「出世したくない」と尻込みしてしまう女性たちへ…出世で得られる「7つのメリット」とは?
最近では、出世のチャンスがあったとしても、「出世」=「プライベートを犠牲にすること」と思って二の足を踏む人は男女ともに増えているそうです。ただ、キャリア支援やコンサルティング、結婚コンサルタントなど、幅広い領域で活躍されている川崎貴子さんは、ご自身の独立経験や周りの出世した女性たちを見て、「女性が出世することはデメリットを上まわるメリットがある」といいます。
「出世のチャンスがあっても尻込みしてしまう…」という女性に対して、川崎さんが伝えたいこととはどんな事なのでしょうか?
出世に消極的なのはなぜか?
コンサル先のカウンセリングの現場で、女性たちのキャリアビジョンをヒアリングしていると、出世に対して消極的な女性たちにたくさん出会います。
そのたびに、私はなんだか責任を感じてしまいます。
私たち団塊ジュニア世代や、さらに上のバブル世代の若かりしころのほうが「女性も管理職を目指そう!」と血気盛んだった気がするのですが、結果的にわれわれ世代が彼女たちの良きモデルケースとなりえず、数的にも圧倒的に実績を残せなかったという事ですから。
最近では、女性だけではなく若い男性たちも
「プライベートを犠牲にしてまで働きたくない」
「上司のように責任を負いながら、ハードに働くのは無理」
「今でも十分忙しいのにこれ以上の負荷はイメージできない」
と、「ほどほどに働く志向」が増えているそうで、男性上司もわれわれ女性上司たちも「幸せに働く姿」を次世代に見せられなかったツケは大きい、と思うのでありました。
おまけに、若い女性たちの一部には「女性が出世したら婚期を逃しそう…」と、出世=非モテという誤解もあるとか。出世の弊害として「プライベートを犠牲にする不安」がつきまとっているとも聞きます。
この、共働きがスタンダードな時代に、女性の収入が高い事が夫婦のアドバンテージになる令和に、「立場も学歴も収入も男性より下じゃないと結婚できないかも」という昭和の亡霊が未だ跋扈している事に驚きを隠せません。
「これは、筆を取らねば…」と老婆心全開で思いました。
もちろん、人生において仕事の価値観は様々です。出世がすべてではありません。
ただ、出世のチャンスがあって挑戦してみたいと少しでも思っている人が上記のような理由で尻込みしているなら、もったいないと思うのです。出世すると人生がいかに開けるかをわれわれはもっとおおっぴらにしていくべきだったのだと今更ながら思うのでありました。
出世して得られる「7つのメリット」
私のような不安定な独立系とは違い、私の周囲には大手中小外資問わず、組織に属して出世していった女性たちがわんさかおります。
彼女たちの一例でいうと、20代でがむしゃらに働き、30代で役職に就きマネジメントを学び、結婚して、子どもを授かって育休を取り復帰、40代でさらに上の役職について、イキイキとワークライフバランスを体現している人たちがいます。
むろん、キャリアのプロセスは十人十色ですが、責任があってやりがいのある仕事、プライベートとの両立でメリハリのある暮らしや旅行、美容やおしゃれも存分に楽しんでいる彼女たちが今の人生を得られたのは、「出世」が大きく関係しているでしょう。
そして、時間の余裕やプライベートの充実ぶり含め、今、彼女たちこそ「ほどほどの働き方」を実現している、と私は見ていてとても思うのです。
出世のわかりやすいメリットとは 1.給与が上がる
2.自分の時間をコントロールできる
3.権限がある、ルールを作る事ができる
4.チームで仕事をするので一人で抱えず分担できる
5.マネジメント能力を学べる
6.出会う人のステージが変わる
7. 転職しやすくなる
でしょうか?
