あまった食べ物で“循環社会”は実現するか?

 国全体で、日本人は食料の3割を捨てているといわれている。6割の食料と膨大な量の化学肥料を輸入し、膨大な量の食べ物を捨てているのが日本という国の現状なのだ。
 誰もが思うだろう、「どうにかしないといけない状態だ」と。そこで注目すべきものが残飯や家畜糞尿だ。これらには多くの可能性が秘められているからだ。

 農業コンサルタントの山田浩太氏は『「あまった食べ物」が農業を救う』(PHP研究所/刊)の中で、有機農業について研究してきた結果つかめてきたこと、「あまった食べ物」を活用する循環社会について解説している。

 今まではただ燃やすしかなかった生ゴミや残飯を肥料として生かし、土壌の生態系を豊かにする有機農業で栽培してできた食べ物が残飯になったら、また肥料に変えるという循環システムが山田氏の理想とするものだ。
望ましい有機農業を考える上では、有機肥料が重要。有機質肥料というと、昔は肥溜めに溜めた人糞も使っていたが、今は家畜の糞や落ち葉、藁など、生物由来の有機物を発酵させて作る肥料である堆肥を使っている。

 農業では長い間、牛糞、豚糞、鶏糞が使われてきた。当然、その動物が何を食べているかで堆肥の肥料成分も変わってくる。
 例えば、牛は藁をたくさん食べる反芻動物だが、藁に含まれるセルロースなどの繊維物質を豊富に摂取して、たくさんのミルクを生み出す能力に恵まれている。そのため、出てくる糞には繊維質が非常に多く含まれている。一方、豚は雑食で、内臓の構造が人間そっくりだと言われており、摂取する飼料には炭水化物類が6割から7割ほど含まれているのが望ましい。鶏はトウモロコシなどの穀物を主に食べる。ただ、鶏はもともと空を飛ぶため、体重を軽くする必要があるため、食べ物をサッと入れてサッと出してしまう。便は袋のような状態で、その中に尿も入っている。そのため、分泌される糞尿の肥料濃度はこの3種の中で最も高い。次に濃度が高いのは豚。牛は圧倒的に濃度が低い。

 これらの家畜堆肥を最大限有効活用したいところだが、現代の循環型農業では、それぞれの家畜堆肥は、なかなかうまく循環していないのが現状だ。
 鶏糞は水分が多くて使いづらいし、豚に関しては特に豚尿の処理に困ることが多い。牛糞は繊維を多く含んでいることから、土壌改良には比較的沿革に使用される。しかし、本来副産物として生じる糞尿を堆肥化する作業が面倒くさいことであり、臭いも強く厄介ものという位置付けにされている部分が大きいようだ。

 このように、まだまだ問題も多いが、こういった循環システムが市町村単位ですでに成功している例は全国で何か所かある。
 山形県長井市では「レインボープラン」という名前で、市民、農家、行政がすべて関わり合う仕組みとして発展してきているという。個人や企業や農業、市が協力して長井市のような市町村が全国にもっと増えていけば、3割もの食料を破棄するような国にはならないはずだ。
(新刊JP編集部)



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