これらの「山」は果たして本当の山なのかという疑問から生まれた、濱田祐史『Primal Mountain』刊行
濱田の代表作のひとつである「Primal Mountain」は、一見すると山の風景写真のように見えるが、実は私たちの身近にある素材で作られた「山」であることに気付く。
「真実と虚」「見えるものと見えないもの」という自身のテーマと、震災の体験が繋がっていく中、ある日友人から山の写真のポストカードが届いた。
濱田は、そこに写る美しさとともにある嘘っぽさに、これらの「山」は果たして本当の山なのか、という疑問を抱き、「Primal Mountain」の撮影を始めた。
目の前に見えている山を、私たちは一体何をもって山だと認識するのだろう。ここでは”作られた”ランドスケープを、私たちの脳がつい風景だととらえてしまうことさえ、心地いい経験となっていくのだ。
本作は袋とじのような綴じ方を採用し、ページの裏側に、写真の拡大図を印刷しており、横から裏側のイメージを覗くことができる。
綴じを“山”と”谷”に見立て、「見えるものと見えないもの」を一冊の中で体現した仕掛けで、ページをめくる行為を通して、リアルとファンタジーの間を軽やかにたゆたい、「見ること」とは何かを問いかける。
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