企画から稽古・本番まで全部リモート! 「Zoom演劇」を実践する『劇団ノーミーツ』の狙いと展望

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態宣言で、エンターテインメント業界にも大きな影響が出ていますが、演劇も例外ではありません。主だった公演は中止・延期が発表されています。

そんな中、Zoomを用いて自宅から作品を作り、Twitter・YouTubeなどで配信するという『劇団ノーミーツ』が登場。2020年4月26日に発表された「ダルい上司の打ち合わせ回避する方法考えた」は、900万回以上再生されるなど、話題となっています。

今回、『劇団ノーミーツ』主宰の一人でもある広屋佑規さんにZoomでインタビュー。「no meetsを守りながら、NO密で濃密なひとときを」という新劇団の狙いや今後の展望について、お話をお訊きしました。

--広屋さんはもともと『Out Of Theater』という公共空間を舞台にするという活動をなさっていたということですが、今回『劇団ノーミーツ』を立ち上げた経緯からお聞きしたいと思います。

広屋佑規さん(以下広屋):もともと僕は、劇場を飛び出して都市空間を活用したエンタメ作りをしていて、まさに「三密」が売りの企画を中心に制作していたのですが、新型コロナの影響で、今年予定していたものが、すべて中止や延期やペンディングになってしまいました。ただ、ここで自粛だけするのではなく、「今だからこそできることにチャレンジしたい」という話を仲間として、Zoomを使った劇団をはじめてみたということになります。

--それまでにZoomのようなビデオ通話システムを使ったことは?

広屋:普段の仕事で少しは使ったことがありました。使うこと自体に違和感はなかったので、むしろこれを上手く使って何かできないか、と考えることができました。

--通常の演劇との何か違いはありますか?

広屋:Zoom演劇は、芝居の時間軸をずらしていないので演劇的ですが、本番をレコーディングして良いカットを撮っていくのは映画的でもあって、どちらの要素もあるというのが特徴だと思います。

--企画や稽古もZoomでこなしているとお聞きしています。

広屋:基本的には、アイディアとテーマを決めて、「できそうだね」となれば脚本と演出を書きます。基本的には書けた次の日にはもう撮影をしていますね。演者さんにはその日の朝に脚本や大枠のテーマを伝え、脚本読みなどからその日のうちに行ってしまいます。そのスピード感も大事にしています。

--最初に発表されたものは、いわゆる心霊ものに位置づけられると思います。ほかにも、「離れていても心が繋がっている」というメッセージが込められたものもありますね。

広屋:今もまだ試行錯誤している段階ですが、最初にホラーを選んだのは戦略的でもありました。画角を使ってイメージしやすかったのがホラー映画で、一番話題になって取っつきやすいのではと思い、ギミックを演者さんと考えながら作りました。あとは、コロナによる自粛であまり感じ取れていない感情があるのではないかと考え、同窓会を題材にした作品も制作してみました。反響が大きくて、切ない感情も共感を得るんだな、と思いましたね。

--Zoom会議を題材にした作品は、Twitterで900万回以上再生されています。

広屋:私たちも驚いています。2作品目に発表した「Zoom面接」をテーマにした作品の反応がそこまで良くなく、「コメディは受け入れられない」「笑わせるのは難しいのかもしれない」と感じつつ、でも挑戦したいと違ったギミックや演出を考えて、バーチャル背景でサボるというアイディアを使って制作してみたところ、桁が違う広がりがあって、とても嬉しかったですね。

--『ノーミーツ』作品の多くに出演されているオツハタさん(@otsuhatact)は、髭の容貌もあって印象的で、個人的にも好きです。

広屋:オツハタさんは、芝居がとても上手で、いるだけで存在感があり安心して見ることができる役者さんです。Twitterなどでも「また出てきた!」みたいな声が多く、人気が出てきていますね。自粛期間中に、役者さんが表現できる場を作らなければいけないと思っているので、Zoom演劇ドリームで人気になれば、他の役者さんにも勇気を与えられるのではないかと。なので、今はオツハタさんを猛プッシュで出演していただいてます(笑)。

--反応についてはいかがですか?

広屋:普段演劇を見ない人たちにもウケているところが面白いですね。『Out Of Theater』も公共空間や都市空間を舞台に見立てたライブエンタメを制作していたのですが、普段観劇をしない人でも見に行きやすいという特徴がありました。このZoom演劇も同じで、親しみやすいTwitterで140秒以内に映像をおさえているので、普段演劇を見ないような一般の方にも届きやすいと感じています。

--2020年5月には、初の長編『門外不出モラトリアム(仮)』の配信をアナウンスされています。

広屋:今まさに脚本を仕上げている最中です。掲載しているあらすじにも書いてありますが、物語はコロナによる自粛期間が今後4年間続いてしまう世界での大学生活が舞台です。今回のコロナが一過性のものと捉えている方もまだ多いですが、もしかするとこの先1〜2年は継続することも覚悟しなければいけない。そのあるかもしれない未来を物語として描くことが、想像力への手助けになるかもしれないと個人的には考えていて、今こそ作るべき作品なのではないかと思っています。

--エンターテイメントの世界に限らず、「モノ消費からコト消費へ」という流れだったものが、新型コロナの影響でいきなり遮断されてしまったわけですが、そのことについてどのようにお考えになっていますか?

広屋:僕もまさに今までの仕事は「体験」を売っていました。このような状態になってしまうと当面難しいだろうと。ただ、コロナが落ち着いた時には体験価値のより戻しがあるだろうとは思っています。コロナでわかったのは、「家を出れないのはこんなに辛いものなのか」ということ。オンライン上だけで生活が成立するのは、よほど先じゃないとあり得ない。身体性や対面のコミュニケーションがないと「まだまだ人間の生活は難しいのだ」と再認識しましたね。一方で、オンラインの気軽さを僕たちはある種強制的に肌で感じているとも思います。場所を選ばずどこからでも見れるオンラインコンテンツはさらに増えるでしょうし、Zoom演劇もひとつのジャンルとして成り立つならば、エンタメの幅が広がるとポジティブに捉えています。

--今後、『劇団ノーミーツ』をいつまで続けたいとお考えですか?

広屋:僕たちもそこまで想像できていないのが正直なところですね。今は一回も直接会ったことがない人たちと日々打ち合わせしていますが、今後ノーミーツする必要がなくなってしまうと、「逆に対面するときに気まずくなるよね」という話をしています(笑)。仮にコロナ禍が終わった時は、ノーミーツのミーツ公演ができたら素敵だな、とも思っています。

--貴重なお話ありがとうございました!

劇団ノーミーツ
https://nomeets2020.studio.design/ [リンク]

※画像はTwitterより
https://twitter.com/gekidan_nomeets/status/1254377489717030914 [リンク]

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ふじいりょう

乙女男子。2004年よりブログ『Parsleyの「添え物は添え物らしく」』を運営し、社会・カルチャー・ネット情報など幅広いテーマを縦横無尽に執筆する傍ら、ライターとしても様々なメディアで活動中。好物はホットケーキと女性ファッション誌。

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