VR能『攻殻機動隊』伝統芸能×最新技術の融合 減算による演出で現実と電脳空間の境目があやふやになる?

人気SF作品『攻殻機動隊』×伝統芸能「能」×VRが融合する未知の舞台作品、VR能『攻殻機動隊』が2020年8月21日(金)~23日(日)に上演されます。

VR能とは、日本の伝統芸能「能」と様々な最先端技術が融合し、世界初のVRメガネなしで仮想現実空間を再現し上演される能舞台。日本が世界に誇るSF漫画の最高傑作である『攻殻機動隊』を能で表現します。

演出は舞台『ペルソナ』シリーズや舞台版『攻殻機動隊ARISE』、AKB版『仁義なき戦い』など数々の実現不可能と思われる企画を成功させてきた映画監督、奥秀太郎氏。脚本は『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』や『BLOOD』シリーズなどの脚本で知られる藤咲淳一氏。

映像技術は舞台版『攻殻機動隊ARISE』、3D能シリーズなどで日本初の舞台での3D映像を開発してきた福地健太郎氏(明治大学教授)。VR技術は国内のVR研究での第一人者、稲見昌彦氏(東京大学教授)。いずれも各分野での最先端を駆け抜ける第一人者が担当。

さらに、出演は坂口貴信さん、川口晃平さん、谷本健吾さん等、実力・知名度ともに現在の能のシーンを牽引する観世流能楽師。世界初・本邦初の様々な技術と日本の伝統芸能の先鋒とが高次元なレベルで融合し、攻殻機動隊の世界を再現した舞台芸術の未来を創ります。

3月にはメディ向けに5分ほどのプレ上演を実施。能楽師の坂口貴信さん、川口晃平さん、谷本健吾さん、大島輝久さん、福地健太郎さん(明治大学教授)、稲見昌彦さん(東京大学教授)と奥秀太郎監督が登壇しました。

1人1人の脳内で想像していたものがVR演出によって共有できるものへ

以前上演された3Dメガネをかけ鑑賞する「3D能」から福地教授、稲見教授と一緒に創り上げている坂口さんは、「能というものは非常に想像力に頼っているところがございますので、(3D能を作るときから)現代の技術でみなさまにわかりやすくお伝えすることができないか、というようなことをご相談させていただきました。今回はその枠を越えて、作品を新たに作る。その作品も古典のものではなくて、『攻殻機動隊』という世界的に有名なアニメに取り組むということで、非常に私としては新しい挑戦だと思っております」と述べました。

大島さんは「私達の伝統芸能というのは、かなり様式があって、やることや歌うこと、舞の動きなどもかなり厳密に決まっていて、制約がものすごく多い中で、それを自分たちの身体に落とし込んでいく。こういった完全な新作というのは、そういった制約が一切ない中で、自分たちで新しいものを作り出していくという作業になろうかと思います。舞台装置、衣装などすべて新しいものをやるというのは我々にとっては未知の経験。普段あまり自分たちがやっていない分野でこの同世代の力を合わせて、新しいものを創造していくということに大きなチャレンジだなと感じています」と意気込みを伺わせます。

川口さんも「過去に2度ほど3D能ではプロジェクションマッピングの中で舞わせていただいて。今回は、より先鋭的な表現が楽しみになっています。お能というのは、やはりイマジネーションを働かせてご覧になるものなんですね。本当に1人1人の脳みその中で描かれる世界というのを、VR演出によって一度にみなさんで共有できるということで、斬新な試みだなと思います」と笑顔をみせました。

現実と仮想空間が渾然一体となるVR……減算による演出“ゴーストグラム”誕生

VRと能を融合させようと思ったきっかけについて尋ねられた奥監督は、「草薙素子は脳しか残らず義体の身体、サイボーグとして様々な身体に乗り移っていく。こういった原作のモチーフが現在のテクノロジーと、そして日本の伝統芸能である能の世界観と非常に親和するのではないか。また『攻殻機動隊』のファンにとっても原作の世界観を最も表現するのが能との組み合わせではないのか、とある日思いまして、こうして実現する運びとなり入れしく思っております」と想いを語りました。

過去に上演された「3D能」は能面型の3Dメガネをお客さんにかけてもらい、3D映像と能を組み合わせてシーンを説明するなど、よりわかりやくしていたと言います。「VR能」は、よりヴァージョンアップを図り、「何かを説明するという以上に観た方にイメージをより膨らませていただく。観た方それぞれによって過去であったり未来であったりがイメージされるようなまったく新しい映像の使い方をしていけないものか」と考えているとのこと。

