結末のない映画:『少年は残酷な弓を射る』『マッドバウンド 哀しき友情』/”We need to talk about Kevin””Mudbound”



近年、結末をはっきりとは描くことなく、オーディエンスがその物語を胸に抱き続けることで完成する映像作品が多く輩出されている。それは共通となるゴールが描かれる時代ではなく、多様な価値観を持つ社会となっていることを象徴するひとつの事象であり、また同時に、結末を与えられないことで各人が導き出した答えやアイデアが、現実社会でそれぞれがアクションを起こす時に呼び水となる機能を果たしているとも言える。結末のない映画が我々にもたらしてきたものはなにか。現実に拡張する、結末のない映画についての特集。第1弾は編集部による2編のレビューをお届けする。(→ in English


作品内の重要なキャラクターとして、黒人家族の長男として戦争に出て帰還したロンゼルの父親であるハップについても言及したい。ハップが足を骨折した際に家族は生活に困窮するが、彼の家を訪れる者たちに対するその恐怖と疑惑の目は、彼の人生がいかに困難に満ちたものであるかを雄弁に物語っている。それは彼が子どもたちのことを心から誇りに思い、妻と子どもたちがより良い生活を送れることをいかに切実に願っているかをより強く印象付ける助けにもなっている。対するマッカラン家の非人道的な父親。
本作で描かれる有色人種の人々への差別は、現在と同じものではないかもしれない。しかし、人種差別は形を変えながらも依然として存在し、自由を奪い、個の人生を奪っている。
過去のルールに縛られることなく、自らが意思を持ち、物事を決め、価値観を再形成していくことは本作の大きなテーマだ。
ディー・リース監督の『アリーケの詩(うた)/パライア』もまた優れた作品なので、機会があればぜひ鑑賞してほしい。



『マッドバウンド 哀しき友情』
2017年制作 / 135分 / アメリカ
出演:キャリー・マリガン、ジェイソン・クラーク、メアリー・J・ブライジ
Netflixにて配信中
https://www.netflix.com/jp/title/80175694


text Maya Lee

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NeoL/ネオエル

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