『コンフィデンスマンJP』より先だった!? 詐欺師が活躍するアニメ『GREAT PRETENDER』鏑木ひろ×古沢良太「ルールやモラルに厳しい世の中を吹き飛ばす人達の物語を作りたかった」

2020年7月8日よりフジテレビ「+Ultra」枠にて放送開始するTVアニメ『GREAT PRETENDER(グレートプリテンダー)』。TV放送に先駆け、Netflixにて好評配信中なので、すでにご覧になっている人もいるのではないでしょうか?

本作は、『鬼灯の冷徹』『91Days』などの鏑木ひろ氏が監督を務め、『ALWAYS 三丁目の夕日』『コンフィデンスマンJP』などのヒット作を手掛ける脚本家・古沢良太氏がTVアニメシリーズの脚本・シリーズ構成に初挑戦。

さらに『新世紀エヴァンゲリオン』『サマーウォーズ』の貞本義行氏がキャラクターデザインを担当、『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』などハイクオリティな映像で話題作を続々手掛けるWIT STUDIOがアニメーション制作する、ジャンルを超えた今世紀最強のチームが贈るオリジナルアニメとなっています。

物語は、自称“日本一の天才詐欺師”こと枝村真人(えだむら・まこと)が、マフィアさえ手玉に取るコンフィデンスマンのローラン・ティエリーに騙されたことをきっかけに、世界を舞台に桁違いの“コン・ゲーム”に巻き込まれていく……という世界を股にかけた壮大な“コン・ゲーム”を描く、痛快クライム・エンタテイメントです。

ロサンゼルス、シンガポール、ロンドン、上海、そして東京……。CASE1~4でそれぞれで異なる都市を舞台に、魅力的な詐欺師(コンフィデンスマン)たちが活躍します!

同じく詐欺師の物語である『コンフィデンスマンJP』を手掛ける古沢良太さんに、なぜ今作でも詐欺師を題材にしたのか、そして鏑木ひろ監督に、魅力的なオリジナルキャラの演出の裏側など、お話を伺いました!

「ドラマじゃ詐欺師の話はできないと思っていた」実は『コンフィデンスマンJP』より前に始動していた

――まず、今作の企画経緯を教えてください。

古沢:何年も前にWIT STUDIOの社長の和田さんから「何かオリジナルアニメを作りたいので、一緒にやりませんか?」というメールが急に来て。アニメはいつかやってみたいとは思っていたんですけど、その時はちょっと忙しかったので適当にごまかして(笑)。でも何回も手紙などを寄越してくれて、何度かお会いするうちに“とにかくオリジナルで広いターゲットのお客さんがワクワクできるエンターテイメントがいい”という共通認識ができたので、その熱意を感じて「やってみようかな」と思いました。そして元々、詐欺師の物語をやってみたいというのがずっとあったので提案させてもらって、なんとなく始まっていったという(笑)。

鏑木:なんとなくって(笑)。

――では、まだその時点で『コンフィデンスマンJP』のドラマはやっていなかったのですか?

古沢:まだやっていません。ドラマじゃ詐欺師の話はできないと思っていたんですよね。だから、アニメだったらできるかな、と思って始めたんですけど、こっち(GREAT PRETENDER /以下グレプリ)を始めたら、なんかドラマでもできるんじゃないかという気持ちになってきて(笑)。それでフジテレビさんにも相談して、ストーリーはまったく違う別作品ですけど、詐欺師の物語をやることになりました。僕は途中からほぼ同時進行的に、あっち(コンフィデンスマン)をやったり、こっち(グレプリ)を書いていました。

――最初はなぜ実写ドラマでは難しいと考えていらっしゃったんでしょう?

古沢:とにかくスケール感が必要だから。それに、鮮やかに騙すというところがアニメだったらある程度リアリティーをふっ飛ばしても大丈夫な感じがしたし、世界中に行きたいという希望もあったので、アニメでやりたいと思ったんです。でも、始まったらドラマの方が作るスピードが早い。すごく優秀なスタッフ、一流のキャストが集まってくれて、良いものになってよかったですが、その間、こっち(グレプリ)の人たちはコツコツ絵を描いていました(笑)。

鏑木:そうですね、地味にゆっくり(笑)。

古沢:だから、ついにこっちも出来た!という感じです。

――鏑木監督は、今回の企画を聞いたときの印象は?

鏑木:もちろん面白そうだとは感じたんですが、当たり前ですが「オレオレ詐欺」的なものが良くないな、という風潮が昨今は強まっているじゃないですか。だから詐欺師という題材がちょっと悪い方に捉えられたら嫌だな、というのはあって。でも『コンフィデスマンJP』のドラマも受け入れられているので、そこらへんは大丈夫かなと思いました。

――古沢さんは以前からやりたかったということですが、「コンフィディスマン」というテーマを扱うことへのきっかけやこだわりは何だったんでしょうか?

