中学校へのスマホ持ち込み解禁 親子で決めておきたいルール、そして懸念点は

中学校へのスマホ持ち込み解禁 親子で決めておきたいルール、そして懸念点は
文部科学省は、2020年6月24日、中学生のスマートフォンや携帯電話の持ち込みを条件付きで認める案をまとめました。これまで原則禁止で、遠距離通学など保護者の申請により例外として認めていましたが、一定のルールをもとに緩和。学校と生徒、保護者がルールを協議することとして、7月中に全国の教育委員会などに通知する予定です。すでにスマホを所有する中学生は多く、スマホによるいじめやトラブルが問題になっています。

中学校でのスマホ解禁による、メリット・デメリットは何でしょうか。改めて親子で学びたい、スマホとの上手な付き合い方とは。小中学校でスマホの利用法などについて講演を行う、ITコンサルタントの目代純平さんに聞きました。

まずはスマホの利用時間を決める。制限するばかりでなく、使い方を誤れば心身に及ぶ危険も伝え、ネットリテラシーを高めることが大切

Q:現在、中学生のスマホ利用の実態は?
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内閣府が行った、10歳~18歳未満を対象とした調査によると、インターネットを利用していると答えた約9割の未成年で、自分専用スマートフォンの所有率は、高校生98.6%、中学生81.8%、小学生40.1%です(「令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」)。

全国的にみると、中学生の8割程度が所持していることになりますが、東京や大阪、福岡などの都市部では、さらに所有率は高いと考えられます。

携帯電話の時代も含めたこの10年で、小学6年生のケータイ・スマホ所有率は、毎年約1割ずつ上昇しているように感じています。以前は、高校生でのスマホデビューが一般的でしたが、2011年に登場したLINEにより、中高生の主な通信手段がLINEに代わり、スマホデビューは中学生からになっています。友だちとの連絡や、部活動の連絡などが、LINEがなくては成り立たなくなっています。

東日本大震災後には緊急時の連絡手段として、新型コロナウイルス下ではリモート授業のツールとして、危機的な状況が起こると、保護者が子どもにスマホを持たせる必要性を感じるようになります。

保護者の意見を受け、自治体が学校への持ち込みを認めるケースもあります。例えば、大阪府教育委員会では、2018年の大阪北部地震を受け、2019年度から小中学校の登下校時のケータイ・スマホの所持を認めています。

Q:文科省が示したスマホ持ち込みを認める条件とは、どのようなものですか。
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報道によると、次の3つの条件が必要とされています。

①学校での管理方法や紛失時などの責任の所在を明確化する。
②フィルタリング(閲覧制限)を保護者の責任で設定する。
③学校や家庭がケータイ・スマホの危険性や正しい使い方を指導する。

中学生は、部活動で帰宅が遅くなる生徒も多いことから、防災・防犯の目的で、保護者の要望を受け、すでに緩和の方向で動いている自治体も少なくありません。ただ、学校現場としては、授業に集中しないなどトラブルが増加する可能性があることから、持ち込みを全面的に認めたくないのが本音でしょう。トラブルをできるだけ回避するために、学校ごとのルールが設けられると考えられます。

すでに持ち込みを認めている小中学校でも、「学校では電源を切って、カバンにしまっておく」「授業中は出さない」など一定のルールがあります。高校では、休み時間のみ使用を認める学校もあります。

ケータイの時代には、始業時に生徒から預かり、下校時に返却する方法をとる学校もありましたが、スマホは高額な所持品です。紛失や破損した場合に責任問題が発生するため、学校が預かって管理することは考えにくいです。

ただ、授業中のスマホ禁止などのルールを決めたとしても、ルールを守らない生徒からスマホを取り上げるわけにはいかない、など実際の運用上は難しい点もあるかもしれません。

Q:中学生のスマホ利用で、想定されるトラブルや危険はどのようなものがありますか?
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問題となっているケースは、次のようなものがあります。

スマホ依存
スマホの使用時間がどんどん延びていることは、大きな問題となっています。新型コロナウイルスによる休校で、自宅での時間を持て余し、一日中スマホを使っている子どもは多かったでしょう。LINEだけでなく、写真を撮る、音楽を聴く、漫画や動画を観る、など、さまざまな楽しみがあり、スマホを片時も離せないという子どもが増えています。

いじめ
グループ内で特定の人をブロックする「LINE外し」のような仲間外れがいじめの手段となっています。また、トイレなどの様子を動画で撮影され、LINEで拡散されるなどの被害も実際に起こっています。盗難では、「ムカつく相手だから」という理由だけで盗んだスマホのデータを消去し、売ってしまうなど、悪質な例もあります。

SNSでのトラブル
中高生が主に使っているSNSは、ツイッターとインスタグラムです。ツイッターの利用規約では、13歳未満は利用不可としていますが、チェックは厳密ではありません。そして、特にツイッターは、援助交際の相手や麻薬の売人などをハッシュタグで簡単に検索でき、ダイレクトメッセージで犯罪者予備軍と気軽につながってしまう危険性があります。

