フィクションと現実の区別がつかない人々

access_time create folder政治・経済・社会
フィクションと現実の区別がつかない人々

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

フィクションと現実の区別がつかない人々

原発の話で思い出した。書こうと思ってて結局書かずに時期を逸してしまった話。当時の菅直人総理の言動について、誰かがこんなことを書いていたように思う。

福島原発に向かわせる電源車や給水車の手配がいまどうなっているのかを、事細かに随行者に質問&チェックを入れ、そのたびに随行者が即答できないと菅直人に怒鳴られた、と。

この事の発言者は一国の総理がこんな細かなことまで気にするのでは困る…みたいな論調で語っていた。

ところがネットの人々、しかも俺が日頃わりとまともな発言をすると思っていた人たちまで、菅直人の質問に答えられない随行者はけしからん、何事だ、という意見だった。

* * * * *

あのさぁ、物資の輸送は刻一刻と変わるんだから、菅直人にずっと随行している人間がそれを即答できるわけないじゃん?しかるべき部署の人間に状況を報告せよと命じて、その人物が情報をまとめて、初めて菅直人に報告できる整った情報になるわけで。

なんかSFの見過ぎなんじゃなかろうか。SFだと「○○の状況はどうなっている?」と総司令官が質問すると、担当のオペレータが「はい、○○は現在○○です」と即答する。

でも現実を考えれば、そんなのは不可能なことがわかるはず。大雑把な命令、いつまでにどうあるべきで、それが不可能となったら次善の策としてこうしろ、と伝えて、あとは現場の人間に任せるしかないだろう。

もちろん自分にしか判断できない状況が生まれれば、それは報告してもらわなければならないが、単に自分が進捗を聞いて安心するためだけに、余計な手間を現場に掛けさせても百害あって一利なしだ。

* * * * *

でも、ネットの声は俺の予想以上に「即答できるぐらい常に万全の情報を集めておくべきだ」というのが多かったように思う。アニメの見過ぎですな(苦笑)。

むかし笑い話でこんなのを聞いた。アニメの見過ぎで自動ドアが瞬間的に開くと思い込んで、体当りしてはいけない、と。確かにアニメの自動ドアってかなり開くのが速い。それと同じ感覚で現実のドアも開くと思って行動すると、まだ開き切らないドアに突進することになる。

優秀な人間なら、どこにどういう指示が出ているか、現在どの組織がどういうスケジュールで行動しているか、は全部頭に入れて即答できるかもしれない。しかし物資の手配状況のようにリアルタイムで変化する情報は、担当の部署に問い合わせなければ最新の情報は得られないし、問い合わせ先の人間だっていろいろ重要なことを並行してやってるのだから、総理大臣からの質問とはいえ、ただの気まぐれの質問に即答できるような体制にしておくのは、むしろ無駄だと思うのだよね。

というか現場の人間なら、上司が要求する「報告書」の作成にどれだけパワーを食われるかわかりそうなものだ。

* * * * *

追記

記憶をたどってどの記事か見つけ出した。このサイト。

「「ぞっとした」にぞっとした話」2012年03月04日『H-Yamaguchi.net』
http://www.h-yamaguchi.net/2012/03/post-017c.html

上記は複数の記事から受けた印象の合成になってるので、すべてがこのサイトに対する事柄ではないが、このサイトが印象に残っている。

総理大臣からの質問に即答できないばかりか、調べるために部下へ連絡もしない随行員を批判している(ように読める)。でも俺は全然違う印象だ。要するに菅直人はこの随行員から、質問に答えるに値しない人物だと思われているのだろう。俺もそう思う。

その質問が今必要な質問なんですか?と心のなかで言い返してるのだろう。そしてそんな無用な質問の答えを得るために、多忙な部下の仕事を邪魔したくないのだろう。部下は本当に必要な作業をして多忙をきわめているのだから。自分が「無能」と罵られるだけで済むなら、喜んで罵られるね。こんな馬鹿に付き合わされるのは自分一人で十分。部下を巻き込む必要はない。

* * * * *

もちろんその質問内容が総理大臣として必要な判断をするための質問なら、こんなことは許されない。当たり前だ。しかし要するにそうではないということなのだ。…と俺は思う。

実際、その質問の答えを聞くか聞かないかで、総理大臣としての判断にどう影響したのだろうか。こういう事ってよくあるよね。現場を全然知らないお偉いさんが、気まぐれと思い付きであれこれ質問したり指図して、現場は足を引っ張られて大混乱。もちろん役に立つような指示はひとつもない。

で、そういう時現場はどうするかというと、適当にそのお偉いさんの相手をする人物を見繕って、どこか別室で時間をていよく潰してもらう。まあこれが難しいのだが。何しろそのお偉いさんは自分が指示しなきゃ現場は動かないと思い込んでるから、とにかく現場に居たがる。「話は別室でお伺いします」なんて言ったら火に油を注ぐようなもの。「実は常々ご相談したいと思っていたことがありまして…」とかなんとか、相手の関心を引くように仕向けないと。

そういうイメージを持ったけどね、俺は。やっぱそれぞれのレベルでどの段階の指示を出すのが適切かは決まってるのだから、平社員が社長レベルの判断ができないのと同じように、社長も平社員レベルの現場の判断は正しくできない。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. フィクションと現実の区別がつかない人々
access_time create folder政治・経済・社会

寄稿

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。