古沢:元々、詐欺師ものってすごく面白いジャンルなんだけれども、同時にすごく難しくて、映画とかも『スティング』などいくつかしか傑作と言われるものがない。しかもそれを連続シリーズみたいな形で量産するとなるとかなりハードルが高いので、「やりたいけど、できるのかなぁ?」と二の足を踏んでいた部分がありました。でも、難しいからやりがいがあるとも言えるし、毎回毎回鮮やかにいかなくても、キャラクターたちの人間ドラマとして面白くなるという部分もあるんじゃないかと考え、始めてみました。僕は“悪人が悪人を懲らしめる”みたいな物語は元々好きだし、世間がルールやモラルにすごく厳しい世の中になっているなと思っていたこともあって、そういったことを吹き飛ばす人たちの物語を作りたい、というのがありました。

――今作も、爽快感があるお話だなと感じました。

古沢:そう思ってもらえたなら良かったです。

キャラ設定は空白を大事に「なんで誕生日決めなきゃいけなんだろう?って」

――キャラクターが魅力的だということが物語を受け入れる上で大前提だと思いますが、なぜ若い枝村くん(愛称、エダマメ)を最初の主人公にしようと思ったのですか?

古沢:詐欺師だけれどみんなが好きになれるようなキャラクターにしなくてはいけなかったので、憎めない感じにしたかったんです。自分が日本一の詐欺師だと気取っているけど、コロッと騙され(笑)、つい情にほだされてしまう、調子にのりやすいみたいな、愛されるキャラクターにしたいと考えました。でもやっぱり貞本義行さんの絵が愛情をもてる絵だから、そういうところに助けられているし、もちろん監督の演出にも助けられていて、表情豊かですごく良いキャラクターになったなと思っています。

――監督はキャラクターの演出で心がけているところは?

鏑木:原作がないので、端的にいうといろいろキャラに乗せ放題なんです。ただ、いろいろ乗せているだけだと設定だけが増えていくので、どこらへんまでが一番活きる設定で、それ以上はあまり上乗せしないようにしよう、というバランス等は考えてました。自分だけの判断で作っていたら、恐らくもっとキャラ設定を決め込んでしまうと思うんですよね。だけど、古沢さんは空白の部分をけっこう大事にされているので、その隙間をちゃんと担保しつつ、それ以外の乗っけられるところはちょっと乗っけていく、というバランス調整を細心の注意で心がけてました。

古沢:そうね~。僕は基本的にキャラクターをきちんと決めたくないんですよね(笑)。やっぱり僕にとってもエダマメは他人だから。僕の知らない部分もきっとたくさん持っている、という感じにしておきたいんですよ。それが、書いていくうちに意外な行動をとったりすることに繋がっていくんじゃないかなと思ってるので、あんまりきっちり決めないようにしているんですよね。

鏑木:1回、「例えば、誕生日とか決まっていたりするんですか?」と古沢さんに聞いたんですよ。で、各キャラの誕生日が書かれて来たメールの最後に「これじゃないかもしれません」と。あ、決めたくないんだと思って(笑)。

古沢:「誕生日決めてください」と言われて、なんで誕生日決めなきゃいけなんだろう?って思いながら適当に決めて、「でも違うかもしれません」って(笑)。

鏑木:それが、“キャラクターをきっちり決めたくない”って意思表示だと思ったんですよ。だって決めてもいいじゃないですか、そんなん適当でいいんだから。それで、その日が来たら誕生日と言えばいいわけですよ。要は話の流れ的に、例えば決めた日がクリスマスに近ければ「もうすぐ誕生日だね。じゃあ何かプレゼント買ってあげようか」って話を持っていけるんですけど。

古沢:ああ、なるほどね。

鏑木:いろいろ話のきっかけとして(誕生日が)使えるんですけど、それを“NO”と言われてしまったので(笑)。じゃあわかんないでいいか……って。わからないままならミステリアスだし。あと(物語的に)年齢がバレちゃったり逆算もできちゃうので、まあ確かにわからないままでいいかな、と今の誕生日未定になりました。

色彩豊かなビジュアルは「あまり観たことのないピーキーな世界観」

――今作は世界を舞台にコン・ゲームを繰り広げますが、こだわった部分はどんなところでしょうか?

古沢:場所は適当に決めてるんですけど(笑)、最初のハリウッドは、僕が何年か前にロサンゼルスに行ってすごく楽しかったからです(笑)。結果的にとても良かったですけどね。

――でも日本ではなく海外を舞台に、とは決められていたんですよね?

