話題のFlashゲーム『決定論』『YOU ONLY LIVE ONCE』を作った雷天堂にインタビュー(前編)

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ゲームオーバー後「TRY AGAIN?」をクリックすると、さっきまでプレイした内容がリプレイ再生される『決定論 – THE GAME』、1回ゲームオーバーになったら二度とプレイできない『YOU ONLY LIVE ONCE』と、奇妙なFlashゲームを立て続けにリリースしたクリエーターの雷天堂(Marcus Richert)。「こんなゲームを作る人はどんな人?」ということで、メールでインタビューしてみました。

・関西弁をしゃべるスウェーデン人
記者:あなたはスウェーデン人ということですが、今スウェーデンに住んでいるのですか?

雷天堂:はい、今はスウェーデンに住んでいます。来年にはフィアンセと日本に引っ越したいと考えていますけどね。

記者:あなたは日本語、特に関西弁が得意なようですが、どうやって日本語を勉強したのですか?

雷天堂:僕はLund大学で東アジアについて学び、京都の立命館大学に1年留学しました。そこでフィアンセ(大阪人)と出会い、今はスウェーデンで一緒に暮らしています。だから僕たちは家でスウェーデン語と関西弁をしゃべってるんですよ。初めて京都に行ったとき、彼女は僕の東京弁をバカにして、たとえば僕が「そうだよね」って言うたびにイラっとした表情をするので、大阪弁をしゃべるしかなかったんですが……。

・『YOU ONLY LIVE ONCE』はジョークじゃない
記者:『YOU ONLY LIVE ONCE』は、ゲームオーバーになると二度とプレイできないというゲームでした。これにはどんなメッセージが込められているのですか?

雷天堂:ちょっと見栄を張った言い方をすると、ゲームの印象を損ねたくないので、プレイヤー自身で考えてもらいたいですね。一般論で言うと、ビデオゲームの最も古い慣習である“コンティニュー”機能は、ゲームを楽しくさせるものですよね。僕たちはいつでもゲームで“コンティニュー”できると思っています。リアルな生活に置き換えるとそれはクレイジーなことだと知っているにもかかわらずです。「死ぬときは死ぬ」ということは分かっていても、ビデオゲームでそれが起こると腹を立てるんですよ。『KONGREGATE』(このゲームを最初に発表したゲームコミュニティ)のコメント欄を見ればそれが分かります(笑)。“コンティニュー”という慣習をなくせと言っているわけではなくて、たとえ非現実的なものだとしても必要だとは思います。だけど、その慣習をイジるのは面白い!

記者:『YOU ONLY LIVE ONCE』に、またプレイできるようにゲームオーバー状態をクリアするボタンはつけないんですか?

雷天堂:うーん、僕はこのゲームを“単なるジョーク”にしたくないんですよね。「ゲームの状態が永久に保たれてしまう状況でゲームをする」というアイデアは新しくて面白いと思うんです。僕は実験的なゲームが見てみたい。

記者:ユーザーにブラウザをリロードさせてページビューを稼いでいるのではないか、という見方についてはどう思いますか?

雷天堂:ハハハ!それはノーですね。確かに、「CONTINUE」ボタンをつけないで、リロードしないとストーリーが進まないようにすることも考えました。「広告で儲けようとしている」と非難されるのが怖かったので、それはやめましたけど。リロードさせることが僕の意図だったとしても、ページビューが稼げているのを見れば今回はうまくいっていると言えますね。でもリロードするユーザーがいるのは、あくまで副次的な効果と言えるんじゃないかな。

記者:あなたの発表するゲームには賛否両論が起こりますが、それを楽しんでいませんか?

雷天堂:賛否両論あることは意識していますよ。肯定派は「新しい、オリジナルだ」という意見。否定派は「グラフィックがそこそこ」「ゲーム本体は面白くない」「レベルデザインが味気ない」というものや、一部には「バカらしい」といったものもあります。

たとえば人を笑わせようとするとき、「君のジョークは退屈だね」と言われても、その人に「お前は間違ってる」とは言えないですよね。だから僕はコメディー作品を作るのにはナーバスになってしまう。自分とは違うユーモアのセンスを持った人には、そんな風に自分のゲームをやっつけられてしまいますからね。『決定論 – THE GAME』を作ったときは、簡潔で完璧なゲームを作ったという強い達成感があったから、どんな批評にも自信を持って対応できました。『YOU ONLY LIVE ONCE』については、コメディー的要素が強いので、そこまで自信を持って対応はできないんですよ。

・ゲームでまだできる“違ったこと”
記者:ゲームをデザインするうえで最近何を意識していますか?

雷天堂:アメリカのインディーズゲームのブログや『TIGSource』(The Independent Gaming Source)というコミュニティを見つけて、ゲーム制作にイノベーションをもたらす機会を意識するようになりました。『You Have To Burn The Rope』の作者Kian Bashiri、『Cactus』の作者であるJonathan Soderstrom(ふたりはいずれもスウェーデン人です)、Jason Rohrerといったクリエーターたちは、「ゲームにはまだ何か違ったことができる」という機会に目を向けさせてくれますね。

ゲームはまだ若いメディアで、試みていないことがたくさんあると思います。僕は『Raid Gaza!』(編集部注:イスラエルによるガザ地区への侵攻を皮肉ったゲーム)や『You Have To Defecate Upon King Bhumibol』(編集部注:オーストラリア人作家のHarry Nicolaidesがタイで逮捕・拘束された事件に抗議して制作したゲーム)を作ったのですが、こうした政治的なメッセージを持ったゲームは面白いと思います。ゲームがなかったら、僕のような普通の人間がどうやって人々に政治的メッセージを届けられるでしょうか?『Bhumibol』では、入獄させられた被害者の兄弟がタイ大使館にこのゲームを見せたということがニュースになりました。

ゲームには大きなパワーがあります。僕は自分のキャリアのためにゲームを作っているんじゃない。自分が誇れるもの、ゲーマーじゃない人にも感謝してもらえるものを作れたら、結局はそれがいいんじゃないかと最近思うようになりましたよ。

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ふざけた写真を送ってきたけど、実はマジメにゲーム制作について考えている人のようです。さらに、日本通でもある雷天堂に日本のFlashゲームの印象や、次回作の構想などを聞いてみました。続きは次回の記事をお待ちください!

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宮原俊介(エグゼクティブマネージャー) 酒と音楽とプロレスを愛する、未来検索ブラジルのコンテンツプロデューサー。2010年3月~2019年11月まで2代目編集長、2019年12月~2024年3月に編集主幹を務め現職。ゲームコミュニティ『モゲラ』も担当してます

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