駅のホームから見える工場夜景は必見!上信電鉄の沿線は穴場だらけだった
ローカル線で見知らぬ土地を訪れると、必ず神社や史跡を探してしまう歴史好きの荻窪圭です。
群馬には史跡がたくさんあるのですが、もっとも著名なのはなんといっても世界遺産になった「富岡製糸場」でしょう。そして富岡製糸場を訪れるなら「上信電鉄」、というわけで、今回は、富岡製糸場を訪れつつ上信電鉄も楽しんできました。
東京駅
高崎駅はローカル線の旅の起点なり
まずJR東京駅から上越新幹線「とき」で約50分のJR高崎駅へ。高崎駅は新幹線のほか、信越本線・上越線・吾妻線・両毛線・八高線・高崎線と実に6本の路線が集まる交通の要衝。さらに、上信電鉄が乗り入れてます。高崎駅を通る路線で利用したことがないのは上信電鉄だけだったので、今回、それも楽しみのひとつでした。
高崎駅
上信電鉄の車窓から浅間山が見えた
上信電鉄の高崎駅改札口は、駅のちょっと奥まったところにありますが、案内の矢印に従っていけば大丈夫。ローカル線らしく、自動改札もない小さな駅なのが旅情をそそります。
富岡製糸場を訪れるなら、富岡製糸場見学往復割引乗車券(※)がお得。
※高崎駅〜上州富岡駅1往復乗車券と富岡製糸場見学料がセットになって2,200円(税込)
高崎駅から富岡製糸場の最寄りの上州富岡駅までは約40分。
高崎駅を出て20分ほど、馬庭(まにわ)駅を過ぎたあたりから右手前方を見ると、連なる山々の奥にひときわ大きくててっぺんがフラットな山が見えはじめます。これが群馬県と長野県の境にある浅間山。有名な活火山です。すぐ左には妙義山の姿も見えます。この車窓は必見です。
上州富岡駅
富岡製糸場までは古い商店街がおすすめ
上州富岡駅から富岡製糸場までは徒歩約10分。駅前から歩いて行くと、右手に「富岡製糸場近道」という案内板を発見。
この近道、「銀座通り」と呼ばれる古くからの商店街。昭和の風情が残っているので、歩くならこちらがおすすめ。1955年〜1964年(昭和30年代)には4軒の映画館があって賑わっていたそうです。
富岡製糸場への近道である、銀座通りの入口。この通りは昭和の風情が残っているのでぜひ。
富岡製糸場
国宝にして世界遺産の富岡製糸場で座繰り体験
いよいよ世界遺産として有名な「富岡製糸場」に到着です。1872年(明治5年)創業の日本最初の官営模範器械製糸場で日本の近代化に貢献しました。ここが素晴らしいのは、1987年(昭和62年)まで使われていた工場の敷地がまるごと残っていること、さらに建物が創業当時のままでいくつか残っており、東置繭所(ひがしおきまゆじょ)、西置繭所(にしおきまゆじょ)、実際に繭から生糸を取る作業が行われていた繰糸所(そうしじょ)は国宝にも指定されています。
フランスの技術者ポール・ブリュナが建築を指導したので、富岡製糸場のレンガは「フランス積み」と呼ばれる積み方をされていることでも有名。近代建築好きにはたまりません。
とはいえ……、「繭から生糸」といわれてもピンとこないのが現代人、ですよね。絹生地は絹糸から、絹糸は蚕の繭から取れる生糸から作られるのですが、繭から生糸を取るってどういうことでしょう。
東置繭所の1階に実演コーナーがありますから覗いてみましょう。富岡製糸場は器械を使って繭から生糸を取っていたのですが、その、フランス式繰糸器の実演を見学できます。
すぐ隣には、富岡シルクブランド認証委員会が認証した製品「富岡シルク」が販売されている「富岡シルクギャラリー」もあり、繭から絹製品まで一度に見ることができます。
富岡製糸場では器械を使っていましたが、ここで体験できるのは「完全手動」。より原始的な仕組みなのでわかりやすくてよいですね。
体験は1回200円で、参加記念に繭で作ったストラップをひとつもらえます。
安中駅
駅から見える工場夜景
ホテルで休むには時間が早すぎるので、上州富岡駅から高崎駅へ上信電鉄で戻り、高崎駅から信越本線で10分ほどの、安中駅へ向かうことにしました。
実は安中駅の真ん前、山の斜面に東邦亜鉛株式会社の巨大な工場(安中精錬所)があり、夜になると工場夜景がきれいだというので日没を待ってみました。
工場の夜景は駅前にある歩道橋か、駅の跨線橋(こせんきょう)から眺めるのがおすすめです。
