん多いじゃないですか。でもマッサージ漫画ってあまりないなーと思って」

――マッサージ漫画!? それは確かに他には無いですよね(笑)

「商業誌の健全なマッサージ漫画はあまりないですよね。私がマッサージ大好きなんで描いてみようと思いました。ただ、マッサージ漫画だけだったら食いつきが良くないと思って、設定を考えていってという感じですね」

――『北斗の拳』のアイディアはひらめきですか?

「ひらめきですね。マッサージ、指圧、ツボを組み合わせてどうやったら面白くなるかなとずーっと考えていて」

――アイディアはどういう時に思いつくんですか?

「カフェとかでひたすら絞り出す感じです(笑)」

――根詰めるタイプですか。

「漫画家さんによっては作画しながら次のストーリーを考える先生もいるみたいですけど。私は同時に出来ないんですよね……」

――前回の『バックストリートガールズ』から次回の構想みたいのはあったのですか。

「いや、まったく無かったです。しばらく休んで担当さんから『次の漫画、何にしましょう』って言われて。色んな案を提案したんです。その中でマッサージをテーマにしたものが面白そうだって(笑)。マッサージ漫画を料理漫画っぽく描いたら面白いんじゃなかという話になりまして。料理漫画ってバックにイメージショットを入れたりするじゃないですか」

――前作はヤクザが出てくるじゃないですか。今回も出てくるじゃないですか。ヤクザが好きなんですか?(笑)

「いえいえ(笑)。描くのは好きですね。好きっていうか、ギャグ漫画の素材として扱いやすいというのはありますね」

――確かに。ヤクザが登場してくる漫画は多いですよね。『北斗の拳』は元々ファンだったのですか?

「子供のころから好きでした。昔読んだので、そんなに詳しくは覚えていなかったので、これを描く前に読み返しました。やっぱり最高ですよね……。それと、ツボの勉強も凄いしました(笑)」

――ツボがけっこう、詳しく描かれているんですよねぇ。

「『北斗の拳』にツボは欠かせませんから」

――主人公の「沼倉」もケンシロウに似ていますよね。

「はい。ケンシロウになろうと頑張っている奴なんで(笑)」

――因みに、『北斗の拳』で好きなキャラクターは誰ですか?

「ケンシロウです」

――僕は雲のジュウザなんですが、それは置いておいてどのあたりが好きですか?

「シンプルにカッコいい(笑)」

 

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――で、武論尊先生、原哲夫先生に許可を得た、と。単行本では原哲夫先生に帯まで書いて頂いて。心が広い方ですね。

「そうですね。本当にありがたいです。『ふざけんな』って怒られてもおかしくないのに(苦笑)」

――色々、サブキャラが出てきます。美女のお弟子さんとか、ヤクザ専門の編集者とか。それは描いていて出てくるものですか。

「最初にヒロインは登場させようと思っていたんでけど、担当さんと打合せしていてもうちょっと、漫画に大きな軸をつけて欲しいという事で、恋愛と復讐というエッセンスを混ぜました」

――恋愛感情を抱いている訳ですよね。

「まだ恋愛まで行っていないですね。尊敬ですね。今は」

――それはストーリーが進んでいくにつれて変わっていくかもしれませんものね。「久田圭子」さんという編集者のモデルは……。

「それは完全に久田さん(インタビュアー)です(笑)」

――「久田」が勤めている雑誌が「週刊 悪」というネーミングがいいですよね。

「あ。逆に久田さんに取材したかったんですが(笑)。そもそもヤクザと編集者は仲良くなれるものなんですか?」

――ケースバイケースですけど、仲良くなる編集者はいますね。人によります。あと、取材先はマッサージ屋さんに、ですよね。

「はい。最初は色んな指圧の専門書籍を読んで勉強して、普通にマッサージを受けに行ってました。取材とは言わずに」

――何件くらい行ったんですか。

「普通に受けに行ったのは10何件ですかね。もちろんちゃんと取材をした事もあります。国家資格を持っている指圧師の所で施設の雰囲気や、担当さんにマッサージを受けてもらいながら色んな話をお聞きしました」

●「この作品は半分ヒューマンストーリーとして描いています」

――話が戻りますけど、ヤクザが漫画に登場するとインパクトはありますよね。

「そうですね。ただこの漫画に出てくるヤクザって出し過ぎたら軸がぶれるおそれがあるのでそんなには出したくないんですよね」

――前作は完全に……。

「『ゴクドルズ』でしたから(笑)」

――連載終わってから、二年くらい経ちましたか。

「その間は映画とかドラマとかあったんで二年経ちましたけど、休んでいるという感覚はあまりなかったです」

――NETFLIXでも『バックストリートガールズ』は見られますからね。自分の体験を漫画にする、例えばヤンキー漫画やスポーツ漫画はそうだと思うのですが、ギャグ漫画って素人目に見て、難しいような気がするのですが、苦労などありますか?

