企業が感じる人材不足

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企業が感じる人材不足

この記事はwasting time?さんのブログ『ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」』からご寄稿いただきました。

企業が感じる人材不足

というニュースが話題になっているらしい。

「日本における企業の「人材不足感」は81%、最も不足している職種は? 」2012年6月4日『マイナビニュース』
http://news.mynavi.jp/news/2012/06/04/019/

マンパワーグループはこのほど、日本企業1,011社を対象に実施した、現在の労働市場における企業の人材不足感、および人材不足を感じている職種に関する調査の結果を発表した。同調査は、マンパワー雇用予測調査の追加調査として2006年から開始し、毎年行っているもの。今回は、世界では39ヵ国・地域の約4万社の企業を対象に、2012年1月に実施された。

2012年の日本における企業の「人材不足感」は、前年同期比1ポイント増の81%と過去最高値を記録した。世界の平均値である34%と比べると、日本は47ポイント高く、調査対象の国・地域中、日本企業の人材不足感が最も高い値を記録した。

という。

企業の人材不足感が高いにもかかわらず、就職が難しい状況が続いている。需要サイドでも供給サイドでも不足感があるというわけだ。経済学的に言えば「労働市場のミスマッチ」がものすごいんです。ということになるだろうか。ほしい人材・就職したい企業・職種・業種がマッチしない状況といえるだろう。

ただ、この数字をまともに受け止めることが正解かは疑問である。労働市場のミスマッチがそんなに大きければ、構造的失業が増え、自然失業率が上昇するはずだ。日本の失業率は景況感に関わらずもっともっと高止まりしていいはずだが現実にはそうではない。

世界平均よりもはるかに高い企業の人材不足感を説明できるほどに日本の失業率は高くない。そんなに人材不足ならば一部職種の賃金がもっと高騰してもいいはずだが現実にはそうではない。各国の質問方法や回答方法に問題があるのかもしれない。

ただ、下のグラフにあるように企業の人材不足感が高まっているのは事実である。だから、国際比較はおいておいても、日本の労働市場でミスマッチが拡大しているという様子は見て取れる。そういえば、就職市場においても中小企業と学生のミスマッチという問題が話題になったのはつい最近の話だ。

人材不足を感じている企業の割合における推移 資料:マンパワーグループ

https://px1img.getnews.jp/img/archives/image-11273059414-12018686103.jpg
人材不足を感じている企業の割合における推移 資料:マンパワーグループ

ちなみに労働市場におけるミスマッチは日本だけでなくアメリカなどでも問題になっている。日本だけの問題ではないのは言うまでもない。これから上げてみる理由は多かれ少なかれアメリカにも当てはまるだろうし他の先進国にも当てはまるだろう。

原因はなんだろうか?と簡単に考えて見ると・・・。

(1)豊かになりすぎたことと充実した社会福祉制度

「そんな安月給できつい仕事はやってられん。」別に仕事を真面目にしなくても親と一緒に住んでフリーターでも何も困らない。あるいは、生活保護制度などの充実で働かなくても食べていけるという人が増えている。労働供給の少なさは当然ミスマッチにつながる。また、いわゆる「低スキル」と言われるきつい仕事にはなり手がないともよく言われる。

豊かになりすぎた我々の感覚、そして充実しすぎた国家による社会保障制度が問題の一端であることは間違いない。

(2)産業構造の変化

製造業は軒並み国外へドンドン出て行っている。この分野でスキルを蓄積してきた労働者は新しく働く場所をなかなか見つけられない。IT技術の発展・グローバル化・新興国の発展に伴って産業構造が大きく変化した結果、今では役に立たないスキルしかもたない労働者が増えていることも一因だろう。

(3)間違えた産業政策・財政際策・金融政策

また、日本政府はやれ中小企業を守れだの、景気下支えのための公共事業だのを20年来行ってきた。本来倒産すべきゾンビ企業を異常な低金利に加えて各種の保護政策で守ってきた。その結果として本来ならば早めに勤務先企業が倒産し新しいより必要とされる産業でスキルを蓄えてきたであろうはずの多くの労働者が必要なスキルを身につけられなった可能性は高い。日本の産業構造の転換。いや、そこまで言わずとも市場機能を通した適切な労働力という資源の分配が政府の市場への介入によって妨げられた結果といえるだろう。

(4)労働政策

賛否両論がある分野であり実態はつかみにくい。が、政府が就労支援よりもバラ撒きにより力を入れてきたことも一因にあるだろう。そして、労働市場においてもより柔軟で二層化しない労働市場を作る努力を怠ってきたことも一因であると言える。

まあ、ざっとこんなとこだろうか。

新卒一括採用が~とか終身雇用が~ってのはたいした問題ではないだろう。そんなのはどうせ一部の大企業と役所くらいにしかない制度だ。しかも、大企業といえどもここ10年はしっかりとリストラしている時代である。

日本の政府が行ってきた間違った政策の結果がこのミスマッチかもしれない。引き続き迷走中の日本だが、今正しい政策に転換したとしても労働市場が改善するにはまだまだ時間がかかるだろう。日本の停滞は後10年20年は続くのか?それとも企業が軒並み海外に出て日本の(一部のエリートを除く)若者がますます不幸になるのか?道は険しそうである。

執筆: この記事はwasting time?さんのブログ『ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」』からご寄稿いただきました。

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