不安をしずめるための読書とは?
会社で部下を持ち、中堅社員くらいになると、若手社員のことを「叱るとすぐ会社に来なくなってしまう」「アイツは豆腐のようなメンタルだ」と、同僚との飲み屋で愚痴るなんてこともあるだろう。
そんな会話を同僚としている自分が、実は失敗したらズルズルと引きずるタイプであるという人は少ないのではないだろうか。
『「処方せん」的読書術』(角川書店/刊)の著者である奥野宣之氏もそのタイプだという。仕事でもプライベートでもうまくいかないことがあると「おれはなんて酷いことをしたんだろう・・・」という自己嫌悪と、「それにしてもそこまで言うか!」という相手への怒りで何も手につかなくなるという。本書では、そんな奥野氏が、どのようにして本を心の支えにしていくかということについて体験的に学んできたことをまとめたものだ。
仕事、将来、友人関係・・・生きていれば何かと不安になることは多い。そんなとき、不安な気持ちをしずめ、緊張をほぐして楽になれる鎮静剤のような本の使い方がある。ひとりで解決できない不安は、本を読んで視点を変えるのだ。
本を読むと言っても、『論語』や『自助論』のようないかにも人間形成のためになりそうな「ためになる本」には気をつけなければならない。不安な気持ちをしずめるために、奥野氏が考える一番大事なことは「徹頭徹尾、自分のために本を読む」ということだ。ここで本を読む目的は、「立派な人になること」ではなく「自分の心をメンテナンスすること」である。不安を消すことが目的ならば、はじめからその目的で本を選ばなければならない。
「ためになる本」は、自分の足りないものに気づいたり、慢心しないようにしたりするために読むものであって、不安をしずめるという目的には合致しない。むしろ、下手に読むと、余計に自信をなくしてしまうこともある。
不安をしずめたいときは、「本当に読みたいか」だけで本を選ぶのだ。ホラー小説でもアイドルのブログ日記でも読んで救われるなら、それが「いい本」なのだ。社会を良くする本ではなく、自分の心を救ってくれる本を選ばなければならない。社会のためでも、人のためでもなく、自分のために読むという意識が大切ということだ。
こうした奥野氏の人柄に共感できる人は多いだろう。人間関係がうまくいかないとき、仕事から逃げ出したくなったとき、気持ちが折れてあきらめそうになったときなど、気持ちが萎えてしまったときには「自分が本当に読みたい本」を開いてみよう。そこには、自分を救ってくれる何かがあるかも知れない。
(新刊JP編集部)
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