「逆に体験の話を描くのが苦手なんです。自分の体験て面白いのかと思っちゃうので……」

――ギャグの作り出し方って参考にしているものってありますか?

「デビューしてからは参考にしているものはないですね。昔はお笑い番組とか漫才が大好きでずっと見てました。プロになってからも普通に見てはいますけど、影響されたらちょっと怖いので研究したりはしないですね」

――バーとかで飲んでいると、面白いお客さんとかを観察するとかはないですか?

「あんまり意識して観察はしてないです。それより一番困るのが『面白い話があるんだけど使ってよ』ていう人(笑)」

――定番ですね。ところで最近、ツイートを始められましたね。

「酔った勢いで唐突に……。新作の宣伝も兼ねてですけど」

――結構、漫画家さんでツイートされている方いらっしゃいますものね。

「仲の良い漫画家さんはほとんどやっていますね」

 

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――今は調子は?

「『ケンシロウによろしく』は完全なギャグ漫画ではないので。ちょっと自分としては新しい挑戦なので色々とストレスになる事はあります」

――では、ギャグとヒューマニティの要素を入れているのですね。

「そうです。この作品は半分、ヒューマンストーリーのつもりで描いています。でもずっとぶっ飛んだギャグ漫画を描いていて暴走しがちなんですよ。悩ましい所です。もっとヒューマン要素を入れて行きたいですね。まぁたまに暴走してもそれを『味』だと思っていただけたら幸いです」

●「ホラー好きでジャケ買いした人はごめんなさい(笑)」

――漫画家になるまでのプロセスを教えてください。

「京都精華大学でストーリー漫画学科を卒業して東京に出てきました。で、東京工芸大学の研究生だったんですけどその時に講師に来ていた人がヤンマガの人で、新人賞に応募してみないか、という事で応募して賞を取ったのがきっかけです」

――それがプロデビューですか?

「はい。短期連載でした」

――アシスタント経験もあったんですよね。

「『怨み屋本舗』の栗原正尚先生の元でやっていました」

――で、『バックストリートガールズ』で長期連載と。

「そうです」

――そう言えば、その時にジャスミン先生に『ヤクザを漫画にして怒られませんか』と僕に聞かれた事があります。

「ああ、そうでしたね(笑)」

――特定しなければ大丈夫ですよ、あの業界は。ギャグ漫画に対して怒るような人はあまりいないですね。

「そうですね。しかもヤクザが性転換してアイドルになるって……。リアルさゼロの漫画に怒るわけないですよね」

――作画で難しい事ってありますか?

「女性キャラは難しいですね。あと、指圧とは言っても医療にあたる所もあるので気をつけないと、と思っています」

――『バックストリートガールズ』のヒットで生活が変わったりしました?

「いやあ。ほとんと変わってないです。食べたいものが食べられるだけでいいと思っているので(笑)」

――お酒は大丈夫ですか? 以前、夜中に居酒屋に呼び出された事がありましたけど。

「ははは。あの時は本当にすみませんでした(苦笑)。確か、うちのスタッフと悩み相談で飲んでいて……。自分より人生経験豊富な方に相談してみる? という流れでしたね……。今は控えています(笑)」

――飲みすぎには是非気を付けて頂いて、作品を描いていって皆さんを楽しませてください。今度の展開を読者の皆さんに。

「『ケンシロウによろしく』は主人公『沼倉』の人間的な成長の物語なんですけど、復讐もありますし、恋愛になるかも知れません。いくつかのストーリーが重なっているのでだんだん面白くなると思います。もちろん基本はマッサージギャグ漫画なので気軽に楽しんでいただければ幸いです。……この単行本の表紙を見たらちょっとホラー漫画っぽいじゃないですか。ホラー好きな人はジャケ買いしないでくださいね(笑)」

※『バックストリートガールズ』での『ゴクドルズ』にハマった読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。あの衝撃の長期連載デビューから二年。『ケンシロウによろしく』でもジャスミン先生の世界観は見られます。『ケンシロウによろしく』をよろしくです。(文・久田将義)

 

参考記事:ケンカ最強の漫画家は誰だ!? 一位はヤンキー漫画の代表作を描いた、あの先生! 常に「武器になるモノを確認」する武闘派? | TABLO

 


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