福地教授は、「3D能をご一緒してきて、毎回無理難題をどうやって映像技術で解決するかというところで、ずっと取り組んで参りました。今回VRをやりたいんだけど、でもお客さんにメガネを掛けさせたくないと言われて、さあ困ったぞ、というところからの出発でして。よく稲見先生が、『現実に何か作り出すとか重ねるだけじゃなくて、現実から何かを引いていく減算による演出がもう少し注目されて然るべきではないか』ということをずっとおっしゃっていて。今回はこれで行こうかな、と思ったのが、映像装置全体の設計のひとつのヒントになっています。

加えて、3D能で能に映像を付け足すということにずっと取り組んでいたんですが、いわば能って舞台上から余計なものを減らしていって進んできている部分もあるので、いよいよ我々もこの引き算に参加してみたいな、という1つ僕の勝手な思惑があります(笑)。更に言うと、『攻殻機動隊』という作品も、現実と電脳空間の出来事というものがだんだんあやふやになっていく、どちらか区別できなくなっていく、という作品でもあるんですね。そうすると、ヴァーチャル・リアリティというものはまさしく現実と仮想空間というものが渾然一体となっている世界観でもありますので、これを上手く組み合わせていくと面白いものが出来るんじゃないか、ということで今回舞台装置と映像の技術提案をさせていただきました」と語りました。

そして稲見教授が「『攻殻機動隊』の一ファンとして、こういう日が来たことが非常に嬉しく思っております。VRというとどうしても最先端のデジタル技術というイメージがあると思いますけども、元々はアントナン・アルトーという劇作家が舞台用語の説明の仕方の1つとして、ヴァーチャル・リアリティという言葉を使ったと言われているんです。ゴーグル型のヴァーチャル・リアリティというものが出来る前は、むしろ劇場空間の有様を説明するための要素として使われてきた。最新技術という部分はもちろんありますが、劇場という空間や我々の世界とデジタルの世界、そして能の世界……能の世界というのはこの世とあの世、もしくはこの世の世界とイマジネーションの世界だったり、その複数の世界をつないでいく。そのときの一つの意図として、今回のテクノロジーというものが位置づけられるのではないかと思っています。

そういう意味では、GHOST IN THE SHELLという『攻殻機動隊』の英語名から取りまして、この技術を“ゴーストグラム”と名付けると良いのではないかなと思いました。これからもっと進歩していくと思います」と述べ、「名前が決まりましたね(笑)」とプレ上映イベント内で今回の技術の名前が決定!

今回限り!「能楽堂で『攻殻機動隊』を上演することは絶対にございません」

プレ上演を観た谷本さんは、「能というのは非常にお客様に対して不親切な芸能と言いますか、お客様は一生懸命想像をしていただかないとなかなか理解できない部分も多くございます。今プレ上演された能と、川口さんが舞っていたものに内容というのはまだ特にないんですね。ただそれが、映像と相まると途端に意味をなしてくる。それを今客席で拝見していて驚きました。ですので、これが全編にわたってどのような形になっていくのかというのが、大変楽しみです」と期待が高まったよう。

さらに坂口さんは、多くの方に観てもらいたいという想いを「なかなか700年も前の古典文学を題材にした能というのは難しかったり、堅苦しいというイメージがあります。その能楽の本質を追求することも私達は大事だと十分にわかっておりますが、やはりこの先、能楽が何百年もまた続いていくためには、今の若い世代の人たちが能に触れ合うきっかけを作らなければいけないという思いもございます。『攻殻機動隊』の能に関しては、このVR能でしか上演出来ません。能楽堂で『攻殻機動隊』を上演することは絶対にございませんので、今回限りでございます。ですので、見逃さないでいただきたい。もし、評判が悪かったら二度とやりません(笑)。そういう決意を持って臨みたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします」と熱く述べました。

8月22日、23日の公演チケットが完売したことを受け、21日のプレビュー公演が決定。チケットぴあ、ローソンチケット、カンフェティにて本日8月8日10時より発売中です。

VR能 攻殻機動隊
公演期間:2020年8/21(金)〜23(日)
会場 世田谷パブリックシアター
原作:士郎正宗「攻殻機動隊」(講談社KCデラックス刊)
出演:坂口貴信 川口晃平 谷本健吾他
観世流能楽師
演出:奥秀太郎 / 脚本:藤咲淳一
3D技術:福地健太郎(明治大学教授) / VR 技術:稲見昌彦(東京大学教授)
プロデューサー:神保由香 盛裕花 / 製作:VR能攻殻機動隊製作委員会
公式サイト:http://ghostintheshellvrnoh.com/[リンク]

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