いわゆる男の娘が社会的に女の子として生活し始めて思ったこと

いわゆる男の娘が社会的に女の子として生活し始めて思ったこと

今回は、『はてな匿名ダイアリー』から転載させていただきました。

いわゆる男の娘が社会的に女の子として生活し始めて思ったこと

わたしはいわゆる男の娘だ。部屋の中で女装していただけだったのだが、「これじゃただの変態だな」と思い一念発起した後、いろいろ試行錯誤してかなりパス度を高めることに成功した。(パス度っていうのは女装だと見抜かれない率のこと)そしていまは大学にときどき女装して通っているし、この前無事に女の子としてバイトもはじめた。世の中じゃ結構こういう苦労をしている人はいると思うのだけれど、あんまりそういった苦労話をしているのは見たことがなかったので、振り返りの要素を込めて自分のためにもちょっとまとめてみたいと思う。世の中にはこういう人もいるのだということを知っても損はしないのではないだろうか。女装したい人やmtfの人にすこしでも参考になればと思う。

もともと中学高校と男子校に通っていたのだけれども文化祭などでときどき女装させられていた。表面上は嫌がっていたのだけれども、正直とても嬉しかったし、客観的に見てもそんなに悪くは無かったんじゃないかと思う。文化系の部活だったこともあり色白で筋肉もあまりついてなく、細身でちびだったので制服を着れば首から下はほぼ完全に女子高生だった(ちょっと足がごつごつしていたりもしたけど、ニーハイ履けばごつごつしていた足もなんとかなった。)。中高時代はウィッグも2000円くらいのすっごい安物で、顔はまったくのすっぴんだったので不自然極まりなかったのだけれども、それでも同級生に「お前ほんとにかわいいなw」って言われたりしてすごくどきっとしたのを覚えている。その感じたドキドキっていうのは、なんか、超えられない壁を超えてる自分ヤバイみたいな、完全に自己陶酔のそれであったのだけれども。

そんなこんなで高校を卒業しそこそこ良い大学に入り、一人暮らしをしはじめたのだが、わたしはなるべくして女装にはまることになった。

一年生の夏休みが終わった頃、最初に「あ、家族も家にいないしバイトで稼いだお金もあるし、女装ができるんじゃないか!?」と気づいたときには衝撃を覚えた。あ、今ならできるじゃん!みたいな。さっそく楽天の通販(たしかHoneys)で安い服を頼み、ドン・キホーテでラパンドアールのウィッグ(8000円くらいするちょっと良さげなウィッグ)を買った。化粧品も100円ショップで全種類揃えた。自分の姿をチェックしたのだが、自分が好きなタイプの可愛い女の子にはなれないけれども、そこそこ悪くない女の子に見えるということが発覚した。ウィッグの力は偉大で、自然なウィッグでいろいろいじることで輪郭の男っぽさはかなり消えるということがわかった。

それからは室内女装を極めることになる。わたしは相当のチキンだったのでかなり長い間自宅の中だけで女装をしていた。服もだんだん溜まっていった(可愛い下着も少し買った)。家の中では自分の着たいガーリーな服を着て読書やPCをいじるだけだったが、何かから解放されている感じがして居心地がよかった。外では普通の男子大学生をして、中ではかなりの時間を女装して過ごしていた。当然友達を家に入れることは皆無だった。(ワンピやスカートが並んで、ブラが干してある家にいれられるわけがないw)。ネットでいろんな人の女装の体験談や、すごくキレイな女装子さんのblogなどを読んで「世の中にはこんなレベルの人もいるのか!?」と羨ましがっていた。外では男子大学生はちょいおとなしい感じではあったけど、普通にやってたと思う。友達も普通にいた。

そんな日々が続いていたのだが、冒頭でも言った通り、ある時「このままじゃただの変態だな。」と思い、この変態的な活動を生産的なものにするべく一念発起した。

「よし、女の子としてバイトしよう。」それがわたしの立てたゴールだった。6ヶ月後に女の子としてバイトできるレベルにしよう、そうじゃなきゃこの趣味は完全に辞めようと思った。

