観覧車で絶対やってはいけないこと
モノが売れない、売上が上がらない、利益が出ない、お客さんが来ない…。
不景気のせいか、様々な業界でこんな声が聞かれますが、消費者がお金を使わなくなったのかというと、そんなことはありません。ヒット商品は出てますし、繁盛している会社もあります。この違いはどこにあるのでしょうか。
『やっぱり!「モノ」を売るな!「体験」を売れ!』(実業之日本社/刊)の著者、藤村正宏さんは、売れる商品を作り出す会社の共通点として、商品そのものではなく、商品に付随する「体験」や「ライフスタイル」を売るマーケティングをしていることを挙げています。
「体験」や「ライフスタイル」を売る、といわれてもピンとこない人が多いかもしれません。これは一体どういうことなのでしょうか。
■「モノ」でなく「ライフスタイル」を提案する自動車CM
ダイハツの軽自動車タントのCMは「体験」や「ライフスタイル」に訴えかけるマーケティングの好例です。
ユースケ・サンタマリアさんと小池栄子さんが夫婦役で出演しているこのCMは、もう何年もバージョンを変えてオンエアされ続けていますが、その内容は車の機能や快適さをアピールする従来のCMとは異なります。
奥さん役の小池さんが妊娠している時から始まり、赤ちゃんが生まれ、その子が育って、二人目の子供が生まれ、という家族の物語を中心に据え、家族の傍らにはいつも「タント」がある。
つまり、このCMは荷物がたくさん積める、人がたくさん乗れる、といった車の機能ではなく、「この車だとこんなに楽しいことができますよ」という、車を買ってからの体験をアピールしているのです。
■100円ショップが繁盛する秘密
今ではどの街でも見かける100円ショップ。ちょっとした小物や文房具などが100円で手に入るということで、多くの人が一度は訪れたことがあるはずです。
しかし、100円ショップが繁盛している理由は、“安さ”だけではありません。
100円ショップの特徴といえば、なんといっても商品の豊富さです。
店中に所狭しと商品が陳列され、消費者はそれらの商品の使い道を自由に考え、決めることができます。
お客が商品の用途を決めるお店というのは、ありそうでなかなかありません。
消費者にそのような「体験」を提供しているという点が100円ショップならではの強みだといえます。
■ある観覧車の決定的な失敗
テーマパークや遊園地の定番といえば観覧車。
しかし、だからといって単に設置すればいいわけではありません。
かつて、ある公園に公共団体によって新しい観覧車が設置されたのですが、彼らは決定的なミスをしてしまいました。
それは、その観覧車を“相席”にしてしまったこと。
六人乗りのゴンドラを効率よく運用すべく、二人連れのカップル数組を一緒のゴンドラに乗せてしまったのです。
観覧車は高いところから夜景を見るためだけに乗るわけではありません。観覧車に乗ろうとする人の多くはカップルであり、彼らはそこに二人きりのロマンチックな“体験”を求めているのです。そんな彼らを相席させてしまってはすべてが台無し。
これは“「モノ」でなく「体験」”の観点から考えると、やってはいけないことですよね。
本書には、モノがあふれた現代で、他の商品と差をつけるための「体験の売り方」が、ユニークな実例を交えながら解説されています。
せっかくいい商品を作っても、それだけで勝負できる時代は終わり、商品の「見せ方」「売り方」を突き詰めなければ売れない時期にきています。
その意味で、本書で語られている「体験」をアピールする手法は、今後のマーケティングに置いて大きなキーワードになるのかもしれません。
(新刊JP編集部)
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