工場夜景が好きな方はぜひ。駅から気軽に見ることができる工場夜景です。
再び高崎駅へ戻り、本日は駅近くのホテルに宿泊。
こんにゃくパーク
群馬の名産品を満喫できるテーマパーク
高崎駅から上信電鉄に乗って上州福島駅へ約30分。1897年(明治30年)に高崎駅〜福島駅(現上州福島駅)が開業したときに建てられた古い駅舎は必見です。
駅からこんにゃくパークへは2km程度ですが、今回は歩いてみました。途中には平安時代創建の笹森稲荷神社などがあって史跡とウォーキング好きにはたまらないのです。そうじゃない人は素直にタクシーに乗りましょう。
寄り道しながら歩いて、1時間ほどでこんにゃくパークに到着。敷地に入ると建物の真ん前に無料の足湯コーナー。駅から歩くという酔狂な行程を選んだ人(わたしですが)には嬉しいサービス。まず、歩き疲れた足を休ませましょう。ああ、足湯でおもてなしなんて最高。
こんにゃくパークは無料で楽しめます(体験は有料)。建物2階は工場見学コーナー。工場の稼働は平日のみですが、普段そこで何を作っているかを映像で流してくれています。こんにゃく芋からこんにゃくはもちろん、こんにゃくゼリー、しらたきなどいろんなこんにゃく製品を製造しているのですね。
1階は物販と飲食コーナー。
工場見学が終わったらおまちかね、無料バイキングへGo! ですよ。
お皿に少しずつ食べたいものを取っていくのですが、びっくりしたのはラーメンも焼きそばもあること。というわけで、今回のランチはこちら。なんか炭水化物多めに見えますが……実は全部こんにゃく!
中でもラーメンと焼きそばはびっくり。見た目は麺そのものなのに、食べると食感がこんにゃく独特の滑らかさや伸びがあって不思議な感じなのです。しかもどれも美味しくてローカロリーなのでいくらでもいけそう。特にラーメンはハマりそうな予感です。
食べ終えたら買い物をして終了。実はわたし、こんにゃく好きなのでつい土産に買い込んでしまいましたが、こんにゃくは重いので買いすぎに注意しましょう。
というわけで、帰りはさすがにタクシーにしました。パーク内にタクシーのり場があり、呼べばすぐに来てくれます。
一之宮貫前神社
養蚕機織の神様を祀る神社へ
午後は「一之宮貫前(ぬきさき)神社」を参拝することにしました。上州福島駅から上信電鉄で約15分、上州一ノ宮駅に向かいます。ここも非常に古い駅舎です。
一之宮貫前神社は531年(古墳時代)創建と伝わる古社。祭神は経津主神(ふつぬしのかみ)と比売大神(ひめおおかみ)。比売大神は養蚕機織の神様ともいわれてます。
駅から案内に従って歩くこと約15分。坂道と階段の上に大きな鳥居が見え、その先の道路を挟んで立派な総門があります。
総門の脇には江戸時代の唐銅製燈籠があり、献納者の名が刻まれています。よく見ると江戸の糸問屋さんも。昔から養蚕機織の神様として祀られていたのがわかります。
総門を抜けると、なんといきなり下りの長い階段。
一般的に、鳥居から上ったところに神社の本殿があるのですが、貫前神社は下ったところにあり、非常に珍しいのです。
極彩色で鮮やかな楼門、拝殿と本殿は、1635年(江戸時代)に徳川家光公の命で造営されたもので、本殿にある「雷神小窓」が特徴的です。
樹々に囲まれた広い立派な境内は空気が澄んでいて、ぴりっと引き締まる感じ。昔から地元の人に大事にされてきた場所だなというのが伝わってきます。
高崎駅
高崎駅から新幹線で東京へ
参拝したら再び上信電鉄で高崎駅へ戻り、新幹線で東京へ戻りましょう。
いやあ充実した2日間でした。
上信電鉄では車窓も古い駅舎も楽しめました。また、沿線には、一之宮貫前神社やこんにゃくパークもあります。
富岡製糸場は世界遺産だから訪れてみたいけれど、近辺には、製糸場以外の見どころがあるだろうか、と思っていた人もいるかもしれませんが……。上信電鉄沿いは、史跡から地元名産品のテーマパークまで、見どころだらけなんですよ。
東京駅
掲載情報は2020年5月26日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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