人生は短い、どうせ変態的活動に時間を費やすのであればそれを生産的活動に変えた方がいいし、それができないなら辞めるべきだ。

まず手をつけたのはファッションだった、たくさん女性誌を買って勉強した。ゴールが決まっていると自分のやるべきことも逆算できる。自分の顔や身体の隠せない特徴から自分の取るべきスタイルを決めた。ひたすら雑誌に載ってるコーデと同じようなコーデを試してみるという写経型の模索であったが、どうやら自分に似合うのは残念ながら自分の好きなnon-noみたいな可愛い系ではなく、どちらかといえばcancam系だということがわかった。ちょっとキレイめな感じ。心を鬼にして客観的に似合う方を採用した。肩幅が普通の女の子よりも広いから、ふわっとしたカーディガンなどは避けて、パフスリーブ、フレア袖やかっちりとしたジャケットなどを着る。セミロングのウィッグで少し横方向にボリュームを出すことで肩幅の相対的な大きさを減らしつつ首の男っぽさも隠す。首周りを逆に大きめに露出させるなどの対策を講じた。靴はオリエンタルトラフィック以外の選択肢は事実上無かった。身長をこれ以上伸ばさないため(自分は167cmくらいだった、女子としてはちょっと高めである)にヒール無しのぺたんこ靴しか履かなかった。補正下着で肋骨下からウェストを絞り、尻パッドで尻にボリュームを出した(擬似くびれの誕生である)。黒タイツかニーハイソックスは足のゴツゴツを隠すために必須。ブラはちょっと大きくしたいなというオトコ心を必死に抑えAカップを採用した。理由は下手に胸をクリエイトした不自然さが無く、実はスタイルよく見えるということを発見したからである。

次に化粧の技術。これは最初の方は全く上達しなかったのだけれども、ネットでひたすら化粧動画を見て、ひたすら@cosmeを徘徊することで自分なりのスタイルと自分なりの装備を確立させていった。まずヒゲに関してはあんまり目立つほうではないのだけれども、オレンジ色のチークをかぶせるとうまくいくことがわかった。毎回はやらないけど、化粧の前にパックをするとノリがいい。ファンデはリキッドの上からパウダーファンでをのせると実は厚化粧ナチュラルメイクになる(ナチュラルメイクに見えるものは実は厚化粧だったりするのだ!)。アイメイクもひたすら日々の鍛錬。アイラインは最初は超絶難易度だけど、鉛筆型からはじめてリキッドタイプに移行するとなんとかなった(鉛筆型はちょっとミスってもなんとかなる)。そしてハイライトとノーズシャドウを逆に使うことで平面顔を作り上げる。(つまりハイライトとかノーズシャドウって顔を立体的に見せるために、影があるべき場所にノーズシャドウを塗り、影がないべき場所にハイライトを塗るわけだけど、それを逆に使うことで男の立体顔を女の平面顔に近づけることができる)。そして忘れてはいけないのが最終兵器カラーコンタクト。こいつは外国人のコスプレをする時に使うものだと思っていたが、実は黒目の人が黒目のカラコンを使うことで自分の目に占める黒目比率を上げられるという効果がある。こいつにはかなり侮れない効果がある。自分は女の子特有の柔らかい輪郭を作るために綿を口に含ませていたりもしたのだけれども、最終的に今ではやっていない(生活に支障をきたす)。

顔は人それぞれに違う、化粧を覚えるにあたって体得すべきなのは自分にぴったりの装備品(コスメ用品)を見つけ、自分にぴったりのプロセスを探しだすことだ。やっぱりこれもいろんな雑誌に載ってるメソッドを試していくしかない気がする。基本的なセオリーはおさえた段階で、自分なりにいろいろ試してみるのも重要な気がする。あとはなんといっても日頃のスキンケアがかなり効いてくることがわかった。見た目はこうした地道な試行錯誤によって、かなり改善され、女の子に近づいたと思う。少なくとも自分の姿は自分には女の子にしか見えなかった。しかもそんなに悪くなかった。

ふと、ここで自分は自分を客観的に見つめられてないんじゃないかという不安にとりつかれた。ネット上には勘違いをしたおっさんが「私かわいいわよ」的な感じで写真をあげているブログや掲示板が無数にあって、それらの文章や写真をみていると「ああ、この人は自分かわいいと思ってるんだな」とひしひしと感じる。ためしにぐぐってみればそういう世界が垣間見えると思う。そして自分もそんなヤバイ人たちの一人にすぎないのかもしれないという不安にとりつかれた。かといってネットに自分の写真をうpして「わたしおんなのこに見えますか?」と言うのも気が引けた。(現にそういう掲示板はある。写真をあげると女の子に見える度をA~Eで採点されるのだ。)

そんな中でコンビニチェックやココイチチェックというものを知った。コンビニチェックというのはコンビニで物を買う時にレジの人が入力した性別のボタンを確認するのだ。レジにある青いボタンと赤いボタンがそうで、POSシステムでマーケティングデータとしてコンビニ側が取ってるデータを更に取得するという手法だ。ココイチチェックは更に簡単で、動体視力が要求されることもなく、レジで入力された性別の情報がレシートに印字されるので、それを確認するというパス度チェック方法である。他にも駅前ティッシュチェックという、女性限定で配っているティッシュを自分に配られるか否かでパス度を測定する方法もあるのだが、ティッシュを配る人は別に女装の人でもティッシュ配れればいいやと思ってそうなので信頼性はコンビニやココイチチェックのほうが高そうだと思った。そしてこれを行うために家から外に出ようと思った。

転載元:こちらは匿名投稿『はてな匿名ダイアリー』からの転載です。

画像:部屋『足成』
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