すべての企業や役職者がそうだとは言えませんが、出世することで転職や独立もしやすいので経験するに越したことはないでしょう。
また、項目のほとんどが、家庭生活を運営していく上でも必要な経験やスキルばかりです。出世すれば、収入面だけでなく、出会いの質も上がり、自分の成長につながり、プライベートも充実させやすいという事を私は彼女たちから教わりました。
出世できるのは「スーパーウーマンだから」ではない
女性管理職の数で言えば日本は先進国最下位なので、「出世した女性」は特別な能力を持った特別な人、で片づけられてしまいがちです。彼女たちの中にはそれぞれの企業内で伝説になるような仕事ぶりの人もいたりはしますが、当然ながら全員がそうだという訳ではありません。学歴もスキルもバラバラ。
ではなぜ?天才でも、スーパーウーマンでもない女性たちが、このゴリゴリの男性社会の中で出世できたのか?
彼女たちに共通点があるとすれば「若いころから出世に前のめりだった」ということ。
そして、「結婚も出産もしたいから、早く成果を上げて、産休後も復帰しやすい環境を自分で作っていこう。せっかくなら、できるだけ早く出世しよう」と考え、同期の男性と足並み揃えず、すべて前倒しで動いて結果を出していったそう。また、成果を出すだけでなく、社内アピールを徹底していたことも、出世のポイントだったようです。
「責任」に対して怯える若い人は多いけれど、失敗したら降格するか、配属先が変わるかであって、命を取られる訳でも無し。
彼女たち曰く、出世したら自分の作ったルールで、自分の好きなチームで手分けして働けるのでストレスも少なく、役職者経験を得たからこそ今の「ワークライフバランス」があるだと。そんな彼女たちもアラフィフになって「今更20代のころの働き方はできない」と言います。20代、30代と走り込んだ時期があるから、今があるのだ、と。
それは私も同感です。だからこそ若いころ、前のめりに働く意識をもつことは大事なのだと思います。
チャレンジした経験は一生残る
もちろん、出世する事で、予想できるデメリットもあることでしょう。
数字のプレッシャーにストレスを抱えたり、指示を聞かない部下や無理難題を投げてくる上司に当たったり。合わない社風の会社で出世するのも精神的につらそうです。一通り努力して合わないのであれば、転職も可能です。無理だと思ったら辞めてもいいのです。
これからも世の中は変わり続け、どんな仕事が残るのか、どのようなキャリアを積んでいくのが正解なのかは、誰にもわかりません。また、繰り返しますが、出世だけが価値があるわけではありません。
ただ、将来の可能性を広げるために、若い時にできる事はいっぱいあります。体力があるうちに、頭が柔らかいうちに、将来の可能性のために、今できる事はないか考えることは大切です。
本当に恐ろしいのは、「○○だったらどうしよう」と自分で勝手に妄想し、チャレンジしない自分を作ってしまう事。傷つきたくない、頑張って失敗したくない、だから最初から「ほどほど」を目指してしまう事です。
挑戦して失敗したとしても、「出世する」という経験は仕事人としての視座やステージを変えます。そして仮に出世しなくても、「出世する」という目的に向かってチャレンジしたという経験は、実績として一生残ります。
私は企業内で出世した経験はありませんが、25歳の時に独立して組織を持った経験は、その後のありとあらゆる出来事に対峙する際の自信につながりました。
「あの時チャレンジしたのだから、今回だってできるはずだ」
会社を拡大する時も、銀行から大金を借りた時も、離婚してシングルマザーになった時も、再婚して新しい家族を作った時も、乳癌になって全摘出した時も、端から見たら困難盛りだくさんな人生なのに、私は「私ならできる」と思い込み、毎回前進する事ができました。それは、チャレンジから逃げなかった私を、私自身が誰よりも記憶していたからです。
何のために働くのか?
もうアラフィフの私は、自分の名声を得るためや、大金持ちになるために働いている訳ではありません。ただ、私が頑張れば、仲間や家族、私の愛している人たちの可能性を広げられるという手ごたえは確かで、それは、「出世したい」とがむしゃらにコミットした過去が与えてくれているのだ、と今になって心穏やかに思うのです。
若い女性たちに夢を与える事はできなかったかもしれないけれど、出世することでステージが変わり、見えなかった夢が目の前にいっぱい広がるという事、それは私利私欲だけじゃないという事を最後に伝えたいです。
将来出会う、皆さんの愛する人たちのためにも、勇気を持って、大志をいだいて、仕事人生を歩んでいってほしいと思います。
回答者:川崎貴子
リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。
→川崎 貴子氏の記事一覧 イラスト:yoko
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