自撮り被害
だまされて裸の画像などを送らされる「自撮り被害」の被害者は、約5割が中学生で、高校生を含むと約9割を占めます。「『LINEスタンプをあげるから』という条件で、むやみに送ってしまう」「女性を装った男性に体の悩みなどを相談するうちに、『写真で見てあげる』と言われて送ってしまう」などのケースがあります。送った画像などがインターネット上で拡散されると、取り消すことは困難で、被害が一生つきまとう可能性があります。高校生では、ある程度判断力がつくようになりますが、中学生では判断できないケースが多いようです。

Q:トラブルなどを防ぐために、親子でどのようなルールを作っておくと効果的ですか?
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まずは、スマホの利用時間を決めましょう。1日2時間程度、22時以降は友だちに連絡しない、など具体的な時間の目安を決めましょう。「スマホはリビングで使い、自室には持ち込まない」などのルールも有効です。

18歳未満の子ども用にスマホを購入する際は、法令などにより販売時にフィルタリングの設定を行うことが義務付けられています。フィルタリングの制限レベルは、学齢に合わせて設定ができます。ただ、LINEのブラウザからは有害コンテンツにもアクセスできてしまうなど、抜け道もあります。

私自身は、子どものスマホに無料フィルタリングアプリである「Googleファミリーリンク」を使って、インストールできるアプリなどを制限しています。ただ、これらで制限をかけると、通常のYouTubeがインストールできなくなり、子ども用の「YouTube Kids」しか利用できなくなります。「YouTube Kids」では子ども向けの動画しか視聴できず、必ずしも有害といえない人気YouTuberの動画も制限されてしまいます。このように、フィルタリングの程度によっては、子どもが不満を感じ、設定するだけでは解決できない問題もあります。

大切なのは、親子で話し合ってルールを決めることです。いきなり「時間を守れ」「これはダメ」と一方的に押し付けても、反発心が生まれるだけです。「いじわるでルールを決めるのではない」「ルールは自分自身を守るためのものだ」ということを、子どもにきちんと理解させましょう。

そのためには、ルールがなぜ必要なのかを保護者自身が知っておかなくてはなりません。スマホの使い方をテーマにした講演会でも、「ツイッターで簡単に麻薬の売人とつながった」「面識のない相手に自撮り画像を送り、ネットで拡散された」など、具体的な怖い事例を示しています。子どもにも事実として教えておきましょう。

また、親が「食事中にスマホを見る」「歩きながらスマホを見る」など、基本的なマナーを守っていなければ、子どもにルールを守れといっても説得力がありません。親自身も適切な使い方を心がけましょう。

Q:今後、小学校への持ち込みの是非も検討されると考えられますか?学校への持ち込みが認められることでのメリット、デメリットは?
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小学生は、部活で帰宅時間が遅くなることもありませんし、キッズケータイや、子ども用GPS機器などで十分と考える保護者も多いのではないでしょうか。そのため、小学生のスマホ所有率が今後どんどん上昇するとは考えにくいです。

一方で、国としては教育現場でのICT化を推進したい考えがあり、学校でスマホを禁止することは「時代遅れだ」という意見もあるでしょう。今後5年後くらいには、児童生徒がスマホやタブレットを所持していることを前提とし、映像授業やリモート授業に活用する可能性はあります。海外では、すでに授業にスマホを取り入れている国もあります。

学校への持ち込みを認めるメリットは、災害時や緊急時の連絡手段が確保できる点ですが、現時点では学校内でのいじめやトラブルなどデメリットの方が多いと思われます。

中学生のスマホ所持率をみると、すでにほとんどの生徒が通学時はスマホを使い、学校ではカバンの中に入れている、と考える方が自然です。学校にいる間は電源を切るなど、学校でルールを設けるのであれば、生徒側からみると、これまでと大きく変わらないのではないでしょうか。

ただ、所有の格差が生まれる懸念はあります。現状でも、クラス40人のうち、家庭の方針や経済的な事情などでスマホを持っていない子どもが2~3人はいます。LINEで連絡がとれないことで、仲間外れにされるケースは実際に起こっています。

スマホを使うということは、使い方を誤れば、想像を絶するような心身に関わる取り返しのつかない事態に巻き込まれる危険性もはらんでいます。子どもがスマホとうまく付き合うためには、最初の与え方が何より重要です。
「子どもの方が詳しいから」と与えっぱなしにするのではなく、子ども自身が判断できる力をつけるため、ネットリテラシーを身に付けさせることが大切です。理想は年に一度きりの講演会などでなく、道徳の授業などで頻繁に伝える機会があるといいですね。

多くの場合、問題となっているのは、やはりスマホの利用時間です。1日に使える時間は誰でも24時間と限りがあります。その中で、「学校に行き、宿題をこなし、食事と十分な睡眠をとる」などきちんとした生活を送ろうとすると、自由に使える時間は意外と少ないものです。

高校生でスマホを1日に5時間も使うという声もよく聞きますが、その分、勉強や睡眠など、大切な時間が削られています。ダラダラとYouTubeを見たり、夜中まで友だちとLINEでやりとりしたりすることは、ほかの時間を削ってまでやるべきことでしょうか。中学生の今しかない貴重な時間を、スマホで浪費していないか、親子で改めて考えてみましょう。

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