古沢:そうですね。やっぱりアニメって世界中の人が観てくれるから、世界中の人たちにとって自分に近い物語に感じてほしかったんです。なので、いろんな都市を舞台に、いろんな国の人達が出てくるようにしたかったのはあります。

――映像もとても美しくて、背景も少しアウトラインをとった、わたせせいぞうさんのイラストを思わせるような独特な映像美が印象的でした。映像面のこだわりを教えてください。

鏑木:最初は自分の中では版画から始まって、版画っぽいのをどう作るのか?とイメージボードをsyo5くんという若いイラストレーターに振ったんですよ。そうしたら、syo5くんが自分なりの解釈で版画とはまるで違う形で出してくれたので、そのイメージボードを(アニメ美術制作会社の)Bambooの竹田悠介さんに渡して、「出来ますよ」と返事が来たのでイケるなと思って。色彩豊かで良いですよね。

――とても色鮮やかですよね。

鏑木:良い意味で目に痛い感じがなかなかいいんじゃないかと思っています。自分が「この世界をこの色で~」と言ったというより、複合的にこうなったという、けっこう偶然に近い形で出来ました。あまり観たことのないピーキーな世界観で面白くなって良かったなと思います。

――平面的でもあり、奥行きを感じる部分もあり。

鏑木:スーパーリアルでも通用したんですけど、それだと味気なくなってしまうので、今くらいが止めても面白いし、動いても色鮮やかでいいんじゃないですかね。

いつか聖地巡礼してほしい!

――古沢さんは、アニメーションになったものを見た感想は?

古沢:やっぱり面白いですね。自分のイメージと割と近いものが出来ているなという印象はあります。場所などもけっこう自分が行ったことがあるところを書いているから、「そうそう、こういうところ!」と感じられて、そういう意味ではとてもイメージにぴったりだなと思っています。テンポもとても良いと思いますね。

――監督は仕上がりを見ていかがですか?

鏑木:諸々満足してます。自分としては完璧で隙の無いフィルムよりは、多少乱暴な仕上がりの方が好みです。やっぱりいろんな隙間があることによって、想像の幅が広がるという意味では、今くらいのフィルムが丁度いい塩梅かな。

――古沢さんとしては、ドラマ『コンフィデンスマンJP』が先に放送されましたが、今作を観てアニメならではの良さを感じた部分はありますか?

古沢:実写のドラマとアニメって似て非なるもので、実写の制作は予期せぬことの連続というか、コントロールできないことばっかりなんですよね。アニメは、全部が意図したことの塊なんです。逆に言うと、実写はイメージしたものにならないことが多いけど、それは良くも悪くも両方あって、予想外のことが起きたことですごく良くなっている、ということも起こるんですよ。でも、アニメはイメージしたものに限りなく近いものがスキルさえあれば出来てしまう。なので、作り手のセンスや能力が本当に問われるんだなと思います。今回は本当にとても優秀なチームを作ってもらえたと思っています。

――では、本作を観る方にメッセージをお願いします。

古沢:とにかく鬱屈したことが多い世の中ですけど、そういう雲をすべて晴らして爽快な気分にさせてくれる作品だと思うので、エダマメと一緒に世界中を冒険してください。

鏑木:世界を飛び回ってやりますよ。観た後はいつか聖地巡礼してほしいですね。

――大規模な聖地巡礼ですね。

鏑木:本気でまわったら、たぶん200~300万円飛ぶんじゃないですか(笑)。あと、オープニングとエンディングもオシャレな感じになっているので、けっこう良い出来ですよ。本編並みにオススメですね。

――楽しみにしています。ありがとうございました!

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アニメ『GREAT PRETENDER(グレートプリテンダー)』作品概要

標的は悪党のみ。の宴にようこそ。
痛快クライム・エンタテインメント開幕!
<放送情報>
フジテレビ「+Ultra」他各局にて放送
フジテレビ:7月8日より 毎週水曜24:55~25:25
関西テレビ:7月9日より 毎週木曜25:55~26:25
東海テレビ:7月11日より 毎週土曜25:45~26:15
テレビ西日本:7月8日より 毎週水曜25:55~26:25
北海道文化放送:7月12日より 毎週日曜25:10~25:40
BSフジ :7月15日より 毎週水曜24:00~24:30
※放送日時は変更の可能性があります。
Netflixにて好評配信中
CASE1(1話~5話)  配信中
CASE2(6話~10話) 配信中
CASE3(11話~14話) 配信中
CASE4 Coming Soon
<STAFF>
監督:鏑木ひろ
脚本・シリーズ構成:古沢良太
キャラクターデザイン:貞本義行
サブキャラクターデザイン・総作画監督:加藤寛崇
総作画監督:浅野恭司
デザインワークス:奥田明世 清水慶太 石橋翔祐
コンセプトデザイン:丹地陽子
副監督:益山亮司
美術監督:竹田悠介
美術設定:藤井一志
色彩設計:小針裕子
撮影監督:出水田和人
編集:今井大介
音楽:やまだ豊
音響監督:はたしょう二
ミュージックエディター:千田耕平
アニメーション制作:WIT STUDIO
<CAST>
枝村真人(エダマメ):小林千晃
ローラン・ティエリー:諏訪部順一
アビゲイル・ジョーンズ(アビー):藤原夏海
ポーラ・ディキンス:園崎未恵
●オープニング・テーマ楽曲:「G.P.」/作曲 やまだ豊
●主題歌:「The Great Pretender」/Performed by Freddie Mercury 
Words & Music by Buck Ram
<公式サイト> http://www.greatpretender.jp/[リンク]
<公式Twitter> @GrePre_anime

(C)WIT STUDIO/Great Pretenders

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